マーケットアウトルック - インドルピー -

投資の視点は2018年6月18日に野村マンスリー投資会議で確認された内容に基づいています。

2018/7/9 現在

投資の視点

インド経済は堅調に推移しています。1-3月期の実質GDP成長率は前年比+7.7%と2017年10-12月期の同+7.0%から加速し、市場予想の同+7.4%も上回りました。季節調整済前期比でも+2.3%と、2017年10-12月期の同+1.9%から大幅に加速しました(野村證券推定)。民間消費は前年比+6.7%と前期の同+5.9%から拡大しました。特に農村部の非農業部門に政府支出拡大の恩恵が及んでいることが推察されます。また、総固定資本形成も同+14.4%と、前期の同+9.1%から大幅に加速しました。
2016年11月の高額紙幣廃止後に減少した紙幣流通量の回復や、2017年7月のGST(物品・サービス税)導入に伴う一時的混乱が収束したことが明確になってきました。   
一方、インド準備銀行(RBI)は6月5-6日に開催された金融政策委員会において、市場予想の据え置きに反し、政策金利であるレポレートを0.25%ポイント引き上げ、6.25%としました。RBIは声明文において、今回の利上げ決定の主因が4月のコアインフレ率上昇と原油高の加速にあったことを明らかにしています。インフレ期待の大幅な上昇、州公務員家賃手当の引上げ、政府の穀物最低支持価格引上げ幅拡大、GDPギャップ((実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP)のマイナス幅がほぼ解消したことも、利上げの理由であると指摘しています。なお、RBIは2018/19年度(2018年4月-19年3月)後半の消費者物価(CPI)上昇率見通しを前年比+4.7%と、前回予想の同+4.4%から上方修正しました。
その後、6月12日に発表された5月のCPIは前年比+4.9%と4月の同+4.6%から加速しました。食料品やエネルギー価格を除いたコアベースでも伸びが加速しており、国内の需要回復などを背景に広範に価格上昇が波及していることが見て取れます。野村證券はRBIは8月1日に開催される金融政策委員会において追加利上げを行う可能性は引き続き高いと予想しています。
一方、インド財務省は6月に銀行家委員会を立ち上げました。同委員会の目的は公的資金を使って不良債権を買い取るバッドバンク方式の実現可能性を評価し、問題債権整理に向け枠組みを提案することにあります。中でも、問題債権が50億ルピーを超える場合、それを買い取る資産管理会社(AMC)を設立するという計画が注目されます。インドの不良債権処理のフレームワークが進化していると評価できるでしょう。 
インド政府は7月4日、最低支持価格(MSP)の大幅な引き上げを発表しました。実施時期は明らかにされていませんが、MSPは政府が低所得者に配給する農産物について農民から買い付ける際に適用されるものです。2月1日に発表された2018/19年度予算(18年4月-19年3月)で実施の方向性が示されていました。MSPの引き上げは農村部経済にとって押し上げ要因になる一方、インフレ加速、財政支出拡大につながります。野村證券はインフレ押し上げ効果を0.7~0.9%ポイント、財政支出拡大効果をGDP比で0.2~0.3%ポイントと見積もっています。他のインフラ投資の支出を削減することで、対GDP比3.3%の財政赤字目標は達成できると見ています。 
インドルピーの対ドルレートは2018年年明け以降も米金利が上昇する中で総じて堅調に推移していましたが、2019年度予算案が市場予想以上に財政赤字拡大となったことや、不正行為に伴う国営銀行の巨額損失発生から銀行セクターへの懸念が広がったこと、更に2月入り後の米金利の上昇や原油価格上昇を受け、5月中旬に約1年4ヶ月ぶりの安値である1米ドル=68ルピー台へ下落しました。原油価格上昇の一服、RBIの利上げを受け、67ルピー台へ持ち直しましたが、6月28日、69ルピー台を割り込み、2016年11月24日につけた史上最安値(68.86)を更新しました。
米長期金利上昇をきっかけに4月以降、新興国市場の動揺が続くなか、米中貿易摩擦の激化がアジア金融市場を揺さぶっています。また、エネルギーを輸入に頼るインドにとって、原油価格の上昇も経常赤字拡大、インフレ加速要因です。インドのファンダメンタルズ(基礎的条件)は新興国の中でもかなり優位にありますが、当面、外部環境による下押し圧力には注意が必要です。 
一方、インドルピーの対円レートはインド経済の回復を受けて2018年1月には1.78円台へ上昇しました。しかし、2月以降は米金利上昇、円高ドル安の流れを受けて、足もとでは同1.60円台へ下落しています。7月9日15時現在、1米ドル=68ルピー台、1ルピー=1.60円台後半で推移しています。向こう1年間のインドルピーの対円レートのレンジを1ルピー=1.58-1.68円と予想します。

グラフ

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2018年7月6日)


  • 内容は、「野村マンスリー投資会議」で確認されたグローバルな各資産に関する見方や投資視点などに基づいて作成しております。
  • 「野村マンスリー投資会議」は、グローバル・リサーチによる主要国・地域の景気、金利、為替、株価見通しを前提に、投資戦略を検討する月例の会議です。

本ページに記載の内容は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、将来の投資成果を示唆または保証するものではございません。投資の最終決定はご自身の判断で行ってください。なお、使用するデータおよび表現等の欠落や誤謬につきましては、当社はその責を負いかねますので、あらかじめご了承ください。また、本ページの内容につきましては当社が著作権を有しております。電子的または機械的な方法、目的の如何を問わず、本ページの内容を当社に無断で複製、転載または転送等を行うことは、固くお断りいたします。