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2019.11.28 NEW境界線の越えかた 家族のカタチ

石山アンジュが考える、衰退する日本で生き残るための意外なソリューション

石山アンジュが考える、衰退する日本で生き残るための意外なソリューションのイメージ

血縁のない他人同士が「家族」として生活し、その数を増やし、拡張していく――。そうした新しい家族像として話題を呼んでいる、拡張家族「Cift(シフト)」。

距離の壁を超えて家族をつなぐサービス「まごチャンネル」を提供する梶原健司(株式会社チカクCEO)が、ゲストとの対話から、多様化する家族が幸せに暮らすためのヒントを探る連載企画「再考、家族のカタチ」

今回のゲストはCiftのメンバーで、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師として活動中の石山アンジュ氏。Ciftの実験的な取り組みの中で石山氏が見つけた「これからの家族にとって鍵となるもの」とは?

シェアハウスではなく、「家族」

梶原:はじめまして。チカクという会社を経営している梶原です。「離れて暮らす家族をつなぐ」をコンセプトに、実家のテレビを使って孫の写真や動画が見られる「まごチャンネル」というサービスを運営しています。

石山:素敵な取り組みですよね。私も自分のおばあちゃんにプレゼントしたいです。おばあちゃんはガラケーだから、写真を1枚送るにしても大変なんです。画質を下げる加工をしなきゃいけないから(笑)。

石山 アンジュ、梶原 健司のイメージ

梶原:確かに。ぜひご検討ください(笑)。石山さんは政府の主導するシェアリングエコノミー伝道師としてご活躍されているだけでなく、一般社団法人Public Meets Innovationというシンクタンクの代表を務められている他、今話題の「拡張家族Cift」のメンバーとしても多数のメディアにご出演されています。

今日は、ぜひ「拡張家族」についてお話をうかがいたいと思い、お声がけさせていただきました。そもそも、「拡張家族」って何ですか?

石山:ここでいう「拡張家族」は、血縁関係に基づかない共同体のことです。一緒に暮らして、一緒に働いて、企業や行政とも協調しながら、家族の姿や家族観を見直してみようとする取り組みです。

38人のクリエイターが同じ家に住むところからスタートして、今は70人のメンバーが3つの拠点に暮らしています。

梶原:血のつながりがない者同士で新しい家族の姿を模索するというのは、本当に興味深いです。メンバーにはどのような方がいらっしゃるんですか?

石山:本当に多彩ですよ。弁護士もいればベンチャーキャピタリストもいるし、アーティストやお坊さんもいます。独身者だけでなく、夫婦や家族で参加される方も増えていて、0歳から60代まで、幅広い年齢層で構成されています。

集合写真のイメージ

梶原:年齢層まで広いというのが驚きですよね。いわゆる「シェアハウス」などではなく、「家族」として生活されているのだなということが伝わってきます。

「夫婦」に血のつながりはない

梶原:そもそも、石山さんはなぜCiftに参加しようと思ったのでしょう?

石山:一つは自分の原体験です。父が自宅でシェアハウスを経営していたので、子どもの頃は毎日知らない人と生活するのが当たり前。母も海外出張などで家を空けることが多くて、そういうときは近所のお宅にお世話になったりしていました。

私が12歳のときに両親が離婚したので、それ以降は週3日は父の家、2日は母の家、残りは友人の家という生活。当時はまだ離婚家庭が珍しく、学校の同級生からは「アンジュの親って離婚したんだ」「かわいそう」というような目で見られることもありました。

でも、両親の新しいパートナーも私を実の娘のようにかわいがってくれたし、さみしいと思ったことはなかった。そんな経験をしていたこともあって、「家族のあり方って、もっと多様でいいんじゃない?」って思うようになったんです。

石山 アンジュのイメージ

もう一つの理由は、Ciftの考え方に共感したことですね。Ciftの基本コンセプトは「家族とは何か?」という問いを分かち合い、相手を受け入れ、自分を変容させることにあります。そういう中で、「拡張家族が100人、1,000人になってお互いの顔が見えなくなったとき、それでも家族として他者を受け入れられるのか?」ということに挑戦をしてみたいなと思ったんです。最終的に目指しているのは、家族を全人類まで拡張した先にある世界平和ですね。

梶原:「血縁に縛られなくたっていいんじゃないの?」という思いは、すごくわかります。僕は淡路島の田舎で育ったんですが、親や祖父母はもちろん、血縁のないご近所さんにも「育ててもらった」という実感があります。いま思えば、あれも一種の「家族」に近かったのかもしれない。

