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2019.11.18 NEW

投資家目線の基礎知識! 経済成長を左右する「人口ボーナス」の読み解き方

投資家目線の基礎知識! 経済成長を左右する「人口ボーナス」の読み解き方のイメージ

次に伸びる国はどこか? ビジネスマンであれば耳にする場面が少なくない、世界各国の経済成長予想。とりわけ、投資をしている人であれば特に気になる話題であろう。

ビジネスパーソンであれば自分の意見を持っておきたい話題でもあるが、そもそもこうした予想は、何を根拠になされているのか?

もちろん、経済成長にはいくつかの要因があるため、一概に全てを語ることはできない。しかしそうした要因のなかでも、特に現代において重要視されている予想手段がある。「人口動態と経済活動の関係」からみる手法だ。

「奇跡的な成長」を予測する方法

人口と経済の関係は、古くからさまざまな議論が繰り広げられてきた。

たとえば16世紀から18世紀の欧州では「人は力なり」といわれていたことからもわかる通り、人口規模が大きければ大きいほど国は繁栄するという考えが主流であった。かのアダム・スミスも「経済成長を促す規模の経済や分業体制の実現には、ある一定以上の人口規模が必要である」と指摘していたことは、よく知られたことだ。

一方で戦後期においては、高い人口増加率は経済成長を阻害するという考え方も存在した。急激な人口増加に経済成長が追いつかず、その国の所得水準が上がらないばかりか、資源制約の壁にも直面することになると考えられていたのだ。

人口の増加は経済成長を促すのか、それとも阻害するのか──。長年にわたる議論を経て、現代において主流となっているのは「人口規模の大小よりも、むしろ人口構成の変化が経済成長に影響を与えるのではないか」という考え方だ。

その考えによると、新興国の多くには、特定の人口構成によって“奇跡のような”経済成長を遂げる時期──「人口ボーナス(期)」があるという。

日本の高度経済成長を支えた「人口ボーナス(期)」

「人口ボーナス(期)」とは、ある社会が「多産多死」の社会から「少産少子」の社会に切り替わる際に生じる、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)がその他の人口の2倍以上ある期間のことを指す。

一般的に、新興国の人口構成比は年少人口が圧倒的に高い割合を占めていることが多い。しかし、ひとたび出生率が低下すると、その国は一時的に子どもが少なく、総人口における生産年齢人口の割合が高い時期を迎えることとなる。この時期が「人口ボーナス(期)」だ。

総人口における生産年齢人口の割合が高まれば、豊富な労働力が経済活動を活発にするだけでなく、教育や医療、年金などの社会福祉負担が少なくなり、資金を新しいビジネスに回すことができるようになる。これが、人口ボーナス(期)にある国が経済成長する仕組みだ。

ハーバード大学のD・E・プルーム教授が1998年に発表した論文「新興アジアにおける人口転換と経済的奇跡」によると、1960~90年にかけて生じたアジア諸国の成長の多くは、少なからず人口ボーナスの影響をうけていたという。

もちろん日本も例外ではない。日本が圧倒的な経済成長を成し遂げた1960年代から90年代初頭、日本も人口ボーナス(期)にあった。人口ボーナスの影響は株価の推移にも如実に現れている。下の図を見れば、人口ボーナス(期)のピークが株価と連動していることがわかるだろう(図1)。

図1:人口ボーナスと株価の関係(日本)

図1:人口ボーナスと株価の関係(日本)

出典:国際連合のデータを基に、野村證券投資情報部が作成。

※上記(人口ボーナスのスタート)は生産年齢人口がその他の人口の1.8倍の時としている

日本はこの期間に生産年齢人口の増加にともなう労働力の拡大によって工業化を加速し、高度成長を実現することができた。日本の経済成長は、人口ボーナスなしには成しえなかったのだ。

