2025.11.11 NEW

日本株の上期決算は上振れ優勢 26年度大幅増益の確度をやや高める 野村證券ストラテジストが解説

日本株の上期決算は上振れ優勢 26年度大幅増益の確度をやや高める 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

上期決算は上振れが優勢

11月7日までに公表された2026.3期の上期決算(全産業、金融・公益を除く)では、時価総額ベースで全体の77%を占める682社が出揃い、事前のQUICKコンセンサスを上回る決算や通期の会社予想の上方修正が優勢でした。

上期は売上高が前年同期比2.0%増、経常利益が同0.2%減、純利益が同3.3%増でした。2Q(第2四半期)に限ると、売上高が同3.2%増、経常利益が同19.1%増、純利益が同27.3%増となり、1Q(第1四半期)経常利益の同15.4%減から急回復しています。

2024年度の2Q(第2四半期)の為替差損(営業外損失)の反動で、経常利益・純利益の増益率が押し上げられている点には注意が必要ですが、こうした一過性の要因を考慮しても、売上高・利益水準の拡大基調は崩れていません。

2026.3期通期の会社予想に対する経常利益の上期時点の進捗率は52.5%と順調です(2012年度以降の中央値は50.1%)。社数分布でも、上期は全体の70%が増収、67%が経常増益で、682社の中央値は売上高が同3.7%増、経常利益が同8.7%増でした。

上期経常利益の通期比達成率の推移

日本株の上期決算は上振れ優勢 26年度大幅増益の確度をやや高める 野村證券ストラテジストが解説のイメージ

(注)対象は2・3月期本決算のTOPIX構成企業で2025年11月7日までに2025年度上期決算を公表した企業(除く金融・公益)。2024年度までは上期経常利益実績÷通期実績、2025年度は上期経常利益実績÷会社通期予想(日経予想で補完)。
(出所)QUICK、日本経済新聞社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

関税・為替影響一巡後は数量・値上げ効果で2026年度以降の増益の確度が高い

上期の営業利益に対する項目別の寄与度を開示した95社の集計によると、関税のマイナス影響は自動車大手で大きく、円高も外需企業に不利に働きました。一方、数量効果や値上げ効果による増益寄与は拡大しています。関税や円高の影響が一巡するにつれ、2026年度の増益に向けた確度はやや高まったとみています。

アナリスト予想は2025年度・2026年度ともに上方修正されています。野村證券は11月4日付で、トップダウンのTOPIX(東証株価指数)EPS(1株当たり利益)予想を引き上げました(2025年度:+3.2%、2026年度:+14.3%、2027年度:+9.8%)。

株価は個社・セクターともに実績サプライズ、通期会社予想修正に反応

2025年度上期決算では、増減益の方向性や上期実績の進捗率、QUICKコンセンサス比での上振れ・下振れ、通期会社予想の修正がポジティブかネガティブかといった点に、各社の株価は総じて素直に反応しています。

個別では、安川電機(6506)、アドバンテスト(6857)、日立製作所(6501)、きんでん(1944)、イオン(8267)などが相対的にアウトパフォームし、ソシオネクスト(6526)、ローム(6963)、太陽誘電(6976)、第一三共(4568)、味の素(2802)、オリエンタルランド(4661)などが相対的にアンダーパフォームしました。

また、10月後半以降のセクター別の株価では、上期実績の上振れや通期会社予想の上方修正が目立った非鉄金属、電気機器、建設などが相対的にアウトパフォームしました。一方、上期実績の下振れや通期会社予想の下方修正が目立った海運、鉄鋼、医薬品、食品、金属製品などは相対的にアンダーパフォームしました。化学、陸運は、上記の決算指標は堅調ながら、株価指数はこれまでのところ相対的にアンダーパフォームしています。

上期進捗率、関税・為替影響一巡後をイメージしたスクリーニング

スクリーニングアイデアとして、今後の上方修正余地を示す「上期進捗率>過去の中央値」という切り口に注目します。この切り口を軸に、2025年度・2026年度の上振れ候補企業を整理すると、建設、電気機器、不動産、ガス、情報サービスの主力銘柄が該当します。

次いで、「関税・為替のマイナス影響等を除くと、値上げ・数量効果による増益寄与が優勢」という切り口に注目します。足元では為替や関税により利益が下押しされていますが、これらの影響が一巡・剥落した場合、数量・価格効果によって増益が見込めると試算される企業を整理すると、データの特性上、輸出型の製造業が多くなりがちなものの、化学、電気機器、自動車といったセクターで比較的多くの企業が該当します。

