1. TOP
  2. コラム
  3. 【3分で読める】どうなる!?宇宙産業の未来

【3分で読める】どうなる!?宇宙産業の未来

  • facebook
  • x
  • LINE

宇宙産業というと、ロケットや月面探査のような「遠い世界」を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど実際には、宇宙はすでに私たちの日常生活と経済活動を支える重要なインフラになっています。
カーナビの位置情報、天気予報、災害監視、衛星放送、通信、物流管理――こうしたサービスの多くは人工衛星なしには成立しません。

宇宙産業が注目されるのは、ロケットや衛星をつくる「上流」だけでなく、衛星データや信号を使って地上サービスを提供する「下流」まで市場が広がっているからです。
たとえば、GPS対応機器、位置情報サービス、観測データを使った農業・保険・防災などは、宇宙産業の成果を活用する分野です。
つまり宇宙産業は、一部の先端企業の話ではなく、幅広い業種に波及する「裾野の広い市場」に変化しているのです。

ロケット・人工衛星の打ち上げ急増

その変化を象徴しているのが、米国を中心とするロケット・人工衛星の打ち上げ急増です。

世界のロケット・人工衛星等の打ち上げ数の推移を示した棒グラフ
注1:その他には、日本、フランス、インド、その他の国・地域が含まれる。
注2:世界のロケット打ち上げ回数は打ち上げ成功のみカウントしている。SpaceXは、起業家のイーロン・マスク氏によって設立された米国に本社を置く民間宇宙開発企業である。
出所:内閣府宇宙開発戦略推進事務局より野村證券投資情報部作成

ロケットの打ち上げ回数は年々増加傾向にあり、2025年は316回の打ち上げに成功しています。国別の内訳をみると、およそ半分が米国で、中国、ロシアと続きますが、その他の国の打ち上げ回数も増加傾向にあります。
ロケット打ち上げの中心的な目的は人工衛星の運搬です。2025年に軌道上に打ち上げられた人工衛星等の機数は4,517機となり、10年前と比べて約20倍に増加しています。

この急増の背景には、ロケット打ち上げ事業の民間企業への委託が進展したことなどにより、打ち上げコストが低下したことがあります。加えて、単に「宇宙に行きたい企業が増えた」というだけではなく、宇宙を使って地上収益を生むビジネスが拡大していることがあります。

人工衛星の打ち上げが進み、稼働する衛星数が累積的に増加したことで、衛星から得られるデータを活用した新しいビジネスが相次いで生み出されています。例えば、衛星データから上下水道管の老朽化を診断し、更新計画の策定支援を行うサービスや、経済活動を解析して金融機関や投資家向けにデータを販売するサービスなど、衛星関連サービスは多様な広がりを見せています。

日本の宇宙経済規模

日本でも、こうした流れを受けて宇宙経済の拡大が見込まれています。

日本の宇宙経済規模は2040年に約15兆円へ

内閣府調査による日本の宇宙経済規模の予測を示した棒グラフ
宇宙産業領域 宇宙基盤
インフラ
産業
政府関連 基幹ロケット・政府衛星の開発・製造、地上系設備の増強、基幹ロケットによる打ち上げサービスなど
民間関連 民間ロケット・民間衛星の開発・製造、民間ロケットによる打ち上げサービスなど
宇宙運用
サービス
産業
通信・放送 通信サービス提供、衛星放送など
観測分野 観測データ販売、防衛省PFI関連事業など
宇宙環境利用 地球低軌道拠点利用など
その他 地上局運用、軌道上サービスなど
非宇宙産業領域 宇宙技術
活用産業
通信・放送 通信データを用いた非宇宙産業におけるサービス(例:機内インターネット通信サービス)
リモセン 観測データを用いた非宇宙産業におけるサービス(例:気象予報サービス)
測位 測位データを用いた非宇宙産業におけるサービス(例:農業用位置情報システム)
注:図表の数値は内閣府の試算値。PFI(Private Finance Initiative)は、公共施設の設計・建設・運営・維持管理に民間の資金やノウハウを活用し、効率的かつ質の高い公共サービスを提供する手法。リモセン(リモートセンシング)は、人工衛星や航空機、ドローンなどに搭載したセンサーを使って、離れた場所から地表の物体や現象を物理的に直接触れずに観測・解析する技術。
出所:内閣府宇宙開発戦略推進事務局より野村證券投資情報部作成

日本の宇宙経済規模は2020年の約4兆円から、2030年に約8兆円、2040年には約15兆円へ拡大すると予測されています。内訳を見ると、ロケットや人工衛星そのものに関わる「宇宙コア産業」だけでなく、宇宙技術や衛星データを使ってサービスを提供する「宇宙技術活用産業」も大きく伸びる見通しです。

宇宙産業の成長を促す政府支援策の拡充

日本政府は近年、最大10年間で総額1兆円規模の資金を企業や大学に投入する「宇宙戦略基金」を通じて、日本の宇宙産業の競争力を強化するための技術開発を支援しています。宇宙戦略基金も含む、日本の宇宙関連予算は増加傾向にあり、令和8年度は前年度比+12%の1兆446億円となる見込みです。2025年11月には、日本政府は経済安全保障上の重要性が高い「国家戦略技術」の6分野の1つに宇宙を指定しました。研究予算の配分や税制上の優遇措置を重点的に実施することで、民間からの投資を促し、起業や技術の実用化などを後押しする方針を示しています。

令和8年度当初予算案+令和7年度補正予算+令和8年度基金関係執行予定額。

まとめ

米国を中心に打ち上げが急増していることは、単なる数字の更新ではありません。そこから見えてくるのは、宇宙が一部の特別な開発分野ではなく、通信や防災、物流、金融など、私たちの暮らしや経済を支える現実の産業になりつつある姿です。

ロケットの打ち上げや人工衛星の数は、一見すると遠い世界の出来事に見えるかもしれません。しかし、その先で広がっているのは、私たちの生活をより便利にし、社会の課題解決にもつながる新しいサービスです。宇宙産業を「遠い未来の話」としてではなく、「これからの経済を考えるうえでの身近なテーマ」として見てみてはいかがでしょうか。

編集協力:野村證券株式会社 投資情報部
編集/文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング部

記事公開日:2026年4月28日

  • facebook
  • x
  • LINE

関連記事