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2019.08.22 NEW

家族の課題を社会へつなぐ――CaSyCEO加茂雄一が語る、家事代行の可能性

家族の課題を社会へつなぐ――CaSyCEO加茂雄一が語る、家事代行の可能性のイメージ

生き方の多様化が急速に進む現代において、家族が幸せに暮らす鍵となるものは何か――。

“距離”の壁を超えて家族をつなぐサービス「まごチャンネル」を提供する梶原健司(株式会社チカクCEO)が、ゲストとの対話からそのヒントを探る連載企画「再考、家族のカタチ」

今回のゲストは、クラウドソーシング型家事代行サービスを提供する株式会社CaSy(カジー)CEO加茂雄一氏。

圧倒的な成長速度で業界内外から広く注目を集めるCaSy加茂氏に「なぜ家事代行なのか」をたずねた先に見えてきたのは、日本の家庭が抱える諸問題を解決したいという加茂氏の強い想いだった。

家事代行は家庭内の“ストレス濃度”を下げる

梶原:まずは簡単に自己紹介をさせてください。僕はチカクという会社で「まごチャンネル」というサービスを運営しています。これは、専用のハードウェアをテレビにつなぐとスマホで撮った写真や動画がテレビの画面で見られるというサービスです。

梶原 健司のイメージ

スマホを使いこなせない、あるいはインターネット環境がないおじいちゃんおばあちゃんでも、リモコン操作で気軽に孫の様子を見ることができます。

加茂:まごチャンネルについては、以前から知っていました。高齢者と息子世代、孫世代をつなげる素敵なサービスですよね。

梶原:ありがとうございます。同じ家族向けテクノロジーサービスを展開している者として、一度お話ししてみたかったので嬉しいです。創業も同じ2014年ですし。

加茂:ありがとうございます。僕、もともとは公認会計士として10年ほど働いていたんです。でも、仕事をする中で「身近にいる人に喜んでもらえるようなサービスに携わりたい」という思いが強くなり、グロービス経営大学院で出会った仲間と一緒に、2014年にCaSyを立ち上げました。利用したい時間の3時間前までにネットやスマホでお申し込みいただければ、家事のプロが1時間2,500円から料理や掃除を代行させていただいています。

梶原:家事代行って、これまでだと1時間5,000円くらいかかりましたよね。我が社の女性スタッフにCaSyを紹介したら「絶対使いたい」と大絶賛でしたし、僕自身も使ってみたいです。しかも僕、子どもの頃のあだ名が「カジー」だったので、なおさら親近感があります(笑)。

加茂:え、本当ですか? ぜひ我が社のイメージキャラクターに(笑)。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

梶原:数ある「身近な人を喜ばせる」サービスの中で、家事代行サービスを選んだのは、何か理由があるんですか?

加茂:きっかけは妻の妊娠ですね。実は僕、家事がさっぱりできなくて、僕が家事をしても逆に妻のストレスになってしまうので、どうしたらよいか困って……。

梶原:その感じ、すごくわかります。

加茂:完璧に掃除したつもりでも、妻にチェックしてもらうと「まだ髪の毛が落ちてる」とかなっちゃうんですよね(笑)。そこで、「これは自分がやるよりも誰かに頼ったほうがいいだろう」と家事代行を利用してみたんです。

そしたら、家事を完璧にこなしてもらえただけでなく、これまで家事にかけていた時間を妻とのコミュニケーションに使えるようになったり、思っていた以上にさまざまな良い効果があり、これはいいぞと。家庭内の“ストレス濃度”が大きく下がったんです。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

ただその一方で、価格や申し込みハードルの高さなど、まだまだ改善の余地があるなと感じたことも事実です。そこを解決するために、自分で会社を立ち上げたんです。独自のマッチングシステムや専用アプリを活用しながら、「低価格・高品質・高スピード」を実践してきたおかげで、現在は会員が7~8万人、働き手が約6,000人という規模にまで成長することができました。

梶原:安くて、早くて、クオリティも高いサービスをテクノロジーで追求しているところが、いい意味で今っぽいですよね。利用者はやはりファミリー層が多いんですか?

