2025.11.07 NEW
GAFAM決算解説 決算後のメタ株急落で浮上したAIバブル懸念 投資家が見るべきポイントは? 野村證券・竹綱宏行
撮影/タナカヨシトモ(人物)
GAFAMとも総称され、株式市場に大きな影響を与える米国の大手IT企業であるアルファベット、アマゾン・ドットコム(以下、アマゾン)、メタ・プラットフォームズ(以下、メタ)、アップル、マイクロソフトの2025年7-9月期決算が出そろいました。メタの株価は決算発表を受けて急落し、AIブームがバブルではないか、との懸念が広がっています。野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの竹綱宏行が、各社決算のポイントを解説します。

AIインフラへの設備投資を増強
- GAFAM5社の7-9月期の決算結果について、ポイントを教えてください。
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GAFAM5社の売上高と1株利益の実績は、メタを除けば市場予想を上回りました。メタの1株利益も税関連の引当金計上による影響を除いた調整後では市場予想を8%上回りました。
(注1)決算発表は各社とも引け後。アルファベットの株価騰落率はA株。1株利益は希薄化後。決算のポイントの赤色はポジティブ、灰色はネガティブな内容。決算のポイントは全てを網羅している訳ではない。
(注2)税関連の引当金の影響を除けば+8%。
(出所)会社資料、LSEGより野村證券投資情報部作成
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アルファベットやメタのインターネット広告収入、アップルのiPhone販売などが好調で、以前懸念されたトランプ関税による個人消費への悪影響はあまり顕在化していないと考えられます。
AI・クラウド事業では、需要が供給を上回る状況が継続しています。アルファベットやメタは2025年1-12月期の設備投資見通しを引き上げました。アマゾンとマイクロソフトも今後設備投資額を増やすとコメントしました。
GAFAMには過剰投資懸念はあまり当てはまらない
- AIへの過剰投資を懸念する声もありますが、各社の設備投資の状況についてはどのように見ているでしょうか。
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GAFAM各社については、概ね利益を元に投資をしていることから、現時点で過剰投資の懸念はあまり当てはまらないと考えます。一方で、OpenAIのように収益化がまだ十分でない企業が巨額投資を続けている場合は、投資回収の確率を慎重に見極める必要があります。
下の各社の純利益額と設備投資額の推移についてのグラフは、縦軸を同じスケールにそろえています。両グラフからは、設備投資が増益につながり、さらに設備投資の増加につながる好循環がみて取れます。
(注)予想はLSEG集計による2025年11月5日時点の市場予想平均。期間は暦年(1-12月期)で、会計年度が暦年と異なるアップルとマイクロソフトについてはLSEGが調整。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
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背景には、GAFAMが自社事業でAIを活用するだけでなく、多くの企業が競争力を維持・強化するためにGAFAMのAI・クラウドサービスを採用していることがあると考えられます。
市場は増加するAI投資と利益貢献の動向を注視
- 決算発表後にメタの株価が大きく下落しました。原因は何でしょうか。
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メタの純利益の市場予想が下方修正されたためと考えられます。下の図は、各社の2025年1-12月期の売上高と純利益額について、2024年末、決算発表前にあたる2025年9月末、決算発表後にあたる2025年11月5日時点の市場予想です。
(注)純利益は調整後。各予想はLSEG集計による市場予想平均。。赤色の矢印はメタの売上高予想が上方修正された一方で、純利益額予想が下方修正されたことを強調。期間は暦年(1-12月期)で、会計年度が暦年と異なるアップルとマイクロソフトについてはLSEGが調整。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
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メタは決算発表後、売上高の市場予想は上方修正された一方で、純利益の市場予想は下方修正されました。これは、メタが2025年度(1-12月期)の総費用見通しについて、従来の1,140~1,180億ドルから1,160~1,180億ドルへ下限を引き上げたことなどが理由と考えられます。
また、設備投資については2025年通期を従来の660~720億ドルから700~720億ドルへ下限を引き上げ、2026年通期はさらに増加するとコメントしました。市場は、費用の増加が利益の増加よりもやや先行することを嫌気したと考えられます。OpenAIに向けられた懸念が、メタに対しても少し向けられた格好です。
- 一方、年初から5社の株価推移を見ると、アルファベットの株価は堅調ですね。この要因は何でしょうか。
(注)株価は日次で、直近値は2025年11月5日。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
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アルファベットについては、当初、検索広告が他社のAI検索ツールによって圧迫されるのではないかという懸念がありました。しかし同社は、AI要約機能(AI Overview)などのAI関連機能が検索利用のさらに一段の増加につながったと説明しています。また、AIモデル「Gemini(ジェミニ)」が好評で、クラウド事業の受注残は前年同期比で79%増と、前四半期の同37%増から伸びが加速しました。実際の業績の改善が確認され、懸念が和らいだことに株価が反応したと考えられます。
メタの株価についても、先行した同社の投資が利益を生むことが確認されることが重要と考えられます。
アマゾンやアップルの株価については、トランプ関税への懸念が払しょくされるかが今後注目されます。
- 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
竹綱 宏行 - 1998年野村證券入社。2005年から2015年までニューヨーク、2016年までロンドン駐在(デリバティブモデル開発、デリバティブディーリング、機関投資家営業などに従事)。2019年から2021年に国際金融情報センターに出向(G7マクロ経済とESG金融の分析に従事)。これらの経験を活かし、グローバルな景気動向や政策分析、産業分析を踏まえ、米国株を中心とした投資戦略に関する情報を発信している。CFA協会認定証券アナリスト(米国証券アナリスト)。
※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。