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2019.10.28 NEW境界線の越えかた 家族のカタチ

帰って主人に相談します――ベビーシッターサービスの流行と、家族に残された課題

帰って主人に相談します――ベビーシッターサービスの流行と、家族に残された課題のイメージ

株式会社チカクCEO梶原健司が、ゲストとの対話を通じて「家族」が幸せに暮らすためのヒントを探る連載企画「再考、家族のカタチ」

今回のゲストは、スマートフォンを用いたベビーシッターマッチングサービスを提供する、スマートシッター株式会社代表取締役の丸山祐子氏だ。

行政に後押しされるベビーシッター業

梶原:今日はお会いできて嬉しいです。スマートシッターさんのサービスって、利用者からの評価がとても高いですよね。すごく安いのに、質も高い。家族のありかたが多様化している現代で、確実に今後もどんどん伸びていく事業ですよね。

梶原 健司のイメージ

丸山:ありがとうございます! おかげさまで、ご利用者さまから非常に高い評価をいただけています。たしかに、近年ではベビーシッター利用時に国や自治体から助成を受けることができるようになるなど、時代の流れに後押しされている自覚はありますね。

たとえば東京都では、お子さんが保育所等に入所できるまでの間、保育所等の代わりとしてベビーシッターを1時間あたり250円で利用できる制度(ベビーシッター利用支援事業)がスタートしています。また、2019年10月から始まった幼児教育無償化では、ベビーシッターも月3.7万円分まで無償で利用できるようになりました。企業様の福利厚生としてご利用いただけるケースも増えていますね。

丸山 祐子のイメージ

梶原:3.7万円分まで無償というのは凄いですね! やっぱり、ニーズが拡大しているんでしょうね。現状は、どういった方の利用が多いのでしょう?

丸山:共働き家庭など、お仕事をされている方の利用が増えています。時間帯として一番多いのは、平日の夕刻以降の利用。シッターが保育園や学童までお迎えに行って、保護者さまが帰ってくるまで自宅で一緒に過ごすというスタイルです。

梶原:2~3時間くらいですか? 短時間での利用が多いというのは少し意外ですが、いわれてみると確かに需要がありそうな時間帯ですね。

丸山:最近は「30分送迎」というサービスも急速に伸びていますよ。保育園から自宅までとか、保育園から習い事先までとか、30分程度で済む送迎をシッターに依頼するケースが増えています。

梶原:習い事先で親御さんとバトンタッチする、というわけですね。

丸山:そうです。フルタイムで働かれている方の場合、平日に送迎の時間をとるのが難しいじゃないですか。そのため、習い事をさせてあげたいのにできなかったりする。そんな課題に応えるためのサービスです。もちろん、習い事中の見守りも含めてお願いしたいという依頼にも対応しています。

梶原:柔軟に働ける企業が増えているとはいっても、やっぱり働きながら余裕を持って子育てに取り組めるような仕組みを提供している企業はまだまだ少ない。スマートシッターさんはそうした、ちょっとしたところで生じる不具合とか負担を、うまく救い上げているからこそ伸びているんでしょうね。

今の子どもや若者にとってのロールモデルが足りていない

梶原:先日、大学生向けにインターンとしてシッターをやってもらう取り組みも始めたというニュースを拝見しました。すごく面白いなと。あれって、どういった意図で取り組まれているんですか?

丸山 祐子、梶原 健司のイメージ

丸山:これからの日本は、ほとんどが働きながら子育てをすることが前提になっていくと思うんです。でも、今の大学生くらいの世代は、まだ専業主婦のお母さんに育てられた人も多い。だから共働き家庭など働きながら子育てをすることがどういうものか、イメージを持てていない人が多いんですよ。

そういった若い世代にシッターのインターンを経験してもらうことで、将来自分が働きながら子育てをするときのイメージを掴んでもらいたいな、と思って始めました。

梶原:なるほど。専業主婦家庭で育ってきた人でも、それを機会に働きながら子育てをする家庭に入ってみれば、「働きながら子育てするって、こんな感じなのか」というのがわかりますもんね。

僕はてっきり、子どもたちが主語なのかと思っていました。両親や保育園の先生よりも若い世代、自分たちにより近い世代との触れ合うことで、子どもたちの成長にいい影響を与えようとしているのかと。

梶原 健司のイメージ

丸山:もう一つの狙いとしてそういった側面があります。ご利用者さまからもそういった要望は多いです。私も、子どもが家族以外の他者と触れ合う機会は増えたほうがいいと思っています。

梶原:以前、NPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子さんと対談したときにも少し話題になったんですが、今の日本の子どもって、両親以外の大人との関わりがすごく減っているじゃないですか。僕は田舎の三世代家族で過ごしたせいか、両親だけでなく、じいちゃん、ばあちゃんや近所の人にも育てられたという感覚がすごくあるんです。両親ではない大人と触れ合うことで得られた経験や自尊心って、今思うと本当に大きかったなって。

丸山:そうですね。そういう意味で、梶原さんの取り組まれている「まごチャンネル」みたいなサービスにはすごく価値があるなと思います。私自身も、娘が3歳になって社会性に向けていろいろな発達の時期にあるので、両親や保育園以外での人との関わりを適度に増やしたいと思い始めているところです。祖父母は遠方在住のため、なかなか会えないですしね。

梶原:幼少期に他者との関わりが少ないと、どんなデメリットがあるとお考えですか?

