マーケットアウトルック - 米国市場 -

投資の視点は2018年6月18日に野村マンスリー投資会議で確認された内容に基づいています。

2018/7/9 現在

投資の視点

7月6日、米国政府は米通商法301条に基づき、知的財産権の侵害を理由として中国からの年間340億ドル相当の産業用ロボットや電子部品などの輸入品に25%の追加関税を課す措置を発動しました。これに対抗して、中国政府も同日に大豆や牛肉など総額340億ドル相当の米国製品を対象に25%の関税上乗せを発動しました。これまでの発表に基づけば、米国政府は今後、(1)年間160億ドル相当の中国からの輸入品に新たに25%の追加関税を課す手続き、(2)年間2000億ドル相当の中国からの輸入品に新たに10%の追加関税を課す手続きを開始する方向です。(1)の追加関税措置は公聴会やそれに続く対象品目の修正を経て10月初め頃に発動される可能性があります。(2)の追加関税措置は今後対象品目についてのリストが公表されてから3ヶ月程度で発動される運びとなります。7月6日の米国による通商法301条の発動は両国間の摩擦を激化させますが、11月の米中間選挙が視野に入る中、米国が次の制裁措置を実施するとみられる10月初めまでに米中間で通商合意が結ばれる可能性があります。この合意にはこれまでに両国が発動した追加関税措置の停止、中国による米国からの輸入拡大についての具体的措置、中国によるサービス等の分野での具体的な市場開放措置、が含まれる内容となる可能性が高いと思われます。一方、米国経済は堅調に推移しています。6 月の非農業部門雇用者数は前月比+21.3万人となり、市場予想の同+19.5万人を上回りました。7-9月期に向けて米景気は力強いモメンタムを維持しています。製造業の雇用が堅調に伸びており、通商摩擦による不確実性はまだ経済活動に影響をもたらしていないことを示唆しています。

金融政策より

6月12-13日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が公表されました。議事録のポイントは、(1)保護貿易政策は景気見通しにとってリスクであることが明示されたこと、(2)多くの参加者が金融政策は緩和的だという声明文の文言を外すべきだと考えていること、(3)イールドカーブのフラット化あるいは逆イールド化が不況入りリスクを示唆するかどうかについてFOMC内で意見が割れていること、(4)バランスシート政策の見直しといった議論はほとんど出ておらず、議長の記者会見の回数を増やすという決断の背景も示されていないこと、といった点です。ハト派的内容とタカ派的内容が混在しており、政策の方向性がどちらかに傾いているという可能性は低いと考えられます。野村證券は、2018年中に4回(今後2回)、2019年中に2回の利上げとの予測を据え置きます。

グラフ

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2018年7月6日)

米国株の注目点

インフレ率急上昇を懸念するような賃金の状況でもなく、債務や在庫などの「過剰」状態も生じていないため、米景気の下振れリスクも当面見当たらない状況です。政策金利を引き上げただけで景気後退を引き起こすことも考えにくく、現状では財政政策の押し上げ効果が剥落して景気が下押しされる2020年後半頃までは米国景気が後退する可能性はかなり小さいと思われます。S&P500指数を構成する米国主要企業の業績は2018年通期は前年比+22.1%、2019年通期は同+9.8%と増益継続が予想されています(S&P500、トムソンロイター調べ、7月5日時点)。今後1年間のS&P500指数の想定レンジを2500-2900ポイント、1年後を2900ポイントと予想します。

株式のマーケット動向から

NYダウは2018年2月2日に発表された2018年1月の時間当たり賃金が予想を上回る伸びとなり、米金利が大幅に上昇する中、同日の終値は前日比2.5%下落しました。その後も米10年国債利回りが約4年ぶりとなる水準へ上昇する中、23000ドル台後半へ下落しました。トランプ大統領がアルミ・鉄鋼に輸入関税を課す計画を発表した3月1日には420ドル安となりましたが、米朝首脳会談の可能性が浮上したことを好感し、9日には25000ドル台を回復しました。しかし、22日にトランプ政権が対中関税措置を打ち出したことを受けて724ドルの大幅安となり、23日も424ドル安となりました。
4月5日にトランプ大統領がUSTR(米通商代表部)に対し1000億ドルの中国製品の関税を引き上げる追加制裁を指示したことを受け、4月6日は572ドル安となりました。その後は24000ドル台で推移しましたが、5月20日に通商交渉に関する米中共同声明が発表され、対立姿勢がやや後退したことを好感し、21日には終値ベースで3月13日以来となる25000ドルを回復しました。その後、イタリア政局の混迷を嫌気して24000ドル台へ下落しましたが、6月1日のイタリア新政権発足を受けて25000ドル台を回復しました。しかし、米中通商摩擦が先鋭化する中、18日には再び24000ドル台へ軟化しました。12日から21日まで8営業日続落となりました。7月6日の終値は24456ドルとなっています。

グラフ

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2018年7月6日)


  • 内容は、「野村マンスリー投資会議」で確認されたグローバルな各資産に関する見方や投資視点などに基づいて作成しております。
  • 「野村マンスリー投資会議」は、グローバル・リサーチによる主要国・地域の景気、金利、為替、株価見通しを前提に、投資戦略を検討する月例の会議です。

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