2025.08.27 NEW

直近上昇した割安・低信用倍率銘柄 売り方の買い戻しが株高を加速? 野村證券ストラテジストが解説

直近上昇した割安・低信用倍率銘柄 売り方の買い戻しが株高を加速? 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

短期需給・センチメント指標はややネガティブ

足元の日本株式市場は、短期需給やセンチメント(市場心理)指標を総合すると、2025年7月以降の株価急騰の反動により、ややネガティブな状況にあるとみなせます。

先物投資家による買い戻し主導の資金フローは、特定銘柄に大きな影響を与えやすい一方で、先物の売りポジション解消はおおむね終わったとの見方もあります。なお、先物投資家の週末時点の建玉(ポジション)に沿って投資した場合、過去10年間の累計でわずかな損失となっており、ロングオンリー(買い持ち専門)などと比べて割に合いません。先物の建玉は、ヘッジ目的や複雑な投資戦略の一部など、さまざまな要因を反映していると考えるのが妥当です。

足元では信用取引における売り残高が高水準にあるため、仮需は引き締まっています。仮需が少ない方が、今後のTOPIX(東証株価指数)のパフォーマンスが堅調となる傾向があります。

仮需(ネット信用買い残とネット裁定買い残の時価総額比)とTOPIX

仮需(ネット信用買い残とネット裁定買い残の時価総額比)とTOPIXのイメージ (注)2016年1月以降で検証。直近は2025年8月15日時点。
(出所)JPX総研、東京証券取引所より野村證券市場戦略リサーチ部作成

高水準の自社株買いやTOBが「株式が減る」環境を常態化

米欧の大手運用機関による日本株の評価はやや上向きましたが、この評価スコアは逆張り指標と見なされるため、日本株の先行きにはややネガティブと判断できます。一方、国内の株式投資信託による資金フローは、マーケットの推移に沿う順張りのシグナルですが、2025年8月中旬以降は流出圧力が強まっており、これもネガティブな材料です。

これらの指標は、足元では利益確定売りを進める投資家が多いことを示しています。こうしたリバランス(資産配分の調整)を行いながら中長期投資を続けることで、割高な局面での過度な買い増しを回避しやすくなります。

代表的な例として、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)があります。GPIFの直近の国内株式の組入比率は、基本ポートフォリオの中心値を上回っており、1.6兆円規模の売り圧力が発生していると推計されます。

GPIFの日本株ウェイト試算値

アフリカ関連日本株(vsTOPIX)と現地株価指数のイメージ (注)年金特別会計で管理する積立金を除くベース。6月末時点の数値をもとに、その後はベンチマーク指数通りに4資産が変動したものと仮定して試算。直近日次推計値は2025年8月20日時点。直近の信託銀行の日本株買い越しは8月8日の週まで反映。信託勘定の外国株・ファンド、外国債券(除く短期債)、国内公社債(除く短期債)の買い越しはそれぞれ2025年7月までを反映。出所: GPIF、MSCI、FTSE、JPX総研、東京証券取引所、大阪取引所、証券業協会、財務省より野村作成
(出所)GPIF、東京証券取引所、大阪取引所より野村證券市場戦略リサーチ部作成

一方、自社株買い発表額が高い水準を維持していることや、空売り比率が40%を下回っていることは、ポジティブなシグナルです。需給やセンチメント指標を総合すると、全体としてはややマイナスの評価になります。

特に自社株買いやTOB(株式公開買い付け)が高水準であることが、「株式が市場から減少する」環境を定着させています。お盆休みなどの一時的な要因で、金融法人による持ち合い株の解消売りが一服するだけでも、株高になりやすい局面が今後も訪れる可能性があります。

個別銘柄の観点では、2025年8月において低信用倍率ファクターがやや優勢となっています。これは信用取引の売り方の買い戻しが株価上昇に勢いを与えやすいことを示唆しています。

上記を踏まえて、TOPIX500(東証株価指数500)構成銘柄を対象に、(1)信用倍率が1.5倍以下、(2)来期予想PER(株価収益率)が15倍以下またはPBR(株価純資産倍率)が1倍以下の銘柄をスクリーニングしました。

直近上昇の割安・低信用倍率銘柄スクリーニング
銘柄
コード
銘柄名 来期予想
PER
実績
PBR
信用倍率
(倍)
1332 ニッスイ 11.5 1.1 1.14
1803 清水建設 14.1 1.5 1.43
1808 長谷工コーポレーション 11.9 1.3 0.52
1925 大和ハウス工業 10.6 1.3 1.04
2607 不二製油 13.1 1.5 0.76
2784 アルフレッサ ホールディングス 14.7 0.9 0.19
3003 ヒューリック 10.7 1.4 0.85
3288 オープンハウスグループ 8.6 1.6 1.10
4045 東亞合成 12.7 0.8 1.18
5101 横浜ゴム 9.8 1.0 0.93
5393 ニチアス 12.9 1.7 1.19
5706 三井金属鉱業 14.3 1.6 0.36
5714 DOWAホールディングス 11.9 0.8 1.08
6136 オーエスジー 12.6 1.0 0.36
6305 日立建機 11.5 1.3 0.85
6448 ブラザー工業 10.8 0.9 1.33
6472 NTN 15.2 0.7 0.94
6473 ジェイテクト 11.4 0.6 1.36
6770 アルプスアルパイン 18.3 0.9 1.41
6952 カシオ計算機 14.7 1.3 1.42
7164 全国保証 13.8 2.0 1.11
7167 めぶきフィナンシャルグループ 10.1 0.9 0.75
7181 かんぽ生命保険 11.0 0.4 1.30
7182 ゆうちょ銀行 11.9 0.7 0.84
7270 SUBARU 12.7 0.8 0.47
7282 豊田合成 9.9 0.8 1.44
7313 テイ・エス テック 17.7 0.7 1.27
7459 メディパルホールディングス 15.6 0.9 0.34
7846 パイロットコーポレーション 13.2 1.2 0.99
7988 ニフコ 11.4 1.4 1.11
8233 高島屋 11.0 0.8 0.70
8273 イズミ 12.3 0.8 0.22
8283 PALTAC 12.3 1.0 0.91
8308 りそなホールディングス 12.2 1.2 1.09
8359 八十二銀行 12.0 0.6 1.10
8766 東京海上ホールディングス 12.7 2.5 1.39
8795 T&Dホールディングス 14.5 1.4 1.12
9005 東急 14.8 1.3 0.49
9020 東日本旅客鉄道 14.5 1.4 1.08
9101 日本郵船 8.9 0.8 1.31
9107 川崎汽船 10.3 0.9 1.02
9401 TBSホールディングス 20.0 0.8 0.70
9404 日本テレビホールディングス 18.9 1.0 0.34
9532 大阪瓦斯 13.0 1.0 1.20
9533 東邦瓦斯 21.6 1.0 0.34

(注)対象はTOPIX500構成銘柄。(1)信用倍率が1.5倍以下、(2)来期予想PERが15倍以下またはPBR1倍以下の銘柄をスクリーニング。業績予想はQUICKコンセンサス(東洋経済予想で補完)。信用倍率は2025年8月15日時点。業績予想、バリュエーションは2025年8月20日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株ウィークリー – 短期需給・センチメント指標はややネガティブ(2025年8月21日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

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