投資の視点は2018年3月19日に野村マンスリー投資会議で確認された内容に基づいています。
2018/4/9 現在
マーケット動向から
カナダドルと連動性が高いWTI原油価格は2018年4月6日現在、62.06ドル/バレルと約2年10ヶ月ぶりの高値水準となっています。2017年11月30日に開催されたOPEC総会は協調減産の期限を2018年12月まで延長することを決定しましたが、2018年3月22日、サウジアラビアのハリファ・エネルギー産業鉱物資源相は2019年も引き続き協調減産に取り組む必要があるとの考えを示しました。一方、国際エネルギー機関(IEA)は米国の原油生産は増加が続き、遅くとも2019年までにロシアの生産量を追い抜き、世界最大の産油国になると予想しています。原油供給を巡って強弱の要因が入り混じっていますが、世界経済拡大の中、原油に対する需要が拡大しているため、原油価格は総じて堅調に推移しています。
カナダドルの対米ドルレートは原油価格の反発や2017年7月12日、及び9月6日にカナダ銀行(中央銀行)が利上げを決定したことを背景に上昇基調に転じ、2018年2月1日には一時同1.22カナダドル台後半へ上昇しました。その後、原油価格の軟化や米国金利の上昇ペースがカナダを上回っていることから、同1.29カナダドル台へ下落しました。しかし、3月8日にトランプ大統領は鉄鋼とアルミの輸入制限措置についてカナダを適用除外措置の対象であると表明し、同1.29カナダドル台から同1.27カナダドル台へ反発しています。一方、対円では2017年年初以降のドル安円高基調を背景に4月には80円台へと下落しました。その後、カナダドルが対米ドルで反発する中で80-84円台で安定的に推移した後、9月には一時91円台へ上昇しました。足もとではドル安円高を受けて83円台へ下落しています。2018年4月9日15時現在、1米ドル=1.27カナダドル台後半、1カナダドル=83円台後半で推移しています。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2018年4月6日)
金融政策より
3月7日、カナダ銀行(中央銀行:BOC)は市場予想通り、政策金利の据え置き(1.25%)を決定しました。前回の1月会合と比べて、声明文は先行きの経済環境に対する慎重姿勢が強まっています。BOCは最大輸出先である米国の保護主義化の流れを懸念していますが、将来的な利上げの可能性までは撤回していません。NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉など不透明感から当面は据え置きが予想されますが、年後半に再利上げを実施する可能性はあるでしょう。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2018年4月6日)
需給動向より
シカゴ通貨先物市場における投機筋のカナダドル(対米ドル)の持ち高は米利上げ期待や原油価格の下落を背景に2015年6月以降売り越しが続きました。原油価格の反発を受けて2016年4月以降は買い越しとなっていましたが、米金利上昇を受けて9月27日には売り越しへ転じました。2017年7月11日以降は再び買い越しとなりましたが、2018年3月27日以降は売り越しに転じています。4月3日現在、約3.3万枚(約2,800億円)の売り持ち超過です。
今後の注目点と見通し
4月2日、ホワイトハウスはNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉に関して、4月13-14日に開催される米州首脳会議(於ペルー)において、カナダ、メキシコと共に暫定合意案を公表する意向であると報じられました。NAFTA崩壊のリスクが更に後退したと見られ、カナダドルにとって好材料です。ただし、自動車の域内部品比率の引き上げや、サンセット条項(米国、カナダ、メキシコの3ヶ国が継続で合意しない限り協定は5年ごとに失効するとの条項)の追加の是非など、多くの個別事案が積み残される可能性が高く、仮に暫定合意に至ったとしても交渉自体は継続する見込みです。輸出の約3割をエネルギー関連製品が占めるカナダ経済にとって原油価格の上昇、安定は好材料です。米国のシェールオイル増産とOPEC加盟国の減産との綱引きから原油価格は横這い推移が当面続く見通しです。WTIは2018年末で55-65ドル/バレルと想定します。向こう1年間のカナダドルの対円レートのレンジを1カナダドル=78-89円と予想します。
- ※内容は、「野村マンスリー投資会議」で確認されたグローバルな各資産に関する見方や投資視点などに基づいて作成しております。
- ※「野村マンスリー投資会議」は、グローバル・リサーチによる主要国・地域の景気、金利、為替、株価見通しを前提に、投資戦略を検討する月例の会議です。