2025.11.28 NEW

10月以降の日経平均株価乱高下を振り返る 「4つの心配」のうち3つはクリアされたとみる理由 野村證券・池田雄之輔

10月以降の日経平均株価乱高下を振り返る 「4つの心配」のうち3つはクリアされたとみる理由 野村證券・池田雄之輔のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

10月以降、特に11月に入ってからは、世界的に株式市場が不安定化し、特に日経平均株価の乱高下がみられました。野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔は、その背景に「4つの心配」があったからだと考えます。「4つの心配」それぞれについて考察し、そのうち3つがクリアされたとみる理由について解説します。

10月以降の日経平均株価乱高下を振り返る 「4つの心配」のうち3つはクリアされたとみる理由 野村證券・池田雄之輔のイメージ

11月に入ってから、世界的に株式市場が不安定化しましたが、その背景に「4つの心配」があったと見ています。

(1)株高ペースが速すぎる?

(2)AI株が買われすぎている?

(3)12月のFRB利下げはない?

(4)米国の年末商戦はどうなる?

という心配です。

このうち1~3はすでにクリアしていると見ており、残るは、米国の年末商戦です。1~3がどのようにクリアしているのか、順番に見ていきます。

株高ペースは速すぎた時期もあったが、解消している

まず株高ペースが速すぎたという点ですが、こちらをご覧ください。

アナリスト個別予想を足しあげた「日経平均ターゲット」と現実の株価

10月以降の日経平均株価乱高下を振り返る 「4つの心配」のうち3つはクリアされたとみる理由 野村證券・池田雄之輔のイメージ

(注)日経225構成銘柄を対象に12ヶ月先の目標株価を集計。
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

グレーの線は、日経平均株価を構成する225銘柄についてアナリストの個別株予想を足しあげて計算した「日経平均ターゲット」です。通常、実際の日経平均株価は、ターゲットを下回っているのですが、今回は「ターゲット追い越し」が発生してしまいました。これは2013年以来のことであり、株価上昇ペースが速すぎたことが分かります。

ですが、すでにアナリストの個別株予想の上方修正が続いている結果、ターゲットは現在が53,800円と、実際の株価を上回っており正常な状態に戻りました。株価の上昇スピード調整がすでに行われたと見ていいと思います。

AI関連銘柄の買われ方については韓国株が目安に

次に、AI関連銘柄が過度に買われているのではないかという心配については、その判断の目安として韓国株を参照しています。韓国株は半導体関連の比重が高く、AIテーマが盛り上がる局面で物色されやすいという特性があります。そこで、以下の図表では、海外投資家が韓国株をどの程度買い越しているかを確認しています。

海外からの「韓国株買い」とグローバルAI指数リターン

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(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

相場が加速する直前の8月末を基準とすると、累計の買い越し額は100億ドルに達したものの、その後は徐々に取り崩されました。11月24日時点では、ほぼ売り越し尽くした格好です。AI関連株の利益確定が十分に進んだとみられ、過熱感はいったん解消されたと判断する目安になりそうです。

12月利下げ期待が復活し、米国株はV字回復

3つ目は、米国の12月の利下げ期待です。10月、FRBが25bp(ベーシスポイント)の政策金利引き下げを決定した後、それが継続するのかどうかについて市場の関心が集まっていました。

12月利下げ織り込みと、S&P500の推移

10月以降の日経平均株価乱高下を振り返る 「4つの心配」のうち3つはクリアされたとみる理由 野村證券・池田雄之輔のイメージ

(注)利下げ織り込みは先物金利より算出
(出所)ブルームバーグより野村證券市場戦略リサーチ部作成

こちらを見ますと、12月FOMCに対する利下げの織り込みは10月半ばでは100%を超えていました。一部には利下げが25bpではなく50bp行われるのではないかという見方があったためと思われます。

しかし、10月29日のFOMCで一変します。FRBは利下げを決定したものの、後の会見でパウエル議長が12月の追加利下げについて「ほど遠い」といって、期待に冷や水を浴びせました。急速に利下げ織り込みが下がり、同時に株安も進んだことが分かります。

しかし先週、さらにその情勢が逆転しました。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が「近いうちに追加の余地がある」と発言し、12月利下げを示唆したと市場に理解されました。これが、「利下げ期待」と株価のV字回復につながっています。

米国の年末商戦に注目

米国では11月27日が感謝祭、28日がブラックフライデーであり、年末商戦はいよいよ大一番を迎えます。ブラックフライデーは、小売店にとって最も重要な商戦の幕開けです。全米小売協会は、11月・12月全体の小売売上高が前年比+3.7%~4.2%と、2024年の同+4.3%をわずかに下回るものの堅調を予想しています。

ここで重要なポイントは年末商戦に関税の影響がどの程度出てくるのかということでした。関税の影響が大きく、値下げができないとなると、消費ムードが盛り上がらないということが考えられます。しかし今のところ各種の速報では、関税の悪影響もなく例年通りの値下げペースになっていることが読み取れて、順調な滑り出しとみられます。

トランプ政権が年末商戦に大きく影響する品目については関税を除外している、あるいは関税の対象になっていてもその前にある程度の在庫を確保できているということが考えられます。

もう一つの好材料として、ガソリン価格が足元で下がっているということもあります。米国の家計にとっては、ガソリンに使わなくて済んだ分が年末商戦に回されるということが考えられます。また政府封鎖が年末商戦前に終了し、フライトのキャンセルなどが商戦に水を差すという悪いシナリオがなくなったことも良かったと思います。

年末商戦が堅調であれば、4つの心配はすべてクリアすることになります。野村證券は、年度末までに日経平均は53,000円台の高値更新に再挑戦、という展開を見込んでいます。

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野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔
1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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