2024.07.16 NEW

「もしトラ」日本株への影響は トランプ候補の勝利確率が上昇

「もしトラ」日本株への影響は トランプ候補の勝利確率が上昇のイメージ

オンライン予想サイトではトランプ候補の勝利確率が上昇

7月15日に行われた共和党大会で、ドナルド・トランプ前大統領が同党の大統領候補に正式指名され、副大統領候補にはJ.D.バンス上院議員が選出されました。週末に発生したトランプ候補の暗殺未遂事件を受け、オンライン予想サイト「プレディクト・イット」ではトランプ候補の勝利確率が67〜68%程度まで上昇し、同氏の優位がより明確になっています。

仮にトランプ候補が再選した場合、日本株(セクター別)への影響をどのように考えればよいでしょうか。ここでは、「脱・脱炭素への動き」、「法人税率の引き下げ」、「金融規制緩和」、「保護主義的通商政策・移民政策」、「地政学リスクへの影響」の5点についてアナリストの視点を紹介します。

【脱・脱炭素への動き】
米政府による脱炭素への支援方針が巻き戻された場合、影響を受ける日本の業種として、アナリストは車載電池、ヒートポンプ機器、パワーグリッド(送配電網)、空調機器、パワー半導体などをあげています。一方で、日本の自動車メーカーは、EV(電気自動車)市場における存在感がまだ弱く、ガソリン車やHV(ハイブリッド車)分野で強みを持つため、市場シェア拡大の追い風になるとしています。また、仮に脱・脱炭素への動きがグローバルに波及した場合、総合化学は温室効果ガス排出量が多いことが株価のネガティブ要因となっているため、プラスに働くとの意見もありました。

【法人税率引き下げの維持】
トランプ前政権は、2018年1月に米国の法人税率を35%から21%に引き下げました。バイデン大統領が28%への引き上げを打ち出しているのに対し、トランプ候補は21%の維持を掲げています。仮に法人減税の維持が実現すれば、米国事業の利益構成比が大きい企業にはメリットがあると考えられます。

【金融規制の緩和】
銀行のアナリストは、トランプ前政権時代に金融規制が緩和されたという重要な指摘をしています。銀行業界にとっては、金融規制緩和への期待から生じる米銀行株の評価の向上と、米国金融市場の流動性の向上によるドル調達環境の改善が追い風になるとしています。

【保護主義的な通商政策・移民政策】
「米国第一主義」を掲げたトランプ前政権時代の通商政策および移民政策によって、機械・造船・プラント業界では、関税の引き上げや中国からの製品や半製品の輸出制限を受け、生産地や供給地の変更などの対応が生じました。一方で、自動車業界については、2020年1月に「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」実施法案が署名されているため、大きな変化はないと見ています。リスクとしては、前回と同様に、日本や韓国、EU(欧州連合)からの輸入車への関税の引き上げ議論が再燃する可能性がありますが、これらの地域は米国の同盟国であるため、最終的に関税が課せられる可能性は低いと見ています。全体的に過度な悲観は禁物でしょう。

【地政学リスクへの影響】
重工業界では、地政学リスクが高まる際に、中長期的な防衛関連の業績拡大が連想される可能性があります。原油価格については意見が分かれていますが、電力・ガス・石油業界のアナリストは、トランプ政権誕生下では米国内でのシェールオイル・ガス開発が活性化する可能性があり、原油価格の押し下げ要因になると見ています。そして、原油価格の下落は電力・ガス業界にとってはプラスである一方、石油業界にとってはマイナスになると結論づけています。

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

要約編集元アナリストレポート

「日本株投資戦略(3月号) – 日本株強気の3大要因は強さを増す(2024年3月15日配信)」

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成

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