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2019.06.24 NEW境界線の越えかた 家族のカタチ

家族をゼロベースで思考する――チカクCEO梶原健司の考える「家族のカタチ」のこれから

家族をゼロベースで思考する――チカクCEO梶原健司の考える「家族のカタチ」のこれからのイメージ

2016年にリリースされた家族向け写真・動画共有サービス「まごチャンネル」が大きな反響を呼び、今なお、家族コミュニケーションビジネスを牽引するベンチャーとして広く注目を集めている株式会社チカク。

現代では家族のあり方が複雑化しており、また、働き方改革が進みプライベートの時間が増えたことで、「家族」や「家族とのコミュニケーション」などは、ビジネスパーソンにとっても関心の高いテーマとなりつつある。

そこでEL BORDE(エル・ボルデ)は株式会社チカクCEO梶原健司氏をホストに迎え、「再考、家族のカタチ」をテーマにした対談の連載をスタート! 第1回は、ホストを担当する梶原氏にチカク創業に至るまでの経緯や、チカクを支える家族哲学を聞いた。

3,000倍の倍率を潜り抜けて入社した新卒時代

起業されることはいつから考えていたのでしょうか?

起業すること自体は、新卒でアップルに入社したときから考えていました。もともと3年で辞めて起業するつもりだったんですよ。当時のアップルは、一度放逐されたスティーブ・ジョブズが復帰した頃。世の中的にも「(経営的に)まだまだ危ない会社」と思われている時期でした。それもあって、とりあえず3年働いて、経験できることを経験してから起業しようと考えていました。万が一、3年の間につぶれたとしてもいい経験だなと。

結局、働いているうちにiPodやiPhoneが誕生し、仕事が面白くなっていって、気がついたら退職するまで12年経っていましたが。

経営が厳しいことがわかっていて、あえて入社を決めた理由はなんですか?
梶原 健司のイメージ

当時アップルが全世界で展開していた広告キャンペーン“Think different.”に感動したことがきっかけです。経営が危ないと外部から言われてはいても、やはり当時もコアなファンが多い会社ではありました。このときは約6,000人の応募者に対して内定者が2人だけ。よく入社できたなと、今でも思いますね。

その高い倍率の中で、梶原さんが採用された決め手は何だったのでしょうか?

後から人事の方に伺った話では、アップルの重視する「ゼロベースで物事を思考できる」点が評価されたそうです。僕もあまり覚えていないのですが、どうやら面接のときに、僕は面接官に「なぜパソコンの色は、どれもベージュなんですか?」と質問していたらしいんですよ。

ちょうどその頃は、アップル再興のきっかけにもなった初代iMacシリーズ(ボンダイブルーの半透明なボディと、曲線的なデザインが特徴的なデスクトップ機)のリリース準備が進められていた時期だった。その質問がキッカケで、ゼロベースで思考することのできるアップル向きの人間だと判断されたみたいです。ただのラッキーなんですけどね(笑)

まさに企業の哲学に合致する人物だと評価されたわけですね。
梶原 健司のイメージ

世の中って、みんなが「こういうもんだよね」って思い込んでいるものがすっごくたくさんあるじゃないですか。さっきの例でいえば、「パソコンの色はベージュ」とかがそう。でも、そういう思い込みを「本当にそうなのかな?」と疑って、より改善できる方法があるのであれば試してみる。そういった姿勢は今でも持ち続けるように意識していますね。

「クールなものを作らなければならない」というプレッシャー

そうした中、2011年に退職という道を選ばれました。理由は何だったのでしょう?

いくつかあるのですが、2011年というのは東日本大震災があったり、スティーブ・ジョブズも56歳という若さで亡くなってしまったりと、命や人生について考えさせられたことがいちばん大きかったですね。限られた人生だからこそ、自分の手でおもしろいこと、おもしろいものを生み出したい。そう考えて退職することにしました。

といっても、「何か新しいことをやろう」くらいにしか考えていなくて、しばらくは友だちの会社を手伝わさせていただいたり、ブログを始めてみたり、海外に行ってみたり……。いろいろなことをしながら、次の活動を模索していた感じです。

そして2014年に株式会社チカクを立ち上げ、「まごチャンネル」のサービスをスタートされました。「スマートフォンで撮影された写真・動画を実家のテレビに映す」という、まごチャンネルのアイデアはどこから生まれたのですか?

第一子が生まれたとき、「あと何回、両親に子どもの姿を見せてあげられるのだろう」と考えたのが、もともとのきっかけでした。僕の実家は兵庫県の淡路島にあって、帰省できるのは多くて年に1~2回。もっと子どもの成長を見せてあげたいとずっと思っていました。iPadをプレゼントして写真や動画を共有してもいつまで経ってもどこかおっかなびっくり扱っているし、すぐに使い方を忘れたりもする。そこでパソコンとクラウドサービスを組み合わせて、子どもの写真や動画をテレビで閲覧できるようにしてみたんです。

