【3分で読める】いまさら聞けない「金本位制」とは <金にはなぜ価値があるの?>

「金(ゴールド)」は、宝飾品として利用されてきた歴史やその美しさによる価値だけではなく、その希少性を背景として信頼性の高い実物資産と言われています。そのため「金(ゴールド)」は、長い間通貨発行の裏付けとしての役割を担ってきました。本コラムでは、「金(ゴールド)」の希少性について数字を見ていきましょう。また、現在の経済の仕組みを理解するうえでも大切なキーワード「金本位制」とは何か、一緒に確認していきたいと思います。
「金(ゴールド)」にはなぜ価値があるのか
「金(ゴールド)」の特徴には、美しさ、加工のしやすさ、歴史的な価値などに加え、希少性があります。WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)によると、有史以来の金の採掘量(地上在庫)は、2024年末時点で約21万6,265トンと推定されます。これはオリンピックの公式プールなどで使用される50メートルプール約3.3杯分に相当します。また、2024年末時点の金の推定埋蔵量は約5万4,770トンと推定され、こちらも同様に50メートルプール約0.8杯分に相当します。つまり、現時点で地球に存在する採掘済み・採掘可能な金のうち、およそ8割をすでに採掘していることになります。2024年の金の年間産出量は約3,661トンで、このペースが継続すると仮定すると、金の残りの採掘可能年数は約14.96年と言われています。このようにこれまでの採掘量、推定埋蔵量からもその希少性を確認することができます。

「金本位制」とは何か
金本位制とは、中央銀行が通貨を発行する際に「等価の金」を準備(=金準備)として保有する制度です。英国で1816年に始まったのを皮切りに、19世紀から20世紀にかけて主要国の中央銀行が採用し、日本も日清戦争で得た賠償金をもとに1897年に金本位制が始まりました。主要国が金と各国通貨の交換比率を固定したことで、主要国間の固定相場制にもつながりました。
金は価値が安定した信用度が高い交換手段ですが、持ち運びに不便で摩耗するという弱点があります。そこで兌換(だかん)通貨が発行されました。金との交換を保証された兌換通貨は利便性が高く、金の準備高が上限となることから、通貨の乱発を防ぐことができるため、インフレ抑制にもつながりました。そのメカニズムは下図の通りです。金本位制の下では、ある国で景気が過熱(後退)すると、輸入が増加(減少)することで金の流出(流入)が起こり、通貨の減少(増加)を通じて景気や国際収支が調節されるメカニズムが働きます。

ニクソン・ショックによる金本位制の終焉
金本位制により景気や国際収支が調節される一方で、各国の金融政策の自由が阻害されることもあります。1929年に始まった世界恐慌では、各国とも金本位制を一時停止しました。1944年にブレトンウッズ協定が締結され、米ドルのみ金1トロイオンス(約31グラム)あたり35米ドルの兌換が維持され、それ以外の通貨は米ドルに対する固定相場制になりました。米国が金本位制に復帰し、戦後はその他主要国では自国通貨と米ドルを固定相場で連動させる「金・ドル本位制」が普及しましたが、1971年に米国は財政悪化やインフレの影響で米ドルと金の交換を停止(ニクソン・ショック)し、金1トロイオンスあたり38米ドルへの切り下げも実施しましたが、米ドルへの信頼は低下し、1973年には変動相場制へ移行しました。1976年のキングストン協定で各国の変動相場制移行が認められ、1978年の発効をもって金本位制は完全に終了しました。
これらのお話は、中学や高校の社会・歴史で学んだ記憶のある方もいるのではないでしょうか。
金本位制に関する年表
| 年 | 内容 |
|---|---|
| 1816年 | イギリスが金本位制開始 |
| 1914年 | 第一次世界大戦勃発:以降、各国が金本位制を一時停止 |
| 1919年 | アメリカが金本位制復帰 |
| 1925年 | イギリスが金本位制復帰 |
| 1929年 | 世界恐慌:以降、各国が金本位制から離脱 |
| 1944年 | ブレトンウッズ協定締結 |
| 1945年 | ブレトンウッズ体制:金1トロイオンス=35米ドル、1米ドル=360円の固定相場制 |
| 1971年 | ニクソン・ショック:米ドルと金の兌換停止 スミソニアン体制:金1トロイオンス=38米ドル、1米ドル=308円の固定相場制 |
| 1973年 | スミソニアン体制が崩壊し、変動相場制へ |
| 1976年 | キングストン協定締結:IMF(国際通貨基金)暫定委員会が変動相場制を承認 |
| 1978年 | キングストン協定発効に伴い、米ドルの金本位制が終了 |
まとめ
中央銀行等の金保有量ランキング
| 順位 | 国/地域/機関名 | 金準備(トン) | 外貨準備高に占める金の割合(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | 米国 | 8,133トン | 78.5% |
| 2 | ドイツ | 3,350トン | 77.6% |
| 3 | IMF(国際通貨基金) | 2,814トン | - |
| 4 | イタリア | 2,452トン | 74.4% |
| 5 | フランス | 2,437トン | 75.1% |
| 6 | ロシア | 2,330トン | 36.2% |
| 7 | 中国 | 2,296トン | 6.7% |
| 8 | スイス | 1,040トン | 11.2% |
| 9 | インド | 880トン | 13.2% |
| 10 | 日本 | 846トン | 6.9% |
金本位制は終わったものの、現在も各国の中央銀行やIMF(国際通貨基金)は、準備資産の一つとして金を保有しています。最も多くの金を保有している中央銀行は米国FRB(連邦準備制度理事会)で8,133トンです。次いでドイツのドイツ連邦銀行の3,350トン、IMFの2,814トンと続きます。金は引き続き、通貨制度にとって重要な役割を担っています。
このような通貨制度としての金本位制や歴史的な流れを改めて知っておくと、ニュースなどで目にする金(ゴールド)の価格変動や関連する出来事の見方も変わってくるかもしれません。
編集協力:野村證券株式会社 投資情報部 寺田 絢子/山口 正章
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部
記事公開日:2025年10月6日