次に、同じ東アジアである韓国と中国に目を向けてみよう(図2)。韓国の場合、人口ボーナス(期)は1983年頃に始まり、2015年頃をめどにピークを迎えている。その間の成長は、株価にして約15.3倍。中国のボーナス期も韓国と数年の誤差しかないが、この期間に中国が世界有数の経済大国として頭角を現したことは説明するまでもないだろう。

結果として、人口ボーナス(期)にあった中国では、2012年に世界全体のGDP比において11.5%を占めるまでに成長した。ただし、両国ともに現在はボーナス期のピークを過ぎているため、これまでと同様の速度で成長し続けることは難しいという予想がされることもある。では、次に人口ボーナスを享受できる国はどこか。

図2:人口ボーナスと株価の関係(韓国・中国)

図2:人口ボーナスと株価の関係(韓国・中国)

出典:国際連合のデータを基に、野村證券投資情報部が作成。

※上記(人口ボーナスのスタート)は生産年齢人口がその他の人口の1.8倍の時としている
※中国の人口ボーナス指数1.8超えは1986年だが、上海総合指数は1990年12月に創設された指数のため、株価は1990年末を採用

次に人口ボーナスを享受する国はどこか?

次は、経済発展の話題でよく名前があがる新興国、ブラジルとインドネシアを例に見てみよう。

図3:人口ボーナスと株価の関係(ブラジル・インドネシア)

図3:人口ボーナスと株価の関係(ブラジル・インドネシア)

出典:国際連合のデータを基に、野村證券投資情報部が作成。

※上記(人口ボーナスのスタート)は生産年齢人口がその他の人口の1.8倍の時としている

ブラジルは、2020年に人口ボーナス(期)がピークを迎えると見込まれており、これからの成長は今よりもゆるやかになるであろうと予測されている。同じく、インドネシアも予測されるボーナス期の2/3が終了しており、残された成長機会が多いとはいえない。

そんななか、確実にこれから人口ボーナス(期)のピークを迎えるとされているのが「インド」だ。インドの人口ボーナス(期)は2011年~2040年の約30年間だと予測されており、現在はその約10年目にあたるとされている。つまり、あと20年人口ボーナス(期)が続く見込みということだ。世界がインドに注目する所以はここにある。

図4:人口ボーナスと株価の関係(インド)

図4:人口ボーナスと株価の関係(インド)

出典:国際連合のデータを基に、野村證券投資情報部が作成。

※上記(人口ボーナスのスタート)は生産年齢人口がその他の人口の1.8倍の時としている

もちろん、生産年齢人口が増加しさえすれば、必ず大きな経済成長に繋がるとは限らない。生産年齢人口の増加を経済成長に繋げるためには、増加する生産年齢人口を労働力として吸収しなければならないうえ、その労働力が産業の活性化を加速する必要もある。

しかしその点からいうと、インドはIT大国としてのポテンシャルがあるほか、公用語のひとつとして大きな地位を英語が占めていることなどから、グローバルビジネスを発展させる土壌が整っているともいえる。

いまから10年以内には、人口で中国を抜き、2050年には中国に次ぐ世界第2位の規模に成長するとみられているインド(PwC Japanグループの調査レポート「2050年の世界」)。「中国の次はインド」が現実になる日もそう遠くないのかもしれない。

投資機会をいかに掴むか

かつて、日本の成長を支えた人口ボーナス。ある意味、いまのインドには、高度経済成長の頃──あの頃の日本があるといえるかもしれない(図5)。

図5:各国の経済成長予測

図5:各国の経済成長予測

出典:国際連合のデータを基に、野村證券投資情報部が作成。

※人口ボーナス指数とは15~64歳の生産年齢人口がそれ以外の人口に対して何倍の水準かを示す指数

そしてそれは即ち、現在のインドには今後さまざまなビジネスチャンスや投資機会が訪れる可能性が高いということだ。

これからのビジネスを考えるにあたり、インドは避けて通ることができない存在になっていくことだろう。

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