マーケットアウトルック - インドルピー -

投資の視点は2017年5月15日に野村マンスリー投資会議で確認された内容に基づいています。

2017/5/22 現在

投資の視点

インド経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は引き続き安定しています。消費者物価(CPI)は2013年11月には前年比+11.2%と高い伸びでしたが、直近判明分の2017年4月には同+3.0%まで減速しています。また、経常赤字の対GDP比は2013年1-3月期の6.5%から2016年10-12月期には1.4%まで縮小しています。
一方、2015年終盤以降伸びが低迷していた鉱工業生産は持ち直しの兆しが見え、2017年3月は前年比+2.7%と、2月の同+1.9%から加速しています。農村部需要の回復と、第7次賃金委員会による賃上げなどを受けて、鉱工業生産の勢いの回復が継続すると野村證券は予想しています。他方、新車販売台数は2015年7月以降、前年比でプラスの伸びが続いており、2016年7~9月には2桁の伸びを記録しました。高額紙幣廃止の影響を受け、11-12月は前年比で減少しましたが、2017年1月は同+11.2%、2月は同+8.7%、3月は同+9.8%、4月同+7.8%と回復しています。なお、製造業PMIは1-4月に好不況の分岐点である50を上回っています。
公務員賃金引き上げが今後も消費を支えると期待される一方、中央政府のプロジェクト認可のペースが加速しており、2017年に公共投資が増加すると見込まれ、向こう数四半期の建設活動が拡大すると想定されます。野村證券は2017年の実質GDP成長率は前年比+7.8%、2018年は同+7.7%と堅調な成長を予測しています。
インド準備銀行(RBI)は4月6日の金融政策会合市場予想通り政策金利を6.25%で据え置きました。一方、同中銀が市場から資金吸収を実施する際に適用されるリバースレポレートを6.00%へと0.25%ポイント引き上げると同時に、資金供給の際の上限金利を6.50%へと0.25%ポイント引き下げることを発表しました。政策金利コリドー(変動域)幅の縮小は政策金利調整の市中金利への影響力を強めることが目的であり、RBIは昨年から銀行システムに積み上った過剰流動性の吸収に着手するとしています。
なお、声明文は全体的にインフレ警戒姿勢が強く、少なくとも6~7月のモンスーン期の降雨量が平年並み以上であることを確認するまでは金融政策には引き締めバイアスがかかると思われます。インフレ抑制を主眼とする慎重な政策運営は、同国金融政策への信頼性を高めるものであり、中長期的に見たルピー相場にとってプラスの要因と評価されます。野村證券はRBIの金融政策について、2018年に累計0.5%ポイントの利上げを実施すると予想します。
インド政府は5月5日、銀行規制法を改正し、不良債権処理に関するRBIの権限を強化しました。同問題の解決に向けた前向きな一歩であり、今後は、今回の法改正を受けたRBIによる具体的な不良債権処理の指針の発表が注目されます。一方、インド政府は5月19日、州毎に異なる間接税を「物品サービス税(GST)」として統一する税制改革について、1200を超える物品、サービスの税率を固めました。今年7月にも実施される運びであり、企業の税務処理の簡素化や、物流の効率化が見込まれ、海外からの直接投資が更に加速することが期待されます。
2016年を通じてインドルピーの対ドルレートは1ドル=66~67ルピー台を中心に概ね安定的に推移しました。米新大統領にトランプ氏が決定した前日の11月7日から24日にかけてインドルピーの対米ドルレートは2.9%下落し、23日には一時1米ドル=68.9ルピーと史上最安値を更新しました。新興国の中でもファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好ではありますが、高額紙幣廃止の影響や、トランプ新大統領がIT機器の国内生産化を示唆していることから、ソフトウェアを中心としたインドのIT産業へ悪影響を及ぼすのでは、との懸念が意識されました。その後、2017年2月1日に2017/2018年度(2017年4月~2018年3月)予算案が発表されましたが、成長加速に向けた施策が打ち出される一方で、財政健全化姿勢も維持されたバランスのとれた内容であり、市場から好感され、ルピーは反発しています。
インドルピーの対円レートは2016年年明け以降は原油価格の反発を受けて、2月中旬には2013年9月以来の史上最安値圏へ軟化しました。その後はドル安円高基調の中、緩やかな下落傾向を辿りました。10月下旬以降はドル高円安への転換を受け、概ねルピー高円安基調が足もとまで続いています。2017年5月22日15時現在、1米ドル=64ルピー台半ば、1ルピー=1.72円台後半で推移しています。向こう1年間のインドルピーの対円レートの想定レンジを従来の1ルピー=1.64-1.81円から同1.69-1.81円へと、下限を上方修正します。

グラフ

(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成(直近値は2017年5月19日)


  • 内容は、「野村マンスリー投資会議」で確認されたグローバルな各資産に関する見方や投資視点などに基づいて作成しております。
  • 「野村マンスリー投資会議」は、グローバル・リサーチによる主要国・地域の景気、金利、為替、株価見通しを前提に、投資戦略を検討する月例の会議です。

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