2025.01.17 NEW
企業の「商号変更」が全体的に株価にポジティブな理由 野村證券ストラテジストが解説
※画像はイメージ
昨今、東京証券取引所の要請を受け、資産効率に関連した企業の経営変化が注目されています。今回は、その変化を捉えるうえで重要とされる「商号変更」について、野村證券のストラテジストが解説します。
商号変更は全体的に株価にポジティブ
商号変更に対する見方には、大きく分けてポジティブな適応的見方とネガティブな断絶的見方の2つがあります。ポジティブな見方は、「商号変更には莫大なコストがかかる。また、商号変更は企業の完全な自由裁量による決定であるため、企業はそのコストに見合う利益がない限り、商号変更を行わないと考えられる。したがって、商号変更は企業にとってポジティブである。」と捉えます。
一方、ネガティブな見方は、「企業は旧社名のもとで商号、商標、企業イメージなどの形で“目に見えない資産”を蓄積してきたため、商号変更によってこれらの資産の一部を失う可能性がある。したがって、商号変更は企業にとってネガティブである。」と捉えます。 商号変更企業の株価パフォーマンスについて、商号変更が発表された日を基準に確認したところ、短期的には発表日当日の株価は対TOPIX(東証株価指数)超過リターンが+0.3%となっており、長期的にも緩やかな上昇が見られました。株式市場は商号変更をポジティブに受け止めているようです。
(注)ユニバースは各年のTOPIX構成銘柄。2003年1月1日~2024年10月31日までに公表された商号変更を対象に集計。図表には、対TOPIX超過リターンを掲載
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
商号変更の理由を6つに分類
商号変更の理由は大きく6つに分類されます。ブランド力強化、グローバル化、事業の多角化・拡大、事業の集中・見直し、持ち株会社化、そして合併・買収です。他にも創業や上場X周年記念、あるいは本社移転などの際に商号変更が行われることがあります。ここ数年では、特にグローバル化、事業の多角化・拡大、事業の集中・見直しの割合が増加しているようです。
こうした分類別に株価パフォーマンスを確認すると、事業の集中・見直し、合併・買収、持ち株会社化といった「集約路線」が好調で、ブランド力強化、グローバル化、事業の多角化・拡大といった「拡大路線」がやや軟調です。もっとも、この結果は商号変更そのものの影響というよりも、その背景にある企業経営の変化や差異がもたらしたものと考えられます。
(注)ユニバースは各年のTOPIX構成銘柄。2003年1月1日~2024年10月31日までに公表された商号変更を対象に集計。図表には、商号変更の理由別の対TOPIX超過リターンを掲載。理由の分類は、下記に準ずる。ブランド力強化:ブランディングやブランドに関連する単語。グローバル化:国際化やグローバル化に関連する単語。事業の多角化・拡大:多角化・拡大に関連する単語。事業の集中・見直し:事業の集中や撤退に関連する単語。持ち株会社化:HD化に関連する単語。合併買収:合併買収や提携に関連する単語。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
バリュー(割安)とグロース(成長)の観点から見ると、バリュー企業の商号変更は株価の底打ちの契機になることが多く、グロース企業は株価の頭打ちを招く傾向があります。市場に評価されているグロース企業よりも、評価の低いバリュー企業の方が、上述のネガティブな見方が当てはまりにくいのかもしれません。
(注)ユニバースは各年のTOPIX構成銘柄。2003年1月1日~2024年10月31日までに公表された商号変更を対象に集計。図表には、商号変更のバリュー、グロース別の対TOPIX超過リターンを掲載。バリュー、グロースは、商号変更発表日時点で、ユニバース内のBPRで5分位および1分位で分類。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
以上を踏まえて、野村ではバリュー企業や集約路線の商号変更に注目しています。
(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)
- 編集元アナリストレポート
- 日本株クオンツストラテジー – バリューの多角的レビュー(2)(2024年11月29日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。