2025.01.17 NEW
企業の「社長交代」は株価底打ちの契機か 野村證券ストラテジストが解説
昨今、東京証券取引所の要請を受け、資産効率に関連した企業の経営変化が注目されています。今回は、その変化を捉えるうえで重要とされる「社長交代」について、野村證券のストラテジストが解説します。
社長交代後は約2年程度緩やかな上昇が続く傾向
最初に、社長の属性による企業の違いを確認します。社長の属性は「創業者」、「生え抜き」、「外部出身者」の3つに分類しています。具体的な分類方法は以下の通りです。創業者は会社の創業と入社が同時期、生え抜きは30歳未満で入社、または30歳以上で入社してから社長就任までに10年以上勤務している者、外部出身者は創業者や生え抜き以外としています。
創業者社長の企業は、グロース(成長)、小型、ハイリスクの傾向が強く、業種分類では「情報通信・サービス業その他」の割合が高いのが特徴です。これには、新興産業に創業者社長が多いことが影響していると考えられます。生え抜き社長と外部出身者社長の企業はおおむね似た傾向にありますが、生え抜き社長のローリスク傾向が顕著です。
次に、社長交代前後の株価パフォーマンスを確認しました。サンプル全体では、社長交代の約8ヶ月前から交代時まで、株価は下落基調にありました。社長交代の背景の一つには、直近の株価不振があるのかもしれません。社長交代後は、2年ほど緩やかな上昇が続き、その後はほぼ横ばいとなりました。全体として、社長交代を機に株価の底打ちが見られますが、上昇トレンドの長期継続は難しいようです。
(注)ユニバースは各年TOPIX構成銘柄。サンプルの決算期の期間は、2015年1月~2024年6月まで。社長交代した企業の対TOPIX超過リターンを掲載。なお、社長は、代表権を持ち役職名に社長を含むかどうかで判定し、複数の社長がいる企業は対象外とした。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
バリュー企業の社長交代は、株価底打ちの契機となりやすい
社長交代後の株価パフォーマンスを新社長の属性別に見ると、おおむね、創業者社長、外部出身者社長、生え抜き社長の順に好調でした。それぞれの社長属性の企業の特徴は順に、グロース、リスク傾斜であり、成長性や収益性を意識したハイリスク・ハイリターンの経営姿勢が、上記の株価パフォーマンスに表れているのかもしれません。
(注)ユニバースは各年TOPIX構成銘柄。サンプルの決算期の期間は、2015年1月~2024年6月まで。社長交代した企業の対TOPIX超過リターンを掲載。なお、社長は、代表権を持ち役職名に社長を含むかどうかで判定し、複数の社長がいる企業は対象外とした。社長の属性分類は、創業者:会社の創業と入社年月が同時点、生え抜き:30歳未満で入社、または、30歳以上で入社して社長就任までに10年以上、外部出身者:“創業者および生え抜き以外”としている。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
さらに、交代前の社長が生え抜きだった企業に限定すると、生え抜きから外部出身者への交代が特に好調でした。社外からの社長採用は米国型の経営スタイルに多く、日本企業の変化を促すきっかけになりやすいと言えるでしょう。
バリュー(割安)とグロースの観点から見ると、バリュー企業の社長交代は株価の底打ちの契機になることが多く、グロース企業は株価の頭打ちを招く傾向があります。市場に評価されているグロース企業よりも、評価の低いバリュー企業の方が、社長交代による経営の変化や市場の期待をポジティブに受け止めている可能性があります。
(注)ユニバースは各年TOPIX構成銘柄。サンプルの決算期の期間は、2015年1月~2024年6月まで。社長交代した企業の対TOPIX超過リターンを掲載。なお、社長は、代表権を持ち役職名に社長を含むかどうかで判定し、複数の社長がいる企業は対象外とした。バリュー、グロースは、社長交代日時点で、ユニバース内のBPRで5分位および1分位で分類。
(出所)各社開示資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成
以上を踏まえて、野村ではバリュー企業や生え抜きから外部出身者への社長交代に注目しています。
(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)
- 編集元アナリストレポート
- 日本株クオンツストラテジー – バリューの多角的レビュー(2)(2024年11月29日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。