足元は為替・関税で利益が下振れているものの、悪影響一巡後は数量・価格効果で増益が可能と試算される企業
銘柄コード 銘柄名 今期 今期経常増益率 24年度上期営業利益 利益寄与:数量 利益寄与:販売価格・ミックス 利益寄与:為替 利益寄与:関税 利益寄与:操業度・材料費 利益寄与:販管費・固定費・経費 利益寄与:人件費 利益寄与:その他 25年度上期営業利益
(%) 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円 10億円
3580 小松マテーレ 2026.3期 12.8 1.2 -0.1 0.4 0.0   0.2     -0.3 1.4
4091 日本酸素ホールディングス 2026.3期 19.9 45.1 -4.5 5.8 -3.9         6.1 48.6
4203 住友ベークライト 2026.3期 25.5 15.8 2.0 1.1 -0.3       -1.5 0.0 17.1
4410 ハリマ化成グループ 2026.3期 88.0 1.3 2.8   -0.1   -1.9 -0.4   0.0 1.6
4471 三洋化成工業 2026.3期 7.0 4.5 -1.2 1.1 -0.3   1.3 -1.1   0.0 4.3
5202 日本板硝子 2026.3期 黒字 10.2 0.3 5.7 -1.0   -0.9 -2.3   0.0 12.0
6454 マックス 2026.3期 19.5 7.4 2.9 0.7 -0.4   0.3 0.8   -2.2 9.5
6472 NTN 2026.3期 84.7 9.9 -6.7 3.0 -0.5 -1.0 4.5 2.7 -0.4 1.4 12.9
6503 三菱電機 2026.3期 12.1 176.6 20.0 18.0 -15.0 -3.0 6.0     21.7 224.3
6504 富士電機 2026.3期 5.7 40.3 10.6 2.5 -0.4   -2.8 -2.1 -5.4 0.1 42.8
6506 安川電機 2026.2期 -33.8 22.9 1.5 4.1 -2.6 -0.9   -1.6   -0.1 23.3
6645 オムロン 2026.3期 89.8 19.2 12.2 -0.6 -1.6 -1.2   -6.1 -0.6 -3.6 17.7
6762 TDK 2026.3期 10.1 133.3 64.3 -27.2 -9.2   7.2 -20.6   -0.2 147.6
6976 太陽誘電 2026.3期 63.0 3.1 5.7 -1.0 -0.5   0.2 -1.6   0.0 5.9
6981 村田製作所 2026.3期 -2.8 158.2 83.0 -56.0 -15.0   21.0 -18.0   -8.1 165.1
6995 東海理化電機製作所 2026.3期 0.7 18.5 4.0 1.2 -0.9   3.1 -5.0   -0.9 20.0
7201 日産自動車 2026.3期 赤字 32.9 61.7 -6.3 -64.5 -149.7 -19.3 22.8   94.7 -27.7
7203 トヨタ自動車 2026.3期 -25.5 2,464.2 310.0 130.0 -390.0 -900.0 -70.0 -175.0 -80.0 716.4 2,005.6
7259 アイシン 2026.3期 34.1 56.1 38.9 -17.1 -5.8 -19.4 8.0   -9.7 45.0 96.0
7282 豊田合成 2026.3期 15.9 28.8 7.7 -5.9   -0.6 0.6 -2.7 -3.0 8.0 32.9
7701 島津製作所 2026.3期 -2.6 30.2 3.9 4.2 -0.8 -1.7 -0.8 -1.7 -3.6 1.9 31.6
7971 東リ 2026.3期 -0.3 1.0 1.0 0.9     -0.4 -0.9 -0.3 0.2 1.4

(注)対象は2025年10月1日から2025年11月7日までに決算を公表した企業で、営業利益の要因分解を開示している95社。前年比増減益を数量要因、価格要因、為替要因、原材料価格要因、販管費・固定費要因、人件費要因などに分類、各社の表記は必ずしも一致しないが野村で分類し直して集計。その中で、2025年度上期は為替・関税が減益要因となっている企業か2025年度経常減益予想の企業のうち、2025年度上期の要因分解では数量・価格効果がコスト増等を上回り、為替・関税等の下押しが一巡すると増益が展望しやすい企業を抽出。コンセンサスはQUICKコンセンサス(東洋経済予想で補完)。2025年11月7日時点。
(出所)QUICK、東洋経済新報社より野村證券市場戦略リサーチ部作成

(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

編集元アナリストレポート

日本株メモ:上期決算は上振れ優勢で終盤へ – 26年度大幅増益への確度をやや高める内容(2025年11月10日配信)

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

ページの先頭へ