梶原 健司のイメージ

両親はめちゃくちゃ喜んでくれて、まるで会ってるみたいと感動してくれました。普段一番接しているデバイスはやっぱりあの世代はテレビなんですよね。

だったら、子世代はスマホ、親世代はテレビという具合に、それぞれに馴染みのあるデバイスでつながれるようにしようと。そういったことをアップル在籍時からやっていたので、アイデア自体は、そのときからずっと持っていました。

在職中からアイデアを持っていたのに、退職してすぐに形にすることはしなかった。何か理由があったのでしょうか。
アップル出身ということもあって、自分の中に「まわりからクールでイノベーティブなことを期待されているんじゃないか」という勝手な思い込みがあったんです。だから、まごチャンネルのアイデアを思い出すたびに、「こんなのはクールでもイノベーティブでもない」と頭の中から追い出していた。
梶原 健司のイメージ

でも、退職して1年くらい経ったとき、学生時代の友人に「お前、最近何してるの?」と言われたことで、僕がどこで何をしているかなんて誰も気にしていないんだ、単なる自意識過剰だったという、ごく当たり前の事実に気づいたんです(苦笑)。そこからは憑き物が落ちたように、自分が好きなことをやればいいと思えるようになって、ようやくまごチャンネル実現に向けて動き出すことができました。

「家族」をゼロベースで考える

今後の活動については、どんなイメージをお持ちですか?

まごチャンネルは、その名の通り「小さな子どもを持つ親子」と「祖父母」をつなぐことからスタートしていますが、「離れて暮らす家族の距離を近くする」というコンセプトの点では、結婚している・していない、子どもがいる・いないに関わらず、どんな家族でも使えるサービスです。

まごチャンネルの仕組みを通じて、多様な家族の間に「デジタルな二世帯住宅」を実現し、より豊かな家族間コミュニケ―ションを提供していけるのが理想ですね。

昔ながらの家族関係に限らないということですね。

僕が暮らしていた30年前の田舎は、親・子・孫が同じ場所で暮らす伝統的な家族観がとても強くて、ほとんどの住民がだいたい何歳くらいまでに結婚して子どもを産んで、というロールモデルに収斂されていました。

でも現代は、子どもを持たなかったり、パートナーはいるけれど結婚はしていなかったりと、本当にさまざまな家族の形が生まれています。僕の友人にも老後を見据えて、独身同士で家族同様にコミュニケーションを取り合って仲良くしている人たちがいる。

梶原 健司のイメージ

そうした状況を見ていると、「家族」とはそもそも何かという考えが変わりはじめている、「家族とは単純に血のつながりのこと」みたいな考え方が少しずつ薄れて多様化しているように感じます。

それって、人類史的に見てもたぶん珍しいことですよね。「家族」とは何かについて、もう一度ゼロベースで考えるべき時代を迎えている。そして、まごチャンネルも、そうした新しい家族観に寄り添えるサービスでありたいと思っています。

とはいえ、昔ながらの家族観がなくなったわけではありません。

そうですね。全世代の家族観が一斉にアップデートしているかというと、そうではない。やっぱり、伝統的な家族観で生きている世代というのは確実に存在する。そうした世代間の隔たりを、誰かを犠牲にすることなく、いかにして埋めていくか。

高度経済成長に伴う都市化、30年以上続いている社会全体の高齢化や核家族化など、さまざまな理由が考えられますが、家族観の変化ってテクノロジーによる「つながり」の多様化によって加速されている側面があると思うんですよ。テクノロジーの発達によって、人とのつながり方が多様化したことで、「血のつながり」みたいな既存のつながりが相対化された結果、家族観が変化してきているんじゃないかと。

梶原 健司のイメージ

でも、テクノロジーから生まれるつながりって、あくまでリテラシーが近い人たち同士の横のつながりであることがほとんどなんですよね。同世代というか。だから、どうしても世代間を一つ越えたり、二つ越えたりという縦のつながりが生まれづらい。

だからこそ、まごチャンネルのように、それぞれの世代に馴染みのあるデバイスを通じて人と人を縦につなぐ仕組みには意味があると思うんです。そうすることで、多様化する「家族のカタチ」を補完していければなと思います。

とはいえ、僕らが見ている家族像はまだまだ狭い範囲のもの。さまざまな「家族のカタチ」を生きる人たちと意見を交換したり、彼らが抱える問題や社会の課題を学んだりしながら、これからの新しい家族のあり方を見つけ、その支えとなるようなサービスを考えていきたいと思っています。

EL BORDEでは梶原氏のビジョンを受け、「再考、家族のカタチ」と称した連載企画をスタート。梶原氏をホストに、各回さまざまなゲストを迎えながら「家族のカタチ」にまつわる議論を展開していく。

まごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージまごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージ

梶原 健司(かじわら けんじ)
株式会社チカク共同創業者兼代表取締役。1976年、兵庫県・淡路島生まれ。1999年、新卒でアップルの日本法人に入社。以後12年にわたって、ビジネスプランニング、プロダクトマーケティング、ソフトウェア・インターネットサービス製品担当、新規事業立ち上げおよびiPodビジネスの責任者などを経て、2011年に独立。2014年、株式会社チカク創業。

※iPod、iPhone、iMacは、Apple Inc.の商標です。
※iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。

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