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2018.06.21 NEW

【独学特集:後編】新しいことを学び始めたい人必見! 独学には「システム」があった!?

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独学の効果を高めるには、何から始めるのが正しい? 独学のシステムと、その考え方について、『知的戦闘力を高める独学の技法』の著者に聞いた。

面白くて続けてしまうのが独学であり、尚且つ知識の歩止まりもいいことを前編で解説した。とはいえ、学校の勉強しか知らない“独学初心者”は、「そもそも何から学べばいいか分からない」という疑問を持つことだろう。そこで、後編では「独学の始め方」について、前編に引き続き、独学の技法を本にまとめた山口周さんに聞いた。

まず「問い」を持つことから始める

日々の仕事で忙しいビジネスパーソンにとって、時間は有限。ゆえに、闇雲にインプットするのは効率が悪い。山口さんは、「歩止まりのいい独学を実行するには、独学をシステム化することが大事」だと説く。

(1)戦略、(2)インプット、(3)抽象化・構造化、(4)ストックという4つの構造からなるのが、山口さんが考える「独学のシステム」。知的戦闘力を高めるためには、この4つの順番で進めていくことが効果的なのだという。

まず、(1)の戦略について解説していこう。
戦略を考えるうえで大事なのは、自分がすでに持っている知識に着目すること。
たとえば、山口さんの場合は大学で哲学と美学美術史を学び、社会人になってからは経営の支援をしてきたため、「人文科学と経営科学の交差点で仕事をする」ことを見据えて独学のテーマを選んでいるという。そのテーマを追求する中で、自分の中に芽生えた「問い」を拾い上げるのが独学への第一段階。「人文科学と経営科学の交差点」というテーマから生まれるいくつかの問いを例に挙げると、以下のようになる。

  • 美意識はリーダーシップをどう向上させるか?(「人文科学と経営科学の交差点」の中心にある問い)
  • 人の心を惹きつける建物の共通点は何か?(人文科学視点からの問い)
  • 競争に巻き込まれない成長モデルとは何か?(経営科学視点からの問い)

問いが浮かび上がってきたら、次に「問いに対する仮説を立て、検証していく」のが、独学の進め方。仮説を立てること、検証することで、知識がより強固なものになるからだ。その際、経営についての問いだからといって、経営本だけに頼るのではなく、小説、歴史、生物学、文化人類学といった多岐のジャンルの書籍、資料を読み漁る=インプットすることがポイントとなる。

若いうちは乱読も必要?

では次に、(2)インプットに対する考え方やコツを紹介するとしよう。
「若いうちはインプットを特に重視すべきです」とは山口さんの言葉。加えて、インプットの際には、前述したような“ジャンルを決めつけない乱読”も必要だと強調する。その方が、幅広い仮説を持つことができるからだ。

たとえば「イノベーションが起こる組織とはどのようなものか?」という問いに対して、経営の視点だけで考察するのと、文化人類学や歴史の視点でも考察してみるのとでは、仮説の広がりや深みが変わってくるだろう。
つまり、乱読を経験しておけば、自然と引き出しが多くなり、問いに対するアプローチが多面的になるというわけだ。また、乱読することで「ハズレ本」への嗅覚も養われるため、質の高いコンテンツを峻別する能力も身に付くだろう。

ただし、自分自身の中で消化不良を起こしてしまうようなレベルのインプットは独学に不向き。古典などの難解な本を無理して読もうとすると、挫折することにもなりかねない。純粋に面白いと思えるもの、知的好奇心が刺激されるものを選び、身の丈にあったインプットを心がけるといいだろう。

読書に慣れていない人は、ほかのものからインプットする方法もある。最近は動画投稿サイトや無料のオンライン講座の質が高くなっているので、基礎知識ゼロの分野については、動画から入るのも一案だ。
移動しながら耳からインプットできるラジオの講義などもおすすめだし、映画好きなら社会問題をテーマにした映画から入ってもいい。ただし、その場合は評価が高い10年以上前の映画を選ぶのが得策。時を経ても色褪せない作品は、良質なコンテンツである確率が高いためだ。

知識を抽象化して、デジタル化してストックする

(3)抽象化・構造化についてもしっかりと意識しておきたいところ。
戦略、インプットの方法を紹介してきたが、特に初心者が陥りがちなのが、「インプットだけで満足して、抽象化・構造化をしないこと」だと山口さんは指摘する。

ここで言うところの知識の抽象化・構造化とは、ある事実から本質的な要素だけを抜き出して、背景や原因などを考察し、そこから「示唆」や「洞察」を引き出すことを指す。
なるほど、文化人類学や歴史の知識をインプットするだけでは単なる「物知り」で終わってしまうが、そこから何らかしらの「示唆」や「洞察」を引き出しておけば、ビジネスや実生活でも知識(あるいは知恵)として応用できそうだ。

そのように抽象化・構造化された状態でインプットされた知識は、仮説を補完する際にも使いやすいのだという。

そして最後に、(2)ストックについて。
山口さんは、「抽象化・構造化された知識は、必要に応じて引き出せる形にストックしておくことも重要」だという。独学で得た知識の中には「大事そうだけれど、いつ役に立つのかわからない」ものも多いからだ。

たとえば、読書のストック方法としておすすめなのは、「重要・面白い」と思った箇所を何らかのデジタルデータとして記録しておくこと。必要な時に、効率よく検索し、引き出せる状態にしておくことが、知的戦闘力を上げる大事な要素なのだ。

以上、後編では「(1)戦略、(2)インプット、(3)抽象化・構造化、(4)ストック」という4つの構造からなる「独学のシステム」を紹介してきた。
ただ闇雲にインプットするのではなく、戦略、つまり「自分なりの問い」を持ちながら、好奇心を満たし、新しい知識や知恵、イノベーション能力を身につける。そうとらえると、独学は“つらいこと”ではなく、“わくわくすること”に思えてくるのだが、いかがだろうか。

監修:山口 周(やまぐち しゅう)

1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。著書に『知的戦闘力を高める独学の技法』がある。

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