2025.10.01 NEW

S&P500予想、2026年末7,200へ引き上げ AIと利下げ期待が支え 野村證券ストラテジストが解説

S&P500予想、2026年末7,200へ引き上げ AIと利下げ期待が支え 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

AIと利下げへの期待に伴う「良いとこどり」が支え

2025年9月の米国株は総じて上昇しました。一方、9月23日にはFRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長が「株価が割高」と述べました。FRB議長も認めるようになった米国株式の割高感は、雇用の減速と旺盛なAI需要の両立や、景気悪化に先手を打つ「予防的利下げ」への期待など、様々な「良いとこどり」の結果と言えます。米景気が軟着陸して「良いとこどり」が続く可能性もある一方で、景気や企業業績の下振れが意識される局面では株安に反応しやすい可能性があるため、上下両方向への注意が必要です。

2024年秋以降の米国株主要指数

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(注)2025年9月29日時点。
(出所)S&P、Dow Jones、ナスダック、フィラデルフィア証券取引所、Russell、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

米国の労働市場の減速は利下げを後押しする一方で、金融緩和の環境下でAI投資が旺盛になるという「雇用低迷と旺盛なAI需要」への期待も取り沙汰されています。ですが、データを見る限りでは雇用者数とデジタル・知的財産投資は連動しており、両者のデカップル(分離)は現実的ではないように見えます。

米国雇用者数とデジタル・知財関連設備投資の推移

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(注)非農業雇用者数は、9月9日公表のベンチマーク改訂暫定試算値(2025年3月までの1年間で91.1万人、雇用者数の0.6%に相当)を反映。
(出所)米国商務省、米国労働省より野村證券市場戦略リサーチ部作成

株価や業績リビジョン(アナリストの業績予想の修正)を見ると、AI関連のインフラ企業は堅調です。他方で、AIを活用するユーザー企業の株価パフォーマンスやリビジョンは伸び悩みが見られます。こうした格差が続くと、AI需要への懸念が高まりやすいだけに、今後の決算ではユーザー企業の投資意欲やAIの利活用による成果に注目したいです。

AIインフラ企業とAIユーザー企業のリビジョン・インデックス

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(注)AIインフラ企業は半導体、半導体製造装置、クラウドサービスなどを提供する企業、AIユーザー企業は金融、Eコマース、コールセンター、CRM(顧客情報管理)などでAIを利活用しているとされる企業群。ブルームバーグの今期・来期予想EPSの修正状況をもとに、各グループごとに、(上方修正社数-下方修正社数)÷修正総数を算出。
(出所)S&P、フィラデルフィア証券取引所、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

市場は「利下げ開始により景気拡大へ」というシナリオを織り込んでおり、金融緩和期待に伴うPER(株価収益率)の上昇も株高の要因となっています。資金流入や自社株買いも追い風ですが、益利回り(PERの逆数)と米国長期金利の差であるイールドスプレッドが縮小していることを踏まえると、足元の相場には流動性相場の側面も否めません。FRB議長が「株価は割高」と発言しているため、割高感がリスクとして意識されやすくなっています。

S&P500のPERとイールドスプレッド

S&P500予想、2026年末7,200へ引き上げ AIと利下げ期待が支え 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)PERは12ヶ月先予想(ブルームバーグ集計)。イールドスプレッドは益利回り-10年国債利回り。実質イールドスプレッドは益利回り-10年国債実質利回り。10年国債実質利回りは1998年8月以降は10年国債利回り-10年期待インフレ率(BEI、物価連動債)。1998年7月以前は10年国債利回り-CPI総合前年比。
(出所)S&P、米国商務省、ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

2026年末にS&P500は7,200まで上昇と予想

トップダウンで見たS&P500のEPS(1株当たり利益)は、2025年272.5、2026年310、2027年342.5に引き上げ、2028年は372.5と予想します(従来は2025年265、2026年300、2027年330)。主因は野村證券の米経済見通し上方修正です。先行きのS&P500見通しは、2025年末を6,800、2026年末を7,200へ引き上げ、2027年末は7,450と見ています(従来は2025年末6,400、2026年末6,600)。PERは現状の22~23倍から徐々に20倍前後に収れんすると想定しますが、AI期待や金融緩和期待を背景に、一定程度高いバリュエーション(投資尺度)が持続しやすい可能性もあります。

S&P500の見通し
  2025年12月 2026年6月 2026年12月 2027年6月 2027年12月
メインシナリオ 6,800 7,000 7,200 7,350 7,450
上振れ 7,300 7,500 7,700 7,850 7,950
下振れ 6,300 6,500 6,700 6,850 6,950
従来見通しのメインシナリオ 6,400 6,500 6,600 6,700 6,700

(出所)野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

米国マクロメモ:米株業績・指数見通し引き上げ – AIと利下げへの期待に伴う「良いとこどり」が支え(2025年9月30日配信)

(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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