梶原 健司のイメージ

そもそも、今の日本でスタンダードになっている核家族という形態って、人類の長い歴史の中でごくごく最近生まれてきた考え方。それまでは村や町屋など、同じ土地に住むことで生まれる「地縁」が強かったわけですよね。「血縁」と「地縁」、「家族」と「家族以外」って、昔はもっとなめらかな連なりがあったんじゃないかという気がします。

石山:そうですね。そもそも、核家族の中心に位置する「夫婦」という関係も血縁でつながってませんしね。

梶原:そう! 感覚の違いを感じたりすると、「嫁とは血がつながってないな」って思うことがよくあります(笑)。でも、血のつながりじゃない関係性の深さって、絶対あるんですよね。血がつながってるから関係が深くあるべきとか、深いはずとかいうけど、「ほんまかいな」と。

石山 アンジュ、梶原 健司のイメージ

石山:私もCiftでそれを実感しています。「家族とは何か?」という問いに対する答えは、Ciftのメンバーそれぞれ違いますが、私は「自分を受け入れてくれて、理解をしてくれて、何かあったときに助ける意思がある存在」が家族なんだと思っています。

もちろん私自身も、メンバーにトラブルがあったときは手を尽くしますし、メンバーの子どもたちに万が一のことがあったときには絶対にサポートしようと思っています。そこに、血のつながりは関係ないと思うんです。

家族に求められる「受容と変容」

梶原:とはいえ、赤の他人を家族と思えるほど、深い関係性を築くのは簡単じゃないですよね。しかも、Ciftのメンバーには複数の生活拠点を持っている方も多いと聞いています。「家族」として共に暮らしていくために意識していることってありますか?

石山:大切なのは、対話をして、相手の生活を「自分ごと化」することだと思います。Ciftは営利団体ではなく、単なるコミュニティなので、一般的な社会組織のようなガバナンス機能があるわけではありません。その中で何かを解決するためには、とにかく対話をし続けるしかないじゃないですか。

石山 アンジュのイメージ

だから、Ciftに参加したいという人には、必ず複数のメンバーが面談するようにしています。そこでチェックするのは年収がどうとかではなく、自分をオープンにさらけだすことができて、なおかつ相手を受け入れ、自分を変えようという意思があるかどうか。それがコミュニティにおける信頼担保になっています。

梶原:自己変容と他己受容の両方が必要ということですね。家族にああしろこうしろいうのではなく、相手を受け入れたうえで、家族がベストな状態になれるように自分を変えていく。

石山:そうです。Ciftはさまざまな特技を持ったメンバーがいるので、お互いにスキルを提供し合いながら生活しています。その話をすると、「70人のメンバーの中には、コミットしていない人もいるんじゃないですか?」と聞かれることもあるんです。でもCiftは会社や部活ではなく、それぞれの自発的な行動で成り立っているコミュニティなので、コミットの量は問題にしていません。それをどう受容できるかという、自発性の重なりでしかない。

たとえば、一般的な4人家族に不良の弟がいたとします。彼は世間的にはいろいろ迷惑をかけているかもしれないけれど、家族はやんちゃな彼がいるからこそバランスが取れて成り立っている。そんなケースだってあるじゃないですか。シフトには0歳児のメンバーもいます。コミット量ではなくて、家族という存在自体がコミット。だから受容と変容が必要なんです。

集合写真のイメージ

梶原:確かに。どれだけ迷惑かけられようが「お前、家族に対して何も貢献してないじゃないか」とはならない(笑)。それは家族とは何かを考えるにあたり、非常に重要な視点ですね。

つながる手段としての、思想、テクノロジー

梶原:拡張家族というものに難しさを感じることはありますか?

石山:人数的な拡張を続けていけば、一人一人の接点がどんどん薄くなっていきます。その中で「どこまで他者を自分ごと化できるか?」というのが一番の課題でしょうか。

でもその一方で、他者を自分ごととしてとらえるためのファクターは、リアルな接点だけじゃないとも思っています。同じ宗教、思想を支持している人たちは、価値観や行動規範を共有したりもしていて、それが信頼担保になるケースだってある。

石山 アンジュのイメージ

たとえば、ヒッピーには「あなたが誰だかはわからないけれど、同じヒッピーならうちでごはんを食べていってよ」というカルチャーがあります。それってヒッピーカルチャーという思想を共有している者同士だからできることじゃないですか。

梶原:たしかにそうですね。私は詳しくはないのですが、知人にユダヤ教の方がいて、彼も「同じユダヤ教ならみんなファミリー」という意識が強くて、わりとウェルカムにいろんな人を食卓に招いていましたね。

