2025.08.05 NEW

日本株の決算序盤戦 関税影響を迅速開示する企業に高評価 野村證券ストラテジストが解説

日本株の決算序盤戦 関税影響を迅速開示する企業に高評価 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

関税影響の新規反映と想定比抑制が拮抗

2025年8月1日までに決算発表を行った企業のうち、関税影響を開示した46社を対象に集計した結果、関税による影響額は、2025年4・5月時点より直近の方が抑制されています。

関税費用・コスト影響に関する集計値

関税費用・コスト影響に関する集計値のイメージ (注)2025年8月1日までに四半期決算を公表した企業で関税影響に関する開示(営業利益、経常利益、事業利益、調整EBITDA)が確認される企業(46社)を集計。銀行も含まれるため経常利益に対する比率を示した。
(出所)各社開示資料を基に野村證券市場戦略リサーチ部作成

4・5月時点では、未定・非開示であったものの直近で開示した企業が14社、コスト増方向に見直した企業が1社、コスト減方向に見直した企業が9社、据え置きが18社、依然として織り込まない企業が4社となっています。関税影響を遅れて反映した企業では関税費用増加につながりましたが、自動車や鉄鋼では当初想定ほど厳しい関税費用とならなかったことが抑制要因です。

2025年4-6月期(第1四半期)の関税影響を開示した企業は限られており、開示企業ベースでは通期の経常利益計画の13.3%にとどまります。その背景には、第2四半期以降の駆け込みや反動に警戒していること、また、保守的に見積もっていることが影響していると考えられます。

3月末以降の株価推移を関税影響の織り込み状況別にみると、4・5月時点で関税影響を開示し、その後も数値を据え置いた企業は株価がアウトパフォーム傾向にあります。これに対し、関税影響を織り込んでいない企業は株価がアンダーパフォーム傾向にあります。さらに、関税影響をコスト減方向に見直した企業も、7月後半以降は株価がアウトパフォーム傾向にあります。

関税影響の織り込みと株価形成(対TOPIX相対株価)

関税影響の織り込みと株価形成(対TOPIX相対株価)のイメージ (注)2025年8月1日までに四半期決算を公表したうち、関税影響が確認できる企業(46社)が対象。4・5月時点と直近の織り込み状況の変化をもとに4つに分類してTOPIX相対株価の平均値を算出。増額は1社のみのため割愛した。
(出所)JPX総研より野村證券市場戦略リサーチ部作成

8月1日までの決算集計

2025年8月1日までに発表された2月・3月期本決算企業の第1四半期決算(金融・公益を除く428社)を集計したところ、売上高は前年同期比+0.5%、営業利益は同-1.6%、経常利益は同-8.2%、最終利益は同-4.7%となりました。今後はアナリストの業績予想の修正を指数化した「リビジョン・インデックス」のマイナス幅縮小が見込まれます。

増収率が低くみえる主な要因は、売上高が10%ほど減少する大規模な組織再編を進める企業(総合電機など)が影響しているためであり、実態を示す中央値(+3.6%)が参考になります。

第1四半期の営業利益要因分解(公表している54社の集計)をみると、外需系企業を中心に、販売費及び一般管理費などのコスト増や、関税を含むその他要因、さらに円高が減益要因となる一方、数量増および値上げが増益要因となっています。コスト増を数量増や値上げで十分に相殺できるか否かが、増益・減益の明暗を分けている状況です。

2025年度1Q営業利益の要因分解(公表している54社の集計値)

2025年度1Q営業利益の要因分解(公表している54社の集計値)のイメージ (注)対象は2025年6月20日から2025年8月1日までに決算を公表した企業で、2営業利益の要因分解を開示している54社。前年比増減益を数量要因、価格要因、為替要因、原材料価格要因、販管費・固定費要因、人件費要因などに分類、各社の表記は必ずしも一致しないが野村で分類し直して集計。
(出所)会社資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

業種別の傾向と株価反応

全体では減益傾向ですが、通期経常利益計画に対する進捗率(25.9%)や通期計画の修正状況(上方修正30社、下方修正25社)から、第1四半期の決算は概ね市場予想と整合的(インライン)であると分析できます。セクター別に見ると、「輸送用機器」や「鉄鋼」の収益大幅悪化を、「非鉄金属」「銀行」「陸運」「建設」などの増益で補っています。株価も増益率や進捗率の高いセクターが堅調です。

業種別の2025年度1Q経常利益達成率と7月23日以降の株価指数騰落率

業種別の2025年度1Q経常利益達成率と7月23日以降の株価指数騰落率のイメージ (注)経常増益率の対象は2025年8月1日までに四半期決算を公表した2・3月本決算のTOPIX構成企業。2社以上の該当企業が存在するセクターを表示。株価指数は2025年8月4日11時時点。
(出所)JPX総研より野村證券市場戦略リサーチ部作成

決算発表を挟んだ株価反応(超過リターン)は、第1四半期の経常利益実績が事前の市場予想(コンセンサス)を上回った場合は+2%、下回った場合は-2%と、上・下ともに同程度の動きとなっており、下振れ時の極端な脆弱性が和らいできたと考えられます。

また、全体の約3%で自社株買いが発表されており、発表後の株価は翌営業日以降に約4%のアウトパフォームとなる傾向が確認されました。

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株メモ:決算序盤戦と関税影響の整理 – 関税影響の新規反映と想定比抑制が拮抗(2025年8月4日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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