2025.02.21 NEW

日本株の業績ピークはこれから 鍵を握る「値上げ」と「数量効果」 野村證券ストラテジストが解説

日本株の業績ピークはこれから 鍵を握る「値上げ」と「数量効果」 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

2025年度は値上げ継続と数量回復で増益継続

東証プライム市場に上場する2・3月本決算企業の2024年度3Q(第3四半期)決算が出揃いました。金融・公益を除く3Qの主要データを見ると、売上高は前年比3.5%増、営業利益は同2.9%増、経常利益は同12.5%増、最終利益は同11.4%増と、増益傾向が続いています。営業利益と経常利益は過去最高を更新したものの、販管費は前年比4.4%増と相対的に高い伸びとなりました。1Q(第1四半期)から3Qまでの累計では、売上高が前年比4.6%増、営業利益が同14.7%増、経常利益が同10.3%増、最終利益が同10.7%増となっています。

通期会社予想については上方修正が優勢で、修正後も業績進捗率が高いことから、さらなる上方修正の可能性が示唆されています。特に金融、建設・資材、運輸・物流といった分野で高い増益率が見られる一方、小売や食品では、3Qに増収営業減益となった企業も多く、コスト上昇や値上げ疲れの影響が目立ちます。

1Qから3Qまでの累計業績について、営業利益の前年比増減益を要因分解可能な122社をベースに見てみると、販管費や人件費などのコスト増による減益要因を、値上げや円安といった増益要因が上回り、結果として営業増益となりました。特に値上げ効果は多くの企業で確認されますが、建設や情報サービスなどBtoB(企業間取引)業種では価格転嫁が順調に進んでおり、持続性があると考えられます。

一方、円安効果に関しては自動車業界に偏っている点や一過性であることから評価が分かれる部分もあります。また、ここまでは数量効果が限定的でしたが、これは自動車の認証不正や自然災害による鉱工業生産の低迷が影響しています。25年には生産が回復し、数量効果が上向くことが期待されます。名目GDP(国内総生産)も高い伸びが予想されており、値上げ効果の持続性にも追い風となるでしょう。トップダウンの視点から、TOPIX(東証株価指数)のEPS(1株当たり利益)の増益率は、24年度に前年比10.3%増、25年度に同7.2%増と予想しています。

株価は決算に素直に反応

東証33業種別の25年1月20日以降の株価騰落率と相性が良い指標として、1Qから3Q累計の純利益達成率が挙げられます。個別銘柄を見ると、通期の会社予想経常利益の修正に株価が素直に反応しており、また1Qから3Q累計の経常利益実績のコンセンサス比も株価に一定の影響を与えています。

自社株買い枠の設定発表が急増しており、金額・社数ともに25年初来の数値は24年の同時期を上回っています。自社株買いの増減には、政策保有株の動向や来期業績予想の影響が確認されています。また、自社株買いに対する株価の反応は約4%の上昇となっており、業績予想の下方修正と同時に発表された場合でも、自社株買いの効果が上回り、株価は上昇傾向となります。

決算説明会では、トランプ関税に関するコメントが確認されることが増えてきました。多くの企業は様子見の姿勢を崩していないものの、自動車、素材、機械、そして一部の商社では警戒感が見られます。一方で、海運は相対的に影響を受けにくいようです。

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株メモ:業績ピークはまだ先の理由 – 25年度は値上げ継続と数量回復で増益継続(2025年2月19日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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