丸山:自分自身を振り返ってみると、他者との関わりの量が原因ではないかもしれないですが、結果的にロールモデルが両親のみだったので、キャリアを考えるうえで少しもったいなかったなと感じます。

丸山 祐子のイメージ

理系の職種に就いている父の影響で、メーカーの研究職に就職したんですが続かず、別の職種に転向することになりました。また、母は専業主婦だったので、働きながら子育てをすることについて、具体的なイメージを持っていませんでした。

大学生インターンの話と重複するんですが、ロールモデルが両親のみの場合、どうしてもそれがすべての起点になってしまうんですよね。

梶原:確かに、そういうところがあるかもしれませんね。

丸山:これから先の日本や世界で生き抜いていくためにも、若い世代や子どもたちには、さまざまな人と関わって多様な生き方や考え方を身に付けてほしいと思っています。スマートシッターがその一助になれば嬉しいですね。

「主人に相談します」という言葉をなくしたい

梶原 健司のイメージ

梶原:とはいえ、ベビーシッターを利用することに偏見を持っている人は、いまだに少なくないのではないでしょうか?

以前、家事代行サービス「CaSy」の加茂社長とお話しした際にも似たような話をしたのですが、これまで「家族の仕事」とされていたことであっても、うまくアウトソースすることで、時間的にも精神的にも家庭内に余裕が生まれて、結果的に家庭のトラブルを防いだり、よりよい子育てができる世の中になってきている。にもかかわらず、こうしたアウトソーシングに対して、世間にはまだまだ偏見がある。

丸山:そうですね。日本ならではの心理的な壁というか。まだ、「ベビーシッターを使っています」とオープンに言える世の中にはなっていないと感じます。家事のアウトソーシングはずいぶん許容されてきた印象があるんですが、それが育児になると、なぜか「怠けてるんじゃないの?」という空気になってしまう。

そんなこともあって、日本国内におけるベビーシッターの利用率は6%にすぎないんです。

梶原:海外だと、だいぶ違うんでしょうか。

丸山:収入が低い世帯であっても当たり前のようにベビーシッターを利用している国は少なくないですね。アメリカなどでは利用率が50%を超えるという調査結果もあります。

丸山 祐子、梶原 健司のイメージ

梶原:どうやったら、その風潮が変わるんでしょう。少なくとも、男性側の意識改革は必要ですよね。いまだに、「育児=女性の役割」という考え方にとらわれている方は多い。

丸山:「主人が反対するので使えません」とか、「帰って主人に相談します」という方は少なくないですね。これは、本当に反対されている場合もあるでしょうし、「子育ては自分でやらなきゃ」と思って自主規制的にいっている場合もあるだろうと思います。どちらにしても、そういった言葉を無くすためにできることを考えていきたいですね。

たとえば、先に紹介した大学生インターンなどを経験した人であれば、将来自身が共働きで苦労した際に「困ったときにはベビーシッターを使っていいんだ」と感じられると思うんですよ。

丸山 祐子、梶原 健司のイメージ

梶原:なるほど! スマートシッターさんの取り組みは、目の前の課題を解決するだけでなく、将来的な日本の家族のありかたも見据えているんですね。

丸山:ありがとうございます。「(子育てには)夫婦どちらかに押し付け合う以外の方法もあるんだよ」ということを伝えていきたいですし、「ベビーシッターを使うのが当たり前」という状況を作ることで、日本の家族の物理的・心理的負担を減らすことに貢献したいです。

梶原:今後の展開がとても楽しみです!

EL BORDEでは梶原氏のビジョンを受け、「再考、家族のカタチ」と称した連載企画をスタート。梶原氏をホストに、各回さまざまなゲストを迎えながら「家族のカタチ」にまつわる議論を展開していく。

まごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージまごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージ

丸山 祐子(まるやま ゆうこ)
1977年生まれ、広島県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。メーカーの研究職に従事後、野村證券で証券アナリスト、クックパッドで経営企画、IR、広報、人事を歴任。2017年にスマートシッターに入社、代表取締役に就任。一女の母。
梶原 健司(かじわら けんじ)
1976年、兵庫県淡路島出身。新卒でアップルの日本法人に入社し、マネージャー職まで務めた後に独立。2014年に株式会社チカクを創業し、祖父母世代がテレビで孫の写真や動画を見られるサービス「まごチャンネル」の提供を開始。二男の父。

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