2025.05.20 NEW

東証、最低投資額「10万円程度に」 現状、投資額が高い企業は? 野村證券ストラテジストが解説

東証、最低投資額「10万円程度に」 現状、投資額が高い企業は? 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

決算が概ね出揃うが、2020年以来の「大幅下振れ」スタート

5月14日時点における2・3月本決算企業の集計値では、金融・公益を除く942社が公表しており、時価総額の96%強が出揃いました。2024年度の実績は前年度比8.7%の経常増益となり、2025年度の会社計画は同5.3%の経常減益となりました。期初計画が減益である点に加え、2025年度の会社計画における経常利益が2025年3月末時点のQUICKコンセンサスを11.7%下回るなど、2020年以来の「大幅下振れ」スタートとなっています。

業種別の2025年度の会社予想では、内需関連は増益、製造業では減益予想が多い状況です。2025年度の経常利益に関する会社計画と2025年3月末時点でのQUICKコンセンサスの乖離率を見ると、情報・通信、銀行業、建設業などの分野は相対的に堅調であるのに対して、鉄鋼、石油・石炭製品、鉱業、輸送用機器、海運業、パルプ・紙などは大幅なマイナスとなっています。また、業種別に見た2025年度の経常利益に関するQUICKコンセンサス予想の修正状況では、陸運や電気・ガスなどを除き全体的に下方修正の傾向が続いており、特に石油・石炭製品、金属製品、輸送用機器、繊維製品などでは大幅な下方修正となっています。

決算を挟んだ株価反応では、2025年度の経常利益に関する会社計画と事前のQUICKコンセンサス予想を比較した際の強弱によって、相対リターンにプラスマイナス2%ポイントの格差が生じています。また、決算から3~5営業日が経過した後には、このような決算情報に対する強弱反応が反転する傾向も見られます。

また、自社株買いを発表した企業は、1~2営業日後にかけて2~3%のアウトパフォーム傾向となっていますが、決算発表後半にかけてアウトパフォームの度合いがやや低下して東京証券取引所は4月24日、「少額投資の在り方に関する勉強会」の報告書を公表しました。この報告書では、上場企業に対し株式の最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう求めた点が注目を集めています。現時点では、上場規程において最低投資金額は50万円未満とすることが努力義務として定められています。株価水準が高い値がさ株については、株式分割が生じやすい状況が今後も期待されると考えられます。参考までに、最低投資金額が50万円以上で個人投資家保有比率15%未満の企業(2025年4月末時点)を紹介します。

最低投資金額引き下げ要請で株式分割期待が高まる

東京証券取引所は4月24日、「少額投資の在り方に関する勉強会」の報告書を公表しました。この報告書では、上場企業に対し株式の最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう求めた点が注目を集めています。

現時点では、上場規程において最低投資金額は50万円未満とすることが努力義務として定められています。株価水準が高い値がさ株については、株式分割が生じやすい状況が今後も期待されると考えられます。

株式分割発表後の株価パフォーマンスについても確認していきます。株式分割によって投資家層の拡大が期待される点や、配当を据え置いた場合に実質的な増配となるケースがある点などから、株式分割が発表されると短期的に株価が上昇する傾向が見られます。

TOPIX構成企業の株式分割公表前後の株価形成(対TOPIX相対株価)

米TOPIX構成企業の株式分割公表前後の株価形成(対TOPIX相対株価)のイメージ (注)対象は2020年以降のTOPIX構成企業での株式分割発表。2025年4月28日時点。
(出所)JPX総研、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

参考までに、TOPIX500採用企業のうち、2025年4月末時点で最低投資金額が50万円以上かつ個人投資家保有比率が15%未満の企業を整理しました。

最低投資金額が50万円以上で個人投資家保有比率15%未満の企業(2025年4月末時点)
銘柄コード 銘柄名 株価終値(4月30日) 最低投資金額(4月30日) 個人
持ち株比
1414 ショーボンドホールディングス 5,121 512,100 10.6
1878 大東建託 15,860 1,586,000 10.1
1925 大和ハウス工業 5,155 515,500 12.3
2875 東洋水産 9,220 922,000 7.8
3349 コスモス薬品 9,205 920,500 8.5
3769 GMOペイメントゲートウェイ 8,950 895,000 3.6
4307 野村総合研究所 5,392 539,200 10.2
4452 花王 6,107 610,700 14
4519 中外製薬 8,219 821,900 3.1
4704 トレンドマイクロ 10,230 1,023,000 2.4
5021 コスモエネルギーホールディングス 5,855 585,500 12.7
5344 MARUWA 29,060 2,906,000 2.4
5631 日本製鋼所 5,876 587,600 10.7
5803 フジクラ 5,247 524,700 12.5
6098 リクルートホールディングス 7,942 794,200 9.5
6146 ディスコ 27,620 2,762,000 10.9
6201 豊田自動織機 16,760 1,676,000 5.4
6273 SMC 46,470 4,647,000 2.5
6367 ダイキン工業 16,295 1,629,500 6.9
6406 フジテック 5,600 560,000 5.8
6504 富士電機 6,323 6632,300 9.4
6532 ベイカレント 7,690 769,000 11.9
6707 サンケン電気 6,271 627,100 9.6
6806 ヒロセ電機 16,215 1,621,500 4.1
6857 アドバンテスト 5,863 586,300 6.7
6861 キーエンス 59,840 5,984,000 5.4
7309 シマノ 20,185 2,018,500 5.3
7741 HOYA 16,780 1,678,000 6.8
7974 任天堂 11,830 1,183,000 4.9
8001 伊藤忠商事 7,282 728,200 11.7
8035 東京エレクトロン 21,225 2,122,500 7.4
8060 キヤノンマーケティングジャパン 5,070 507,000 14.3
8111 ゴールドウイン 8,177 817,700 13.8
8227 しまむら 9,512 951,200 14.1
8766 東京海上ホールディングス 5,708 570,800 14.3
8830 住友不動産 5,300 530,000 2.9
9065 山九 6,249 624,900 12.8
9435 光通信 39,580 3,958,000 12.4
9735 セコム 5,248 524,800 5.1
9766 コナミグループ 20,350 2,035,000 4.5
9843 ニトリホールディングス 17,075 1,707,500 11.9

(注)TOPIX500採用企業のうち、最低投資金額が50万円以上で個人投資家保有比率が15%未満の企業をスクリーニング。2025年4月30日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株ウィークリー – 米景気を軸に業績・バリュエーションを両睨み(2025年5月1日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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