2025.10.16 NEW

自民と維新、連立協議開始 高市トレード再開、維新関連銘柄も浮上? 野村證券・岡崎康平

自民と維新、連立協議開始 高市トレード再開、維新関連銘柄も浮上? 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

自民党と日本維新の会は10月15日、首相指名選での協力や連立政権の構築に向けた政策協議を始めることで一致しました。翌16日の日本株式市場では、政局の不透明感が後退したとの見方から、日経平均株価は前日比605.07円高の48,277.74円となり、公明党の連立政権離脱を受けて急落した下げ幅をほぼ埋めました。今後の展望について、野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が解説します。なお、野村證券では首相指名選挙の結果や政権の枠組みそのものについての予想は一切行っていません。

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連立相手に維新浮上、高市総裁の首相選出の可能性高まる

自民党は10月15日夜、日本維新の会との連立政権を視野に政策協議を開始すると報じられました。国内政治の動向をどう見ていますか。

あくまで仮の話ですが、自民党が日本維新の会と連立を組んだ場合、衆議院の議席は過半数まであと2議席になり、首班指名で自民党の高市早苗総裁が首相に選出される可能性が高まります。自民党と日本維新の会との2党のみの連立政権が実現しても、衆参両院で少数与党である点は変わりませんが、無所属議員や他の政党と政策面で協調することで政策の実現可能性は高まるため、株式市場にとってポジティブな話題と見ています。

公明党による連立離脱表明を受けて、10月14日の日経平均株価は一時46,000円台まで下落していましたが、16日に48,000円台まで回復しました。

株式市場では「高市トレード」が再開し、関連銘柄が物色される可能性があります。積極財政のイメージが強い国民民主党との相対感ではありますが、社会保障分野などの構造改革を掲げる日本維新の会による連立与党入りは、財政に対する過度な懸念を和らげる面もあるでしょう。

自維連立政権が誕生した場合、日本維新の会が掲げる政策の中で注目されるものは何でしょうか。

注目点は社会保険料の引き下げと副首都構想です。

特に社会保険料の引き下げのインパクトは大きいと見ています。年間で4兆円程度の国民の医療費削減につながり、現役世代で1人当たり年間約6万円の手取りが増えることになります。個人消費にとってはポジティブに働くため、消費関連や内需関連銘柄については株価を押し上げる材料になるかもしれません。

ポイントは、医療費削減がどのように実現されるかです。高市総裁が介護・診療報酬の引上げを掲げていることもあり、人件費の抑制は難しいと思われます。となると、日本維新の会が公約に記している通り、(1)湿布・胃薬・風邪薬などの保険適用見直し、(2)病床数の適正化、(3)医療DXの推進、などがコスト削減の手段になると見られます。薬価のマイナス改定がどの程度になるか、注意深く見守りたいところです。

副首都構想は、首都機能のバックアップや経済活性化などの狙いが背景にあります。日本維新の会の連立与党入りへの期待もあり、16日の株式市場では、関西で事業を展開する鉄道、不動産、建設などの企業の株価上昇が目立ちました。規制緩和の進展が具体化すれば、ライドシェアを始めとした関連銘柄にも注目が集まる可能性があります。

副首都構想が現実味を帯びると、日本維新の会が掲げる「道州制」など地方活性化策が注目を集める展開もありえます。石破茂政権のもとで動き始めた「令和の企業城下町構想」でも、企業が積極的に地方行政に関与する構想が示されており、これに賛同する企業群への注目が高まるかもしれません。内閣官房に設置された「民間主導による新たなまちづくり推進会議」などの動向に注目です。

首班指名後の日米首脳会談が重要イベント

今後の重要イベントは何でしょうか。

まず首相指名選挙です。仮に高市総裁が首相となった場合は、組閣の内容が重要です。サナエノミクスが主張する「責任ある積極財政」を、誰が財務大臣として実現していくのか。これは海外投資家からもしばしば問い合わせがある重要なポイントです。

どの閣僚ポストが日本維新の会に用意されるかも注目しています。日本維新の会が重視する副首都構想の実現を考えると、地方自治に関係が深い総務大臣ポストなどが用意される可能性があります。ただ、メディア報道では林芳正氏が総務大臣候補として取り沙汰されており、着地点はまだ見えません。副首都構想のみを司る特命担当大臣が新たに設置される可能性もあります。

また、新首相には外交デビューが直ぐに待ち構えています。10月下旬にはトランプ大統領の来日が見込まれており、米中対立が再燃している中で日米首脳会談の重要性は高いです。日米関税交渉で合意された5,500億ドルの対米投資をはじめ、貿易や為替に関する話題は注目されるでしょう。

将来的な総選挙を見据えた自維連立政権の課題は何でしょうか。

自民党が日本維新の会と連立を組んでも、衆院過半数の獲得にはもう一歩届きません。無所属議員の取り込みなどによって過半数を獲得し、安定した政権基盤を構築できるかが注目されます。支持率の動向次第では、来年にかけて解散総選挙の観測が活発化する可能性もあります。

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チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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