加茂:立ち上げる前は、お客様のほとんどがファミリー層だろうと思っていたんですが、実際は単身者の利用も想像以上に多いですね。ファミリーが6割、残りが30代から40代の単身者といった割合です。

梶原:それは意外ですね。

加茂:おかげで、家事代行サービスはファミリー層というよりも「忙しくてやりたいことができない人」に刺さるサービスだったんだなと理解できました。

梶原:たしかに……。独身時代の自分を思い返してみると、本当に汚くて、溜まった新聞が床を覆いつくし、地層のようになっていました。あのころCaSyがあったらなぁ(笑)。

女性の抱える“罪悪感”をいかに取り除くか

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

加茂:とはいえ、やはり今でも家事をアウトソースすることに抵抗感を持っている方は少なくありません。現在、東京の家事代行サービス利用率は2パーセント以下といわれています。シンガポールなんて25%もあるのに。

梶原:なんで日本はそんなに低いんでしょうか?

加茂:色々な理由が考えられますが、家事代行サービスを使うことに対する奥様側の罪悪感は根強いようです。

梶原:女性側の罪悪感ですか、なるほど……。たしかに、抵抗がある人はまだまだ多そうですよね。食洗機とかも「家事を手抜きするような罪悪感」が非購入の理由の1つと言われたりしていますね。

加茂:そういった罪悪感を抱いてしまう方にもサービスを利用していただきやすいように、CaSyでは家事代行のプレゼント制度を設けています。たとえば、母の日のプレゼントとしてお母さんに贈ってもらったり。人から貰ったものであれば、罪悪感なく使えますからね。

加茂 雄一のイメージ

梶原:それはいいですね! でもやっぱり、「家の仕事は女性がやらなければならない」という意識って、まだまだ強いんですよね。昔と比べたらフルタイムで働く女性も増えていますが、それでも日本の女性の社会進出度は先進国中ワーストレベル。2018年に世界経済フォーラムが報告した「ジェンダー・ギャップ指数2018」でも、144カ国中110位という悲惨な結果が出ています。

加茂:そうした、女性が抱え込んでしまう、女性に抱え込ませてしまう社会は変えていかなければならない。そこでCaSyが貢献できることはないかと、常に考えています。

家族と社会をつなぐ存在としての「家事代行」

加茂:これは女性に限らず家族全般にいえることですが、世の中で生じている悲しい事件の中には、家事や育児などの負担を“家庭だけ、夫婦だけ”で抱え込んでしまったことが原因で起きてしまった事件が少なくないと思うんです。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

僕の実体験でもあるんですが、家庭内のストレス濃度は、家族だけでどうにかしようと思っても下げることが難しい。そこに、家事代行業者という第三者が入っていくことで、家族や夫婦が抱えている困難をサポートする、空気を入れ替えることの意義は大きいと思うんですよ。

梶原:家事代行サービスは、家族の具体的な負担を軽減するだけでなく、内にこもりがちな「課題を抱える家族」と「社会」のタッチポイントにもなりうる。

加茂:そうです。家族が抱えている負担に第三者が気づき、サポートするような考え方が世の中に広がるためのお手伝いができたらいいな、と。

梶原:なるほど。僕は田舎出身ということもあって、近所の人も含めた共同体で助け合いながら育ってきました。でも都市部は、核家族化でコミュニティのサイズが小さくなり、そのせいで「自分たちだけでがんばらなくちゃ」という考え方が当たり前になっているように感じます。

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でも本当は、みんなが助け合って幸せに生きていけるような関係が広がっていくべきだし、そのために、テクノロジーが役に立つ場面もたくさんある。CaSyさんは、そういう流れを加速させている企業の1つですよね。

加茂:ありがとうございます! そういっていただけると嬉しいです。わが社には「世の中に笑顔の暮らしを当たり前にする」というビジョンがあります。日本の家族が家事や育児などの負担を、罪悪感なしにアウトソーシングすることのできる機会を提供する。課題を家庭内で抱え込まずに、気軽に「シェア」することのできる社会をつくる。そうすることで、世の中に笑顔を増やしていきたいですね。

「コト消費」から「トキ消費」へ

梶原:先ほど「第三者」という表現がありましたが、CaSyのスタッフさんは依頼主のご家族と、どのようなコミュニケーションを取られているんですか?

