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2018.02.15 NEW

丸の内エリートは中小企業の社長になれ! パンツブランド社長が説く「はみ出し術」

丸の内エリートは中小企業の社長になれ! パンツブランド社長が説く「はみ出し術」のイメージ

東大からマッキンゼーを経てパンツ屋へ―。男性下着ブランドTOOTの社長を務める枡野恵也の、「バランスよくはみ出す人生」について聞いた。

東京大学からマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。その後、英会話サービス業界、生命保険業界を経てTOOTの社長になられました。ここに至るまでの経緯を簡単にお聞かせください。

高校生のころから「国際問題を解決する」という夢を描き、外務省で働きたいと思っていました。しかし、大学時代は体育会でバレーボールに打ち込み、授業にも出ていなかったですから、国家公務員試験に受かるわけもなく(笑)。翌年リベンジするのもどうかと思っていた時にマッキンゼーの存在を知り、「問題解決そのものを職業として国際的に働いてみよう」と、同社へ就職するに至りました。

マッキンゼーで経営コンサルタントとして働いている時も、「国際的な問題を解決したい」という思いは変わらず持っていました。その後、フィリピン人を講師とするオンライン英会話サービス「レアジョブ」、貧困のセーフティネットとなる生命保険で新しいサービスを提供していた「ライフネット生命」に転職したのも、同じ理由からです。ただ、どちらの業界にも違和感を感じていました。何かがしっくりこなかった。金融業界では“振り切れた存在”とされているライフネット生命でさえ、私は異端児扱いされていましたし(笑)。

そんな中で、起業を含めた次の展開を思い悩んでいた時、マッキンゼー時代の同期から紹介されたのがTOOTでした。当時は保険の仕事をしていたので「パンツ」の話がくるとは思いもよらなかったんですが、その友人が私しか適任が思いつかないと言ってくれまして、また当時の上司や同僚、さらには自分の親に至るまで、これほど私にピッタリな仕事はないと賛成してくれたので、引き受けることにしたんです。

その方が「枡野さんしかいない」と思った理由はどこにあったのでしょう。

今回のインタビューテーマである「境界線」という視点で考えると、私の強みは境界線をはみ出すかはみ出さないか、くらいのポジショニング。それが“適任”の理由だったんじゃないかと解釈しています。

と言いますと?

東大のキャンパス内を、金髪にして花柄のズボンをはいて歩いている法学部生は、私以外にいませんでしたし、ライフネット生命在籍時もかなり攻めたファッションをしていました。
しかし、そんな出で立ちが許されるくらいに仕事も頑張っていた。生真面目になり過ぎず、遊んでもいるんだけれど、仕事は仕事で期待以上の成果を上げる。そんなバランス感覚が、TOOTの経営者として求められていたのかなと思っています。

キャリアやルックスを含めて突き抜けた印象を受けますが、ご自身の中では「ちょっとはみ出している」くらいの意識なのですね。
TOOT 枡野 恵也のイメージ

突き抜けてはいないですよ。それこそ、この連載にも起業された方が多く取り上げられていますが、80年代生まれって「イケてるやつは起業している」みたいな風潮がありますよね。私も憧れていましたし、実際に現代アートでの起業を考えて勉強もしました。

でもある時、「その事業でうまくいかないまま死んでしまったとして、その人生に納得できるのかな」と考えてみたら、納得できそうになかった。「命懸けのリスクをとってでも一発勝負してみよう」とは思えなかったんです。

思い切ったことを思い切ってやっているように見えるかもしれませんが、ハイリスクはとっていないんですよ。常に確たる算段をもって行動している。それこそ私が社長に就任した当時のTOOTも、創業から15年が経ち、すでに男性用下着の世界に確固たる地位を築いていて、なおかつ成長の余地も大きい会社でした。

異業種からの転職でしたが、戸惑いなどはありましたか?

