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2026.01.08 NEW

中国の対日輸出規制強化 レアアースが含まれても経済的損害は限定的か 野村證券・岡崎康平

中国の対日輸出規制強化 レアアースが含まれても経済的損害は限定的か 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

中国政府が、日本向けの軍民両用(デュアルユース)品目について輸出管理を強化すると発表しました。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平は、輸出管理の実態的な運用次第で経済的影響は変化しうるとみています。以下で詳しく解説します。

中国の対日輸出規制強化 レアアースが含まれても経済的損害は限定的か 野村證券・岡崎康平のイメージ

日本向け軍民両用製品の輸出管理を強化

中国政府の告示は「日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事力向上に寄与するその他の最終ユーザーに対し、すべての軍民両用製品の輸出を禁止する」(野村證券による抄訳)という簡潔な内容です。ただし、「軍事ユーザー」「軍事用途」「その他の最終ユーザー」について具体的な定義が示されておらず、対象品目も明記されていません。

対象品目については、中国政府が2024年11月に公布した「両用品目輸出管理リスト」(以降は「管理リスト」)が参照される可能性があります(同リストは2026年版が2025年12月31日に公表されています)。このうち特に品目数が多いのは「1.特殊用途材料と関連設備、化学製品、微生物及び毒素」で、レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)が含まれます。

管理リストに元素名が記載されるレアメタル・レアアースを確認すると、一部品目は日本の対中輸入依存度が高いものの、それらが今回の輸出管理強化の対象になるかは現時点で判然としません。現状では、潜在的にリスクがある品目として注視しておくのが妥当です。強いて言えば、航空・宇宙・軍事分野や原子力関連の用途がある元素は、輸出管理が強化されやすいと考えられます。

日本経済への短期的な影響は不透明

輸出管理の実態が不透明である以上、現時点では日本経済へのマクロの影響は見通しにくい状況です。レアアースに議論を絞れば、2010年に中国がレアアース禁輸に踏み切った際の経験が一定の参考になりますが、当時は禁輸期間が短かった(2~3ヶ月程度)こともあり、国内の製造業活動に甚大な被害は生じませんでした。また、2010年のレアアース禁輸措置以降、日本企業の対応策(備蓄や代替材料の活用)が進んでいること、中国以外からの調達が可能な品目は代替が進む可能性があることなどを踏まえると、レアアースに限定した場合の経済的損失は相対的に限定的になるとみられます。

むしろ短期的な注目点は、今回の輸出管理強化が高市早苗首相の支持率にどのような影響を与えるかです。2025年11月の台湾に関する発言後も、高市内閣の支持率は70%強で推移しており、目立った低下圧力は確認できません。もっとも、中国人訪日客の減少による消費や観光への下押し効果はこれから表面化するとみられます。そうなって初めて支持率に低下圧力がかかる可能性は否定できません。この点は、今後の各種世論調査の動向を見極める必要があります。

内閣及び自民党支持率の推移

中国の対日輸出規制強化 レアアースが含まれても経済的損害は限定的か 野村證券・岡崎康平のイメージ

(注)国内の代表的な世論調査の平均値を示したもの。直近データは2026年1月6日。
(出所)JNN、時事通信、NHK、産経新聞、共同通信、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、ANN、日経新聞資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

戦略的互恵関係のもとデ・リスキングへ

今回の輸出管理強化は、日本政府が経済安全保障の取り組みを一段と強化する動機になりえます。また、日本企業のデ・リスキング(リスク低減)も促されるでしょう。実際、日本の最大の輸入相手国は中国(2024年は構成比22.5%)であり、調達先のリスク分散が今後進む余地は相応にあります。日本は中国との戦略的互恵関係を前提としつつ、経済安全保障の強化に資する諸外国との経済関係を模索していくのではないでしょうか。資源外交の強化やグローバル・サウスとの連携が進むことで、日本の交易関係が広がる可能性も中長期的には考えられます。

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チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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