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【脱炭素】アンモニアが燃料に? 次世代エネルギーとしての魅力

【脱炭素】アンモニアが燃料に? 次世代エネルギーとしての魅力のイメージ

地球温暖化から私たちの未来を守るために、脱炭素(カーボンニュートラル)が世界的なムーブメントになっている。大きな論点である電力は、日本では現在、発電量の約75%が火力発電。原子力・太陽光・風力などさまざまな代替方法が検討される中、次世代エネルギーのひとつとして「アンモニア」が注目され、実証事業も開始している。

「臭い」「有毒」などといったイメージが強いアンモニアだが、政府の目標では、2050年までに水素とアンモニアで10%の日本の電力資源が賄われるようになる。今回は、アンモニアが注目を集める理由や、次世代エネルギーとしての魅力を紹介する。

すでにさまざまな用途で利用されているアンモニア

アンモニアが脱炭素で注目されている背景を見る前に、どのような物質なのかおさらいしておこう。

アンモニアは強い刺激臭を持つ、常温では無色透明の気体で、化学式は「NH₃」と表記される、水素(H)と窒素(N)で構成された物質である。私たちが普段目にする機会があるのは、薬局などに置いてある水に溶かした「アンモニア水」で、虫刺されのかゆみ止めや掃除などの用途で使われる。

主な用途は肥料で、世界全体で約80%のアンモニアが肥料として消費されている。残りの約20%はメラミン樹脂や合成繊維のナイロンなど、工業用の原料である。世界の人口が増加し続ける中、農産物の肥料として利用されるアンモニアの重要性は、今後も高まると予想される。アンモニアは私たちの暮らしに欠かせない物質と言えるだろう。

次世代エネルギーとしてのアンモニアの魅力

脱炭素(カーボンニュートラル)とは、二酸化炭素(以下、CO₂)を含めた温室効果ガスの排出量を、実質的にプラスマイナスゼロにすることを目指す考え方だ。2021年4月時点で、日本を含む125カ国と1地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指している。すべての電力を再生可能エネルギーで賄うことは困難なため、日本では2050年までに発電量の約50~60%を再生可能エネルギーで賄い、その他を火力・原子力・水素・アンモニア由来の電力で賄うことを目標としている。

数十年後に迫る大きな目標に向けて複数の方法が同時に模索される中、アンモニアは次世代エネルギーとしてどのような魅力があるのか見ていこう。

(1)水素を輸送する「エネルギーキャリア」としての活用

次世代エネルギーとしてアンモニアと同じく注目されている水素は、燃焼時にCO₂を発生しないが可燃性で爆発の危険性があり、体積が大きいために一度に運べる量も少ない。液化して輸送する方法もあるが、運搬中に気化しやすく、取り扱いが難しいという課題がある。

そこで、水素を輸送・貯蔵する際のエネルギーキャリアとして、アンモニアが期待されている。アンモニアはコンパクトで運びやすいため、水素を窒素と反応させてアンモニアとして輸送・貯蔵し、必要に応じて水素を取り出して利用するのだ。また、アンモニアはすでにさまざまな用途で利用されており、安全に運搬する技術が確立している。既存インフラを活用できるのも大きな魅力と言える。

(2)燃焼時にCO₂を排出しない

水素と窒素で構成されるアンモニアは炭素を含まないため、燃焼時にCO₂が発生しないカーボンフリーの燃料だ。アンモニアだけをエネルギー源に発電する「専焼」が理想的だが、石炭火力発電に混ぜて燃やす「混焼」でもCO₂の排出量を抑えることができる。

日本では政府主導で、燃料としてのアンモニア導入へのロードマップが検討されている(図1)。2021年には、石炭火力にアンモニアを20%混焼する実証事業を採択。混焼技術の確立など、目標に向けて動き出している。

図1:燃料アンモニアの導入・拡大に向けた視点・ロードマップ

図1:燃料アンモニアの導入・拡大に向けた視点・ロードマップ

出典:経済産業省「燃料アンモニア導入官民協議会 中間取りまとめ」をもとに編集部作成

仮に、国内の大手電力会社が保有するすべての石炭火力発電所で、20%のアンモニア混焼を実現できれば、CO₂排出量は年間約4,000万トン削減できる。さらに、石炭火力発電がすべてアンモニア専焼になれば、削減量は年間約2億トンになると試算されている(図2)。

現在の日本のCO₂排出量は年間約12億トン、うち電力部門は年間約4億トンだ。20%のアンモニア混焼技術が確立すれば、電力部門でのCO₂排出量は現在より約10%削減される。燃料としてのアンモニアの導入は、大きなインパクトがあるのだ。

図2:燃料アンモニアに期待されるCO₂排出削減量

図2:燃料アンモニアに期待されるCO₂排出削減量

出典:経済産業省「燃料アンモニア導入官民協議会 中間取りまとめ」、近畿中国森林管理局Webサイトをもとに編集部作成

※1国内の大手電力会社が保有する全石炭火力発電で、混焼/専焼を実施したケースで試算。

※2日本のCO₂排出量は約12憶トン、うち電力部門は約4憶トン。

※3人間1人が呼吸により排出する二酸化炭素は年間約320kg。

(3)発電コストは水素より安価

水素と比較した、発電コストの低さもアンモニアの魅力だ。経済産業省の資料によると、1kWhあたりの発電コストは、水素だけで発電した場合のコストが97.3円(2020年時点試算)なのに対して、アンモニアだけで発電した場合のコストは23.5円(2018年時点試算)。アンモニアの発電コストは水素の約4分の1だ(図3)。

1kWh:1,000Wの電力を1時間使ったときに使用する電気の量。

図3:水素とアンモニアの発電コスト比較
  水素発電(2020年時点試算) アンモニア発電(2018年時点試算)
専焼の発電コスト 97.3円/kWh 23.5円/kWh

出典:経済産業省「燃料アンモニア導入官民協議会 中間取りまとめ」をもとに編集部作成

グリーンアンモニアとブルーアンモニア、地球にやさしいのは?

燃焼時にはCO₂を発生しないアンモニアだが、これまで製造過程でCO₂が発生することが大きな課題になってきた。アンモニアの合成に必要な水素は、現在は主に石炭や天然ガスなどの化石燃料由来のものが使われているからだ。

そこで、製造過程でのCO₂の排出量を抑えるために、新しい方法で製造されるようになったアンモニアが、「グリーンアンモニア」と「ブルーアンモニア」だ。それぞれの特徴を見てみよう。

グリーンアンモニア

アンモニアの合成に必要な水素は、水を電気分解して作られる。その際に必要な電気は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス発電などの再生可能エネルギーが使われるため、製造過程でCO₂が排出されない。

ブルーアンモニア

アンモニアの合成に必要な水素は、天然ガスなどの化石燃料から作られる。しかし、そこで発生するCO₂を回収し、地中深くに貯留するCCSなどの技術によって、CO₂の排出を抑えている。

図4:アンモニアの分類と製造過程のイメージ

図4:アンモニアの分類と製造過程のイメージ

製造時と燃焼時でCO₂を排出しないグリーンアンモニアは、脱炭素において理想的なエネルギーと言えるだろう。現在、グリーンアンモニアの世界市場は拡大が見込まれており、さまざまな企業がグリーンアンモニアの製造・サプライチェーンの構築に向けて動き出している。脱炭素への取り組みは、自動車のEV化に代表されるようにインフラの基盤を変える可能性がある。私たちの生活やビジネスにも影響するだけに、国内外問わず、新しい情報は常にチェックしておきたい。

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