マッキンゼーでは、プロジェクトごとにそれまでやってきた仕事のやり方をすべて意識的に棄て去る「アンラーニング」を叩きこまれます。そのおかげで、新しいところに飛び込むことへの怖さや苦労はまったく感じませんでしたね。むしろ、同じ業界に長く居続けることによる“飽き”が来ないかと心配されることがあるくらいですが(苦笑)、TOOTはおかげさまで加速度的に成長しており、チャレンジするイシューもどんどん変わっていくので、全く飽きません。

2015年の社長就任以来、どのようなチャレンジと向き合ってこられましたか?

当初は、いかに売り上げを伸ばすか、そればかりを考えていました。しかし、すぐに需要に生産が追いつかなくなって、それからは宮崎県日向市にある自社縫製工場の人員をいかに増やすか。今の時代に縫製スタッフの採用は容易ではありませんでした。ようやく採用が軌道に乗ると、今度は研修を仕組み化しないと教える側が追いつかない、という状況です。

当たり前の話なんですが、製造業は金融商品と違って在庫がなければ売り上げが立たないんですよね。売り上げを増やすためには生産性を高めなければいけないのですが、TOOTの製品は非常にクオリティが高くて、未経験者が縫製工場のラインに加われるまでに最低でも半年から1年近くかかります。
なので、売り上げの急拡大を目指すのではなく、長期的なブランド資産を積み上げていくことを最大の経営目標にしています。10年後には日本だけでなく世界で「男性用の高品質な下着と言えばTOOT」と認められるブランドになりたいですね。

では最後に、同世代のビジネスパーソンにメッセージをお願いいたします。
TOOT 枡野 恵也のイメージ

「守りに入るな」。これに尽きるかなと思います。
私は、丸の内で働く30代の95パーセントくらいは、全員会社をやめてどこかの中小企業の社長になったほうがいいと思っているんです。

大企業の仕事って、基本的にはその人じゃなくてもできるように制度化されています(そうでないと問題があるわけで…)。ということは、その人があえてやる必要はないんです。そういうところに優秀な人たちが集まっているのは、実にもったいない。

それだったら、まだ粗削りな会社に飛び込んでいって、自分自身も傷だらけになりながら仕事をしたほうが楽しいと思います。大きな企業のがんじがらめのルールの中で、「こうしたほうがいいのに」と思っている人のストレスって無駄ですよね。そこに悩みを抱えるくらいなら転職したほうがいいと思います。

大きなリスクをとる「起業」ではなく、「転職」という小さなチャレンジのすすめですね。

多くのビジネスマンは、人生のチャレンジというと起業を思い浮かべます。しかしいざ起業を目前にすると、「起業するほど実力はない」とか「貯金がない」などと考え、尻込みする方も多いかと思います。でも、起業までいかなくてもチャレンジはできるんです。
「企業で働き、家庭を築いて、子どもが生まれたら家を買って…」という生き方は素晴らしいことだと私は思います。仕事は、生きるための手段でしかないので。

ただ、そういう人生から少しでもはみ出したいと思っているのなら、「愚痴を言う前に何か一つやってみよう」と言いたい。長く休みをとって旅行に行くのでもいいし、いきつけのバーの一日店長になるのでもいい。そこでたまたま知り合った人との新しい縁が、転職につながったり、新しい仕事になったりするかもしれないじゃないですか。あえて大きく変わろうとするのではなく、自分ができる小さな一歩から始める。そして、好きなことに辿りつけるように、自分にできることを少しずつ好きなことに重ねていく。それが私の考える「はみ出し術」です。

枡野 恵也(ますの けいや)
1982年生まれ。東京大学法学部卒業後、マッキンセー・アンド・カンパニー入社。レアジョブ、ライフネット生命を経て2015年に株式会社TOOT代表取締役社長に就任。著書に『人生をはみ出す技術』(日経BP)。愛娘と過ごす時間が何よりの息抜きで、原則18時半退社で保育園のお迎えに走る。特徴的なヒゲは、ピッタリフィットして持ち上げるTOOTのパンツになぞらえてセットしているそう。

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