2025.07.07 NEW

業績連動報酬の導入企業、2年目以降にROE改善の傾向 野村證券ストラテジストが解説

業績連動報酬の導入企業、2年目以降にROE改善の傾向 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

2025年度以降に業績効果の顕在化が期待しやすい企業候補は?

TOPIX(東証株価指数)構成企業のうち、取締役業績連動報酬を導入している企業の割合は、2024年度時点で7割を超えています。また、経営陣の報酬に株価上昇率や配当額などから投資家の総合リターンを測る株主総利回り(TSR)を反映する動きが広がっており、このような流れに異論を唱える人は少ないでしょう。

難しいのは、その効果を測定することです。単純に業績連動報酬を採用している企業と、採用していない企業のROE(自己資本利益率)を比較すると、2022年度までは「ROEが高い企業ほど業績連動報酬を採用しがち」という傾向が見られました。しかし、2023年度以降は「ROEが低い企業ほど業績連動報酬を採用しがち」という傾向に変化しています。ただし、これは因果関係を示すものではありません。

そこで、前年の業績連動報酬の導入状況と、当該年度のROE変化幅(タイプ別の中央値)を示したのが図表1です。前年に業績連動報酬を導入していた企業、あるいは新たに導入した企業でROEが改善しているという証拠は確認できませんでした。しかし、前前年度に業績連動報酬を新規導入した企業では、2023年度および2024年度にROEの改善が顕著です。制度変更から2年目以降に効果が現れることについては、一定の納得感がある結果だと言えるでしょう。

図表1:前年の業績連動報酬状況と当該年度のROE変化幅(タイプ別の中央値)

図表1:前年の業績連動報酬状況と当該年度のROE変化幅(タイプ別の中央値)のイメージ (注)対象はTOPIX500。各年度CG報告書をもとに、前年度において取締役の報酬が業績連動型かどうかを判別し、タイプ別に当該年度のROE前年差の中央値を算出。
(出所)QUICK、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

図表2には、2023年度に業績連動報酬を導入した企業を整理していますが、こうした企業では、2025年度以降に業績効果が顕在化することが期待できます。もっとも、こうした結果が再現性の高いものであると信じるかどうかは、各投資家の信念に委ねられるでしょう。

図表2:2023年度に業績連動報酬を導入した企業(2025年度以降に業績効果の顕在化が期待しやすい企業候補)
銘柄コード 銘柄名
1786 オリエンタル白石
1799 第一建設工業
1822 大豊建設
2001 ニップン
2124 ジェイエイシーリクルートメント
2998 クリアル
3002 グンゼ
3097 物語コーポレーション
3176 三洋貿易
3289 東急不動産ホールディングス
3543 コメダホールディングス
3561 力の源ホールディングス
3580 小松マテーレ
3950 ザ・パック
3983 オロ
4027 テイカ
4203 住友ベークライト
4205 日本ゼオン
4259 エクサウィザーズ
4443 Sansan
4577 ダイト
4666 パーク24
5208 有沢製作所
5351 品川リフラクトリーズ
6289 技研製作所
6379 レイズネクスト
6965 浜松ホトニクス
7071 アンビスホールディングス
7163 住信SBIネット銀行
7532 パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
7839 SHOEI
8005 スクロール
8923 トーセイ
9039 サカイ引越センター
9692 シーイーシー

(注)対象は時価総額300億円以上の上場企業。2025年6月25日時点。
(出所)QUICKより野村證券市場戦略リサーチ部

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株ウィークリー- 米国の対イラン強硬姿勢は「結果オーライ」?(2025年6月26日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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