2026.01.13 NEW
高市政権「不意打ち解散」は攻めと守りの両面 株価上昇は続くのか、今後の注目点を整理 野村證券・池田雄之輔
撮影/タナカヨシトモ(人物)
2026年1月9日、高市早苗首相が衆議院解散を検討していることが報じられ、連休明け1月13日の日経平均株価は史上初の53,000円台をつけるなど、大きく市場が動きました。今後、マーケットへはどのような影響があるか、野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔が解説します。

解散の事情が攻めか守りかでインプリケーションは異なる
読売新聞は1月9日23時13分頃、「高市首相が衆院解散を検討、23日通常国会の冒頭に…2月上中旬に投開票の公算」と報じました。他メディアも追随しており、ほぼ既定路線と化しています。
市場では従来、高市首相は政策実現を重視しており、解散は最速でも予算成立後の3月下旬ないし、「骨太の方針」を決めてからの通常国会閉会直前の6月下旬の解散という見方が優勢でした。特に、通常国会の召集日が1月23日と遅めに設定されたことで、「この日程で冒頭解散すると、予算の年度内成立は難しい。よって1月解散はない」という見方を広めていました。
「不意打ち解散」に高市首相が打って出る事情が、攻めの要素なのか守りの要素なのかによって、インプリケーションは異なります。高市首相が勝算ありとして「攻めの解散」に出る理由としては、
(1)韓国大統領との会談(13日、奈良)による支持率の一層の上昇が見込める
(2)野党の選挙態勢(統一候補の調整)が整っていない
(3)株価が史上最高値を更新するなど市場の評価をアピールできる
といった点が挙げられます。
逆に、解散が遅くなり負け戦を強いられることを回避するための「守り」の理由としては
(ⅰ)4月の米中首脳会談の直前にセットしたい日米首脳会談では、「まだ国政選挙を戦っていない首相」と見られると交渉力が弱まるおそれがある
(ⅱ)中国のレアアース輸出規制が長期化すると、春以降の日本経済に打撃が及び得る
(ⅲ)一般論として、時間の経過とともに失言やスキャンダルによって政権支持率が低下するリスクを抱えている、などです。
当然、攻守両面を考えての1月解散ではあるでしょうが、より「攻め」の要素が強いほど自民党勝利の可能性は高く、逆に「守り」のために選挙を急いでいる場合ほど、自民党敗北の可能性を抱えていることになります。なお、(ⅰ)については、トランプ大統領が安倍首相をリスペクトしていた理由の一つが、国政選挙での強さだったためです。
市場では株高の反応が目立つ
市場の反応としては、第一報が伝わった9日の米国市場では、日経平均株価先物が53,500円超まで急騰、ドル円は158円台乗せ(円安)、JGB(日本国債)先物は直近安値を更新という、「株高・円安・債券安」の典型的な「高市トレード」となりました。
とりわけ目立つのが株高の反応です。週明け13日の市場反応は、日経平均株価は前日比868円高で寄り付き後、一時1,800円超の上げとなり、53,800円超まで上昇しました(13日9:10までのマーケット反応)。ドル円相場は引き続き158円台で推移しています。
先行きの注目点としては、
(1)早期解散説および日韓首脳会談を踏まえた内閣および自民党支持率の行方
(2)高市首相の為替相場へのコメントおよび円買い市場介入への距離感
(3)日本銀行の追加緩和についての首相の姿勢
(4)選挙後の自民-国民民主の連携の可能性
などがあります。
(4)については、「連立可能性大」との見方になった場合、財政スタンスが強まる=金利上昇という反応が表れやすくなりそうです。早期解散は、支持率が伸び悩んでいる日本維新の会にとってはメリットが小さいだけに、自民-国民の連立の思惑はくすぶり続ける可能性があります。国民民主党が選挙戦を通じて「年収の壁引き上げ」の成果に焦点を絞るのか、自民が呑みにくい「消費税率引き下げ」を再度主張するのか、というポイントは市場インプリケーションに大きな違いをもたらし得ます。
前者の場合は、適度な積極財政=株高メイン、後者の場合は景気過熱懸念=金利高メインの相場展開が想定しやすいです。この間、物価高抑制の観点から、円安に対しては口先介入によるけん制が続くでしょう。
- 野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔 - 1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。