2025.05.15 NEW
GAFAM決算のポイント 業績は好調だったが関税の影響で株価に明暗 野村證券・竹綱宏行
トランプ関税政策の影響で米国株式市場が大きく乱高下するなかで、米国主要企業の2025年1-3月期の決算発表が行われました。GAFAMとも総称され、株式市場に大きな影響を与える米国の大手IT企業であるアルファベット、アマゾン・ドットコム(以下、アマゾン)、メタ・プラットフォームズ(以下、メタ)、アップル、マイクロソフトの5社について、決算のポイントを野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの竹綱宏行が解説します。
GAFAM実績は市場予想を上回り、増益基調維持
- トランプ関税の影響が注目されるなかで、GAFAMと呼ばれる米国の大手IT企業5社の決算はどうみればいいでしょうか。
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5社の2025年1-3月期の売上高と1株利益の実績はそれぞれ市場予想を上回りました。さらに2027年にかけて各社とも純利益の増加が継続すると市場では予想されています。
ただし、2025年の純利益の市場予想は、相互関税の発動や決算発表の前の3月末時点と、決算発表後の5月7日時点 との比較では、アルファベット、メタ、マイクロソフトは若干増加した一方で(変化率はそれぞれ+6%/+1%/+1%)、アマゾンと アップルは小幅に減少しました(同-3%/-2%)。決算発表翌日の株価の騰落はこれと概ね整合的です。
(注)メタはメタ・プラットフォームズ、アマゾンはアマゾン・ドットコムを指す。決算発表は各社とも引け後。緑の網掛けは業績の実績が市場予想を上回った場合。アルファベットの株価騰落率はA株。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
(注)メタはメタ・プラットフォームズ、アマゾンはアマゾン・ドットコムを指す。純利益は、調整後で、予想はLSEG集計による2025年5月6日時点の市場予想平均、期間は暦年(1-12月期)。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成。
- GAFAMのなかでも特にアップル、アマゾンの純利益予想が減少となり、決算発表直後の株価もふるわなかったのはなぜでしょうか。
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トランプ関税の影響が大きいと思います。関税は、スマホやPCの部品などの財輸入には逆風となります。アップルは、米国で販売されるiPhoneのうちの大半の組み立てを高関税率を課された中国以外に移管し、関税対応の費用を計上する計画です。また、アマゾンは、Eコマース事業が関税による物価高の悪影響を受けることが懸念されています。
一方でトランプ関税は広告には懸念されるほど影響しませんでした。アルファベットやメタのインターネット広告事業は、少額輸入品への免税措置(デミニミスルール)の撤回によりアジアのアパレルメーカーからの広告料が減少する、との一部の市場関係者は懸念していましたが、それほど状況が悪化せず、AIによる広告サービス機能の向上などが成長をけん引しました。
マイクロソフトも、関税による企業のIT設備投資の意思決定の遅れが懸念されましたが、クラウド事業やオフィスソフト事業の実績と見通しが市場予想を上回りました。
アルファベットとアップルは追加の自社株買いを発表しました。下図のように4月初めの関税発表を受け株価は下落しましたが、自社株買いの強化は、企業が自社の株価を割安と評価しているシグナルと解釈されます。
(注)米IT大手は全てを網羅しているわけではない。メタはメタ・プラットフォームズ、アマゾンはアマゾン・ドットコムを指す。株価は日次で、直近値は2025年5月12日時点。アルファベットの株価騰落率はA株。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成。
- 5月12日に米中両政府の関税の90日間の一時停止措置が発表されました。その影響はどう見ていますか。
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S&P500は5月12日終値ベースで3.26%上昇しました。アルファベットが+3.74%、アマゾンが+8.07%、メタが+7.92%、アップルが+6.18%となるなど、米国株の上昇を主導しました(マイクロソフトは+2.40%)。アマゾンやアップルは、GAFAMではEコマースやiPhoneなどが、中国からの財輸入による関税の影響を大きく受けると考えられていたため、株価もポジティブに反応したと考えられます。
AI用半導体大手のエヌビディアも+5.44%と堅調でした。同社の中国での売上高は全体の10%強ですが、関税や半導体輸出規制の影響などを含めて5月28日の2-4月月期決算発表が注目されます。

- 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
竹綱 宏行 - 1998年野村證券入社。2005年から2015年までニューヨーク、2016年までロンドン駐在(デリバティブモデル開発、デリバティブディーリング、機関投資家営業などに従事)。2019年から2021年に国際金融情報センターに出向(G7マクロ経済とESG金融の分析に従事)。これらの経験を活かし、グローバルな景気動向や政策分析、産業分析を踏まえ、米国株を中心とした投資戦略に関する情報を発信している。CFA協会認定証券アナリスト(米国証券アナリスト)。
※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。