加茂:スタッフによって異なりはしますが、中には契約しているご家族から旅行に誘われるほど、親密な付き合いをしている者もいます。小さいお子様がスタッフのことを下の名前で呼んだりすることもよくあるようです。

梶原:第三者が家族に欠かせない存在になっているんですね。家族が拡張されているみたいで面白いです。「まごチャンネル」も、疎遠になりがちな親と子、遠くにいる祖父母と孫をテクノロジーでつなぐという点で、家族を拡張させるサービスだと考えているので、そういう意味で近しいものを感じます。

加茂:「子育Tech」「ベビーTech」なんて言葉も登場しているくらい、テクノロジーで家族をサポートするサービスは、着実に増えてきていますよね。これは非常に良い傾向だと思っています。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

梶原:僕もそう思います。テクノロジーが発展し、そのテクノロジーが当たり前になることで世の中は進歩してきた。

たとえば昔は、洗濯は女性が手洗いするものだった。でも洗濯機が世の中に普及したことで、これまで手洗いをしていた女性に時間が生まれ、その時間を使って女性が外に出たことで、世の中がさらに進歩した。

同じように、テクノロジーによって「家族」や、それを取り巻く社会がアップデートされていくんだと思う。

加茂:テクノロジーによって時間が生まれるというのは大事な視点ですよね。今、日本の消費ニーズは物品で満たされる「モノ消費」から経験を大切にする「コト消費」に移っていると言われていますが、僕はその後、豊かな時間を過ごすことに価値を見出す「トキ消費」の時代がくるのではないかと予想しています。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

私たちのお客様にもご不在時のお掃除を頼まれる人が増えていて、これまで掃除にあてていた時間を使ってゆっくり休んだり、お子様と外出されたりしているようです。CaSyではそうした背景をふまえて、単純に家事を代行するだけでなく、「(お客様が)大切なことを大切にできる時間を作る」というミッションも意識し始めました。

梶原:そのミッション、すごく共感できます。これからの時代、人間は労働から少しずつ解放されて、自分が本当にやりたいことに時間を使う世の中になっていくと思うんです。

家事は英語で「house work」と呼ばれるように、立派な労働。比較優位(経済学者デヴィッド・リカードが提唱した概念)から考えれば、人間は本来的には得意なことをやったほうがいいわけで、家事が好きなら自分でやればいいし、やりたくなければアウトソースすればいいわけですよね。さっきも話していたように、それによって解決される問題がたくさんあるはず。

加茂 雄一、梶原 健司のイメージ

CaSyさんはテクノロジーを活用して、世の中が進むべき方向をある程度コントロールできる場所にいると思います。お互いに協力し合えることもあると思うので、今後ともよろしくお願いします。

加茂:こちらこそ。一緒に家族の幸せをサポートしていきましょう!

EL BORDEでは梶原氏のビジョンを受け、「再考、家族のカタチ」と称した連載企画をスタート。梶原氏をホストに、各回さまざまなゲストを迎えながら「家族のカタチ」にまつわる議論を展開していく。

まごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージまごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージ

加茂 雄一(かも ゆういち)
1982年生まれ、埼玉県出身。早稲田大学商学部4年時に公認会計士2次試験を突破。卒業後は監査法人に入所し、大手からベンチャーまで幅広い企業を担当。グロービス経営大学院を経て2014年に株式会社CaSyを設立。一女の父。
梶原 健司(かじわら けんじ)
1976年、兵庫県淡路島出身。新卒でアップルの日本法人に入社し、マネージャー職まで務めた後に独立。2014年に株式会社チカクを創業し、祖父母世代がテレビで孫の写真や動画を見られるサービス「まごチャンネル」の提供を開始。二男の父。

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