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インフレ時代の資産形成のポイント(3)リスクを低減するために必要なこと

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日本はインフレ時代に突入しています。私達を取り巻く環境を理解して、これからの資産形成に必要な知識を身につける必要があります。野村證券ファイナンシャル・ウェルビーイング室長の園部晶子、投資情報部長の東英憲の2名による計4回のトークセッション。第3回目では、インフレの時代の資産形成に大切なリスク軽減策について解説します。

画像左:園部 晶子
1991年野村證券入社。5支店でお客様の資産運用のアドバイス業務に従事。現在はファイナンシャル・ウェルビーイング室において「お金について学ぶことで、あらゆる人が自由に自分の人生を選択できる世界」を目指し、小学生から大人まで幅広い世代に対して金融経済教育のコンテンツを提供中。

画像右:東 英憲
1990年、野村證券入社。池袋、静岡などの支店で個人向け営業に従事し、調布、盛岡、奈良、岐阜の各支店長、ソリューション・アンド・サポート部長(現在は改組)を経て、2022年4月から現職。個人投資家向けに情報を発信するおよそ約40人のリサーチャーやスタッフを率いる。

―園部

Part2は、お金に働いてもらうための資産運用のポイントについてご説明しました。資産形成に価格が変動する資産を活用する際は、「分散投資」「長期投資」そして「積立投資」の3つがリスク低減のポイントといえます。

資産形成と証券投資のリスク管理
(出所)野村證券投資情報部作成

まず初めに、具体的なデータを使用して分散投資の効果を確認してみます。一つ目の例は、全く分散投資しないケース。国内株式100%に投資して1年間継続保有した場合です。下のグラフのように、運用成績は毎年大きなブレ幅があります。

 

―東

年によって、プラス50%を超える年やマイナス30%を超える年などもあり、株式はリターンが期待できるとはいうものの、リスクが高くて心配になってしまいますね。

リスクを減らすには: 1. 分散投資の効果
(注1)勝敗は、1年間(前年度末~当該年度末)の試算結果がプラスの場合を1勝、マイナスの場合を1敗としています。計測期間は1988年度から2021年度まで。分析に使用したデータは、下部の画像「分析に利用したデータ(インデックス)」をご覧ください。
(注2)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。
また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各データより野村證券投資情報部作成

―園部

2つ目の例は、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4資産※に均等に分散投資する場合です。※各資産の比率を保つため、毎年リバランス調整を実施

―東

全体的にマイナスになる年が減り、リスクを一定程度抑えつつ、リターンも向上していることがわかりますね。

リスクを減らすには: 1. 分散投資の効果
(注1)勝敗は、1年間(前年度末~当該年度末)の試算結果がプラスの場合を1勝、マイナスの場合を1敗としています。計測期間は1988年度から2021年度まで。分析に使用したデータは、下部の画像「分析に利用したデータ(インデックス)」をご覧ください。
(注2)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。
また、当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各データより野村證券投資情報部作成

―園部

このように値動きの違う資産を組み合わせることでリターンを向上させつつ、リスクも低減できることがわかります。それでも1年という期間では、どうしてもマイナスのリターンとなる年があり、分散投資の効果だけで運用の安定を図ることには難しいことがわかりました。

 

次に、前述の2つ目の例にある4資産への分散投資を3年間継続保有した場合をみてみましょう。一番左の1990年度では、8%程度のリターンとなっています。これは、1987年4月から1990年3月末まで3年間保有した場合の1年あたりの運用成績を示しています。

リスクを減らすには: 分散投資+長期投資の実例
(注1)試算期間は1988年度から2021年度における各年度末までの3年、5年、10年、20年です。分析に使用したデータは、下部の画像「分析に利用したデータ(インデックス)」をご覧ください。
(注2)各リターンは、試算期間の各年度のリターンを累積し、平均(幾何平均による)を求めています。各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとして計算してあります。リバランスにかかるコストは考慮しておりません。
(注3)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。
また当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各データより野村證券投資情報部作成

―東

すいぶんプラスの運用成績が増えた印象です。

―園部

1年間限りの運用成績と比べてかなり改善することがわかります。しかし、まだマイナスになる年もありますね。それでは、さらに運用期間を20年間まで延ばしてみましょう。

―東

マイナスの年がなくなりましたね。

リスクを減らすには: 分散投資+長期投資の実例
(注1)試算期間は1988年度から2021年度における各年度末までの3年、5年、10年、20年です。分析に使用したデータは、下部の画像「分析に利用したデータ(インデックス)」をご覧ください。
(注2)各リターンは、試算期間の各年度のリターンを累積し、平均(幾何平均による)を求めています。各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとして計算してあります。リバランスにかかるコストは考慮しておりません。
(注3)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。
また当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各データより野村證券投資情報部作成

―園部

4資産に分散して、20年間の長期投資をすると、どの年に投資を始めてもリターンがプラスになることがわかります。これが、長期投資の効果です。

最もリターンが増えなかった1997年から2008年度までの20年間のケースでも、年率複利換算でおよそ3.85%のリターンとなり、20年で評価額はおよそ2.13倍に増えています。

また、最もリターンが増えたのは 2014年度までの20年間のケースで、年率 複利換算およそ6.78%のリターンとなり、20年間で評価額は 3.7倍となっています。次に、累積リターンを確認します。

 

下記のグラフは(1)国内株式のみ (2)国内株式と国内債券に各50% (3)国内株式と外国債券に各50% (4)国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4資産に均等分散投資した場合の各累積リターンです。(1992年末を100として指数化、縦軸:指数、横軸:期間)

