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2024.09.13 NEW

【投資テーマの探し方】インバウンド関連株、消費は「モノ」から「コト」へ

【投資テーマの探し方】インバウンド関連株、消費は「モノ」から「コト」へのイメージ

JNTO(日本政府観光局)によると、インバウンド(訪日外国人)の客数は2024年3月に初めて月間で300万人の大台に乗せました。また、観光庁が公表した「訪日外国人消費動向調査」によると、2024年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は1兆7,505億円と四半期ベースで過去最高額を更新しています。近年の訪日外国人の傾向と訪日外国人需要に関連する銘柄について、投資情報部ストラテジストの澤田麻希が解説します。

2024年は過去最多の3,782万人と予想

訪日外国人の客数と消費額はともに過去最高レベルで推移しているようですが、これからインバウンド需要に関係する投資を始めるのではもう遅いでしょうか。

澤田麻希(以下、同)
訪日外客数の急回復を背景に、ホテル建設が増加し、足元では外資系の高級ホテルの開業が増えています。また、都市部を中心とした一部地域への偏在傾向を解消するため、政府主導での地方部の観光づくりなども進められています。

今後、宿泊施設をはじめ、観光や文化を体験できるインフラが整ってくれば、訪日外国人の更なる増加が見込めるのではないでしょうか。日本国内での旅のスタイルが変わり、それに伴ってインバウンド消費の裾野が広がることが期待されています。その意味でも、小売、鉄道、空運、ホテルなどを中心に、インバウンド関連企業の業績動向を確認しておくことは、一つの投資アイデアとして有効かと思われます。

近年の訪日外国人の傾向を教えてください。

2024年1-6月期の訪日外客数は計1,778万人でした。政府は2025年までに過去最多だった2019年の3,188万人を上回る目標を掲げていましたが、野村證券では2024年に3,782万人、2025年には4,590万人と予測しており、前倒しで達成できると見込んでいます。

2024年7月における国別の傾向では、2023年8月に団体旅行が解禁されて以降、回復傾向にある中国からの訪日外客数が、韓国を抜いて最も多くなっていることが見て取れます。また、台湾や米国からの訪日外客数はコロナ禍前を大きく上回っています。

地域別に見た訪日外国人客数の推移のグラフ (注)データは月次で、直近の値は2024年7月。2024年の数値は推計値。
(出所)JNTO(日本政府観光局)より野村證券投資情報部作成

足元の為替市場では日米金利差の縮小で、円安から円高へとトレンドが転換しつつあります。その影響をどうみていますか。

野村の為替チームでは、2025年末にかけてドル円レートが1ドル=140円まで円高方向に推移すると予想しており、先行きの訪日外客数にとって為替変動は下押し要因となり得るでしょう。他方、海外諸国の経済活動水準の上昇にあわせ所得環境が改善し、訪日外客数の押し上げに寄与すると見込んでいます。

ただし、8月8日に宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したこと、かつ初めて南海トラフ地震臨時情報が発表されたことが、訪日マインドの悪化につながるリスクに注意が必要だと考えています。

日本を感じられる飲食や宿泊施設などへの消費増加

訪日外国人の消費行動はどのように変化しているのでしょうか。

2024年1-3月期における訪日外国人一人当たりの旅行支出は20.9万円と、円安の追い風を受け、コロナ禍前に比べると6.2万円ほど高くなっています。具体的には、飲食費(2019年1-3月期比+40.0%)や宿泊費(同+57.3%)に加えて、娯楽等サービス費(同+115.3%)の伸びが顕著です。娯楽等サービス費の中では、テーマパークやスキー場リフトなどへの支出額が大きくなっています。

また、買物代(同+17.4%)も増加していますが、上記項目に比べると増加率は限定的であることから、インバウンドの消費が買物を中心とする「モノ消費」よりも「コト消費(体験や経験)」を重視する傾向が強いことが分かります。これを背景に、足元では日本の文化やコンテンツを体験できるサービスを提供する飲食や宿泊施設などへの需要が高まっています。

費用別の訪日外国人1人当たり旅行支出 (注1)数字の単位は万円。
(注2)費目別のグラフに表示している数字は四捨五入した数字。
(注3)費目別では、「その他」を除いている(2019年1-3月期は0.01万円、2024年1-3月期は0.009万円)。
(出所)観光庁「訪日外国人消費動向調査」より野村證券投資情報部作成

こうした点を踏まえ、以下の通り、インバウンド関連銘柄の一例を紹介します。訪日外国人の旅行手段を提供する航空会社や鉄道会社、日本文化を感じられるホテルやテーマパークを運営する企業、日本食ブームも追い風にしてインバウンド人気の高いメニューを提供する飲食業などが挙げられます。

コード 銘柄名 概要
2222 寿スピリッツ 菓子の製造、販売大手で、主要国際空港において北海道の「ルタオ」など地域ブランド菓子を展開している。
3099 三越伊勢丹HD 2022年10月外国顧客担当を新設し、インバウンドの開拓・関係強化を行っている。
3397 トリドールHD うどん「丸亀製麺」をはじめ、焼鳥、天ぷら、ラーメンなど多様な業態を運営する。Webサイトの多言語化などインバウンドに向けた情報発信を行い、集客につなげている。
3563 FOOD & LIFE COMPANIES 回転寿司チェーン最大手「スシロー」を展開している。
4661 オリエンタルランド 入園者数世界有数の東京ディズニーランド、ディズニーシーを運営している。
7532 パン・パシフィック・インターナショナルHD 中核業態であるドン・キホーテでは、人気商品案内の多言語対応や、化粧品・食品・医薬品などの免税サービスなどインバウンドへの取組みを積極的に行っている。
9020 東日本旅客鉄道 2022年12月より、海外在住の外国人向けにサブスクリプション型会員サービス「JAPAN RAIL CLUB」を開始した。参加型・交流型イベントを企画し、JR東日本エリアの東北や信越地方への訪問を促すことを目指している。
9022 東海旅客鉄道 インバウンドに人気が高いエリアを対象とした(富士山・静岡エリアや高山・北陸エリアなど)周遊きっぷなどを販売している。
9024 西武HD 鉄道事業に加えて、「プリンスホテル」など国内で50のホテルを運営している。
9042 阪急阪神HD 京阪神を結ぶ鉄道事業を主軸に、商業施設やホテルの運営、阪神タイガースや宝塚歌劇などエンタテインメントの提供など幅広い事業を展開している。
9201 日本航空 国際線を中心に能力増強を進めるなど、インバウンドの取り込みに力を入れている。
9202 ANAHD 国際線の規模拡大を進めている。傘下にLCC(低コスト航空会社)のピーチを保有する。
9616 共立メンテナンス 1993年にホテル事業へ参入した。ビジネスホテルは17,107室、リゾートホテルは4,268室を有している(2024.3期末)。

(注)全てを網羅しているわけではない。HDはホールディングスの略。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

野村證券投資情報部 ストラテジスト
澤田麻希(さわだ・まき)
2010年より投資情報部に在籍。東京証券取引所記者クラブにて記者向け場況レクチャーやマスメディアにおける市況解説など、メディアを通じて情報を発信している。また、月刊誌「Nomura21 Global」等、個人投資家向け株式資料の作成も担当している。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。
また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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