2025.02.27 NEW

エヌビディア決算は好調 一進一退の米国株式市場は企業の好業績が下支えに 野村證券ストラテジストが解説

エヌビディア決算は好調 一進一退の米国株式市場は企業の好業績が下支えに 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

写真/竹井俊晴

2025年2月26日引け後(日本時間27日早朝)、米半導体大手エヌビディアの2024年11月-2025年1月期決算が発表されました。直前四半期の決算発表の際には、売上高、利益額とも市場予想平均を上回る内容だったにもかかわらず同社株価は下落しましたが、今回はどのように捉えると良いのでしょうか。米国株式市場への影響も含め、野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。

決算実績、会社予想とも売上高は市場予想平均を上回る

エヌビディアの2024年11月-2025年1月期決算では、売上高が前年同期比78%増収の393億ドル、調整後EPS(1株当たり利益)(Non-GAAP)が同71%増益の0.89ドルとなり、共に調査会社ファクトセット集計による市場予想平均を上回りました。

2025年2-4月期については、売上高の会社見通しは430億ドル±2%で、予想レンジとしては421.4~438.6億ドルです。市場予想平均は420.7億ドルだったので、会社の予想レンジは市場予想平均を上回っています。調整後EPSについては、今回も会社は見通しを示していません。

業績が好調だったのは、主力のデータセンター向けの売上高が前年同期比93%増加と大きく伸びたからです。過熱問題などで出荷の遅れが報じられていた新型のAI用半導体「ブラックウェル」について、エヌビディアの創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏は量産できたと説明し、需要は驚異的だとコメントしました。

株価は大きく上がりも下がりもせず。比較的冷静な反応

エヌビディアの株価は、26日の通常取引は前日比+3.7%の131.28ドルで取引を終えました。その後、決算発表を受けて時間外取引では、NY時間19時59分時点で終値をやや下回る129.32ドルとなりました。

決算実績は概ね市場予想平均を上回り、会社売上高見通しも市場予想平均を上回りましたが、上振れの度合いが小幅だったことで、比較的冷静な反応になっているとみられます。業績がより大きく上振れることや、逆に予想を大きく下振れることを予想していた市場参加者にとっては、期待外れだったのかもしれません。

粗利率の低下はブラックウェルの立ち上がりのため想定の範囲内

収益性を示す指標の一つである粗利率(売上高総利益率)についてみてみると、2024年11月-2025年1月期は調整後ベースで73.5%と、前年同期である2023年11月-2024年1月期の76.7%、直前四半期である2024年8-10月期の75.0%から低下しました。粗利率が低下したことをネガティブに指摘されるかもしれませんが、これは問題視することはないと思います。

粗利率が低下した要因として、ブラックウェルの出荷開始が挙げられます。ただ、同製品の立ち上げに伴い、当初は粗利率が低下することについては、前回の四半期決算時に会社側が説明していました。また、その際に2024年11月-2025年1月期の調整後粗利率を73.5%としていたため、会社としては想定の範囲内だったと考えられます。そして会社は、2026年1月期後半には、粗利率は70%台半ばに回復する見込みとしています。

「目新しい話」は、GTCに注目

市場関係者からは、決算実績が市場予想平均を上回ったのに株価が大きく上がらない理由として、今回の決算内容は「目新しさに欠ける」といった声が上がるかもしれません。しかし、そう感じるには理由があります。

エヌビディアは例年、3月に大規模カンファレンス「NVIDIA GTC(GPU Technology Conference)」を開催しています。今年は3月17日から21日に行われる予定です。ブラックウェルも、2024年のGTCで発表されました。新技術や新商品などの発表があるとしたら、GTCで行われるとみられます。今年のGTCで何が発表されるかに、引き続き注目したいと思います。

エヌビディア決算の株式市場への影響は

今回の決算では、ブラックウェルの課題を克服して、本格的に出荷が始まっていることが窺えました。

エヌビディアの好決算で、米国株市場が再び上昇に向かう転換点となることを期待していた市場参加者もいたとは思いますが、現時点での市場の反応を見る限り、影響は限定的であるようです。

このところ、米国株式市場は一進一退となっています。主要株価指数のひとつであるS&P500指数は、2月18日、19日と2日連続で終値ベースでの史上最高値を更新しましたが、その後は軟調に推移しています。

この背景として大きいのは、トランプ政権の関税政策をめぐる懸念があることです。2月ミシガン大学消費者センチメント指数では、関税に関する懸念から、消費者マインドの低下とインフレ期待の高まりがみられました。株式市場では、米国経済を支える消費の先行きが懸念されていると推察します。

一方で、米国の企業業績は拡大が予想されています。米国企業の利益成長の要因としては、技術力やビジネスモデルを活かして新商品やサービスを次々と投入し、経済成長率を上回るペースで利益を拡大している有力企業が多いことが挙げられます。そして、それらの企業の多くは、グローバルに競争力を発揮しています。2026年にかけて業績拡大が予想されている要因の一つは、AIの普及があるとみられます。

S&P500指数構成企業の1株当たり利益(EPS)の推移

S&P500指数構成企業の1株当たり利益(EPS)の推移のイメージ (注)予想はLSEG集計による2025年2月21日時点の市場予想平均。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

今後もトランプ政権による関税・貿易政策やその他の要因で株式市場が一時的に調整することはあると思いますが、企業業績の拡大が予想されていることから、株価が大崩れする可能性は低いのではないかと考えています。

そして、インフレが再び加速し、FRB(米連邦準備理事会)が再び利上げを迫られるような状況にならない限り、米国の長期金利は大幅に上昇せず、企業業績の拡大が評価されることで、米国株式市場は上昇トレンドを維持すると予想されます。

また、AI分野に関しても、AIの発展はまだ始まったばかりで、今後裾野が広がっていくでしょう。2024年までは株式市場の主役はAIを実現するうえで必要なインフラであるデータセンター関連銘柄でした。データセンターで使用される基幹部品であるGPU(画像処理半導体)を供給するエヌビディアが注目されたのもこの点が大きいです。

しかし今後は、整備されたインフラを活用して、AIを使用する段階に入ってきます。今後は、AIを活用するためのソフトウェアや、AIを活用した広告やゲームなどの事業を展開する企業に、投資対象が広がっていくものとみられます。

生成AIは様々な分野での利用が予想される

図版タイトル生成AIは様々な分野での利用が予想される移のイメージ (注)市場規模はブルームバーグ・インテリジェンスによる2024年3月28日時点の推計・予想。
(出所)ブルームバーグ・インテリジェンスより野村證券投資情報部作成

野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
村山 誠
1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

ページの先頭へ