石山:そう、同じようにリアルな接点でも血縁でもない、他者を「家族」と認識する手段は、きっとほかにもあるんじゃないかと思います。

梶原:そうですね。話を戻すと、人数が増えることによる弊害という点については、テクノロジーが解決してくれる部分が大きいのではないでしょうか。かつてはダンバー数という「人間も含めて霊長類が親密なグループを築くには、人数の限界は150人」という説がありました。しかし今は時間や場所にとらわれずにコミュニケーションがとれる時代。ITを活用することでその限界は超えられる気もします。そして、そこから新しい家族の姿が見えてくるかもしれません。

梶原 健司のイメージ

石山:物理的に一緒に時間を共にできなくても、距離が離れていても、テクノロジーによってお互いをリアルに感じ、接点を持つことは可能ですからね。

梶原:実は、社名の「チカク」というのも、距離も時間も越えて家族や大切な人を近くさせたい、まるで隣にいるかのように知覚させたいという思いで命名したんです。

石山:素敵ですね。距離を超えて接点を持てる点において、「まごチャンネル」はすごくいいツールだなと感じています。今後、高齢のメンバーが加わった際などに、もしかしたらテクノロジーの壁みたいなものを感じることがあるかもしれない。コミュニティを作るにあたって、テックがハードルにならない組織作りを意識していきたいですね。

「愛のソリューション」の時代

梶原:まだまだお話を続けたいのですが、時間もなくなってきたので、最後の質問をさせてください。今後、日本の家族ってどうなっていくべきだと思いますか?

石山:今の日本には、独居老人や引きこもり、女性の子育て負担など、さまざまな問題が生じています。そしてこれらの問題は、他者とのつながりが少ないことが一因となって生じているのではないでしょうか。

石山 アンジュ、梶原 健司のイメージ

困ったときに必要になるのは誰かの助けであり、セーフティネットとしてのつながりです。これは「友達」という関係には求めづらいもの。私自身は、家族というものを定義する必要はないと思っていますが、現実には家族という概念がもたらすつながりや影響力がすごく強い。だからこそ家族が再定義され、家族に求めるようなつながりをより多くの人と持てる世の中になっていくといいなと思っています。

梶原:そういったつながりを持つためには、相手を受け入れ、ときには自分が変わろうとする意思、そして対話が必要ということですね。

石山:そう思います。その中で、もっと「恋愛的」な人との関わり合いが増えていいと思ってるんですよ。会社とかその同僚とかは利害でしかつながっていないから、ケンカすればすぐに「離れればいいや」とか「退職しよう」ってなりますよね。

でも、恋愛って利害関係なしに、「好きだから相手にわかってほしいし、わかりたい」と思える。時にはケンカもするし、めちゃめちゃ傷つけあいながらも、それでもどうしたら二人でいられるかを考えるじゃないですか。

超面倒くさいけれど、だからこそ深い関係が生まれる。そういう関わり合いを恋人だけでなく多くの人と持てれば、「家族」と呼べるようないい人間関係があちこちに生まれるような気がするんです。

石山 アンジュ、梶原 健司のイメージ

梶原:ずっと思っていましたが、石山さんの根っこにあるテーマは「愛」なんですね。

石山:あ、そうなんです。自分ごと化するって、要は自分の愛をより多くの人と共有できるかということなんですよね。私はCiftを「愛の道場」と言ってます(笑)。

梶原:いいですね~。「隣人を愛せよ」じゃないですけど、まずは他者を受け入れることから始めることで、多くの人が愛をベースにした深い関係を築いていけるようになればいいですよね。特にこれからの日本は経済的に厳しい状況が来る可能性もありますし、いっそう助け合いの精神が必要になりそうです。

石山:そういう時代だからこそ、「私とあなたは違う」でなく「一緒だね」と考えて、人と深く関わり合い、助け合う姿勢が必要になっていくと思います。政治や経済は基本的に、最大公約数的な「数の理論」でしかソリューションを展開できませんが、私は誰一人取り残さない、「愛」のソリューションを実現していきたいです。

EL BORDEでは梶原氏のビジョンを受け、「再考、家族のカタチ」と称した連載企画をスタート。梶原氏をホストに、各回さまざまなゲストを迎えながら「家族のカタチ」にまつわる議論を展開していく。

まごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージまごチャンネル×EL BORDE presents 再考、家族のカタチのイメージ

石山 アンジュ(いしやま あんじゅ)
1989年生まれ、国際基督教大学卒業。リクルート、クラウドワークスなどを経て、現職は一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長。現在はイノベーションに特化した政策提言を行う一般社団法人Public Meets Innovation代表としても活動中。著書に『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)。
梶原 健司(かじわら けんじ)
1976年、兵庫県淡路島出身。新卒でアップルの日本法人に入社し、マネージャー職まで務めた後に独立。2014年に株式会社チカクを創業し、祖父母世代がテレビで孫の写真や動画を見られるサービス「まごチャンネル」の提供を開始。二男の父。

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