分散投資+長期投資の累積リターン例
(注1)各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとして計算してあります。リバランスにかかるコストは考慮しておりません。直近の値は2022年度末。分析に使用したデータは、巻末をご覧ください。
(注2)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。また当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各種資料・データより野村證券投資情報部作成

―東

30年間の運用成績をみると、(4)の4資産に分散投資した場合は、指数で500を超えています。5倍以上に増加しているということですね。

―園部

最後に、時間を分散する積立投資について確認します。積立投資とは、一度に全額を投資にまわすのではなく、投資タイミングを分散させて、継続して規則的に投資することです。規則的な投資の大きな特徴は、恣意的に投資判断をしないことです。

まず、毎月決まった数量(10株)を購入する場合です。(下図の下段:グレー箇所)株価の変動により、その時の値段で購入するので、買い付ける「口数」が毎月異なります。

リスクを減らすには: 積立投資は『タイミングの分散』 定額(積立投資)の例
(注)上記の数字はあくまでも一定の条件を基に試算した結果であり、税金や取引コストは含まれておりません。また、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(出所)野村證券投資情報部作成

一括で購入する場合、株価が下がった時点(この例では600円)を狙って購入できればよいのですが、株価が上昇し1,400円の時に買ってしまうかもしれないなど、購入するタイミングの投資判断が難しいのです。

次に、毎月1万円ずつ、同じ株式を定期的に買い付ける場合です。(上図の上段:薄赤色の箇所)株価が1,000円の時には、10株を購入、600円の時には16.67株も購入できます。一方、株価が1,200円の時には8.33株しか買付できません。つまり、安い時には自動的にたくさんの株数を買付け、高い時には自動的に少ない株数を買付ける投資方法です。

東:

いわゆるドルコスト平均法ですね。実際に、この方法で積立投資していたらどうなっていたのでしょうか。

園部:

具体例として、日経平均株価への積立投資のシミュレーションを確認します。積立方法は毎月1万円ずつ、日経平均株価に投資したと仮定し、1996年1月から2015年12月までの20年間、積立投資金額は累計240万円とした場合です。

リスクを減らすには: 積立投資のドルコスト効果
(注)上記は過去の市場指数を基に一定条件下で算出したシミュレーション結果であり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。
期間は1996年1月から2015年12月まで。算出過程で配当金・取引コスト・税金等は考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。
(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成

―東

仮に、1996年1月に240万円を一括投資したとすると、日経平均株価がほぼ上昇していないので、240万円の投資金額はほとんど時価評価額が変わらないはずですが・・・

―園部

しかし、一括投資ではなく、積立投資だとリターンが変化します。(濃い赤色の線:時価評価額)株価はこの運用期間に決して大きく上昇しているわけではなく、むしろ下落していたのが戻っただけですが、運用評価額は積立金額を上回っていることがわかります。

―東

この例では、積立投資金額の240万円が359万円となり、5割近く増えていますね。

―園部

はい。このように、積立投資であれば、決して上昇相場でなくても、無理なく変動資産からのリターンの獲得が期待できることがわかります。これが、積立投資そして、ドルコスト平均法の効果です。

最後に、分散投資、長期投資、積立投資、この3つをすべて組み合わせて投資をしていたらどうなっていたのかということを確認します。下記の図は、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券の4資産への均等分散投資のポートフォリオを設定し、毎月1万円ずつ、30年間積立投資した例です。

リスクを減らすには: 分散・長期・積立投資の例
(注)分析に使用したデータは、下記の画像「分析に利用したデータ(インデックス)」をご覧ください。上記は過去の市場指数を基に一定条件下で算出したシミュレーション結果であり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。算出過程で配当金・取引コスト・税金等は考慮しておりません。市場指数そのものに投資することはできません。
(出所)野村證券投資情報部作成
分析に利用したデー (インデックス)
(注1)各年度末にリバランス(投資比率を当初比率に調整)したとして計算してあります。リバランスにかかるコストは考慮しておりません。
(注2)本資料のシミュレーション結果は特定の前提条件のもと、簡易な手法にて行われたものです。従いまして、当該結果は前提条件の異なるもの、より精緻な手法によるもの等とは、異なる結果になることがあります。また当該結果は将来の結果を保証するものではありません。
(出所)各種資料・データより野村證券投資情報部作成

FTSE世界国債インデックスに関する注意事項
FTSE世界国債インデックスは、FTSE Fixed Income LLCにより運営され、世界主要国の国債の総合収益率を各市場の時価総額で加重平均した債券インデックスです。このインデックスのデータは、情報提供のみを目的としており、FTSE Fixed Income LLCは、当該データの正確性および完全性を保証せず、またデータの誤謬、脱漏または遅延につき何ら責任を負いません。このインデックスに対する著作権等の知的財産その他一切の権利はFTSE Fixed Income LLCに帰属します。

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―園部

1993年から30年間の積立てた場合、投資金額は360万円です。赤い折れ線は、前述の4資産の分散投資の組み合わせを毎月同じ金額で積立投資し、長期間保有した場合の運用成績です。この例では、30年間で895万円まで増えたことになります。

―東

およそ2.5倍近い資産形成が実現していたというわけですね!投資家の専門家でなくても、誰にでもできる運用方法という点がよいですね。

―園部

この運用益を非課税で受け取れる制度がNISAです。2024年からNISAが大幅に拡充されました。Part4では、NISAの魅力について説明します。

※このコラムは2024年6月時点の情報に基づくものです

Part4へつづく

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