マーケットアウトルック - 豪州市場・豪ドル -
投資の視点は2019年11月18日に野村マンスリー投資会議で確認された内容に基づいています。
2019/11/25 現在
投資の視点
豪州では、歴史的低水準にある政策金利や政府による減税策に加え、インフレ投資の進展や住宅価格の底打ち、資源関連産業の見通し改善などが成長を下支えすると見られます。豪州準備銀行(RBA)は、景気が底打ちしつつあることから、2019年の実質GDP成長率は前年比+2.25%に留まるものの、2021年には同+3%近くへ緩やかに加速すると予想しています。景気回復は豪ドル持ち直しの条件とみられます。ただし、個人消費の先行き不透明感が強いことや、企業向け銀行貸出の伸び悩みなど、景気の足かせ要因も多く存在することには引き続き留意が必要です。
金融政策
豪州準備銀行(RBA)は、2019年6月、7月および10月に各々0.25%ポイントの利下げを実施し、政策金利を過去最低水準の0.75%へ引き下げた後、11月の会合では政策金利を据え置きました。野村證券では、金融緩和の効果を見極めるため、12月の会合で利下げは見送られ、2020年2月に追加利下げが実施されるとの予想に変更しました。

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2019年11月21日)
豪ドルの注目点と今後の見通し
2019年6月以降、累計0.75%ポイントの利下げにより、豪州の政策金利は過去最低水準にあります。RBAは声明文において、景気下支えとインフレ目標の達成を視野に、当面低金利を維持し、必要となれば追加利下げを行う可能性を示しています。一方、低金利を背景とした住宅市場の持ち直しなどから、RBAは緩やかに景気が回復するとの見通しを示すなど、既往の利下げ効果を見極めるために利下げを急がない姿勢も垣間見られます。米利下げ打ち止め観測が高まる中、豪州の年内利下げ観測が後退すれば、豪ドルの底堅さにつながるでしょう。他方、香港をめぐる米中の対立や両国の通商協議に対する懸念は引き続き豪ドルの上値抑制要因とみられます。向こう1年間の豪ドルの対円相場レンジを1豪ドル=70.0~76.0円と予想します(従来予想は同67.0~75.0円)。
豪ドルの市場動向
豪ドル相場は、9月3日の金融政策会合で政策金利据え置きが決定されると上昇基調となりました。しかし、19日公表の8月の失業率が前月から上昇すると追加利下げ観測が強まり、豪ドルは軟化しました。
10月1日に0.25%ポイントの追加利下げが決定されると、豪ドルは対米ドルで2009年3月以来、対円で約1ヵ月振りの安値をつけました。しかし、11日に米中通商協議が部分合意に至り、11月1日に米中が部分合意に向けて追加協議したと伝わると、両国の通商協議に対する進展期待が高まり、豪ドルは持ち直しました。11月5日の会合で政策金利が据え置かれたことも豪ドル高につながりました。中国政府が7日、「米中で段階的に追加関税を撤廃することで合意した」と発表すると、豪ドルは対円で75円台前半へ上昇しました。しかし、8日公表の金融政策報告書で2019年の実質GDP見通しが下方修正され、14日公表の10月の雇用者数が市場予想(前月差1.5万人増)に反して同1.7万人減となったことを受け、追加利下げ観測から豪ドルは下落しました。足元の豪ドルは、米中通商協議の動向に左右されやすくなっており、11月22日15時現在、対米ドルでは0.67米ドル台後半、対円では73円台後半で推移しています。

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2019年11月21日)
需給動向
シカゴ通貨先物市場における投機筋の豪ドル(対米ドル)の持ち高は、売り持ち超過が続いています。2019年11月12日現在、約4.4万枚(約3,200億円)の売り持ち超過となっています。
- 内容は、「野村マンスリー投資会議」で確認されたグローバルな各資産に関する見方や投資視点などに基づいて作成しております。
- 「野村マンスリー投資会議」は、グローバル・リサーチによる主要国・地域の景気、金利、為替、株価見通しを前提に、投資戦略を検討する月例の会議です。