2026.01.14 NEW
FRBパウエル議長捜査、金融政策への影響は 逆説的に米国利下げが遠のく可能性も 米国野村證券・雨宮愛知
撮影/タナカヨシトモ(人物)
米国株式市場では、金融政策の行方が大きな関心事となっています。現在のFRB(米連邦準備理事会)議長であるジェローム・パウエル氏は2026年5月に議長の任期を終えますが、トランプ大統領は利下げを急ぐべきだという発言を繰り返しており、次の議長人事に関心が集まっていました。そして1月11日、パウエル議長は、米検察当局がパウエル議長への捜査に着手した件について動画にて声明を発表しました。本件の金融政策などへの影響について米国野村證券シニア・エコノミストの雨宮愛知が解説します。

- 1月11日、パウエル議長は、米検察当局がパウエル議長への捜査に着手した件について動画にて声明を発表しました。これは金融市場にどのような影響があるのでしょうか。
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今回の捜査は、パウエル議長がFRBオフィスビルの改修工事について、議会で虚偽の証言をしたという疑いがかけられているというものです。パウエル議長は動画で、この件はあくまで口実であり、「FRBがトランプ氏の意向に沿って利下げを決定しなかったことが背景にある」と強い口調で述べました。こうしたビデオメッセージを公開すること自体が異例であり、パウエル議長が強硬姿勢に出ていることがわかります。
これを受けて、米国株式市場では1月12日には、株安・債券安・ドル安のトリプル安が進みましたが、その後大きな動きとはなっていません。
しかし今回のパウエル議長の捜査は、今後の金融市場に長期的な影響を及ぼす可能性があると考えられます。トランプ大統領はメディアの取材で金融政策との関連性を否定しているものの、FRBに対して利下げを求める圧力を強めたため、パウエル議長の態度が硬化したと見る向きもあります。
パウエル議長は5月で議長の任期が切れますが、FRB理事職としては任期が残っており、FRBのメンバーとして残る可能性があります。また、FOMC(米連邦公開市場委員会)の参加者が金融政策の政治的独立性の危機を強く感じた場合、トランプ政権からの金融緩和圧力に屈したとみられるのを避ける目的で、あえてタカ派的な姿勢をとる可能性もあると思います。新FRB議長がどれほどトランプ政権寄りの人物になったとしても、金融政策はFOMCメンバーの多数決で決定しますから、今回の事件の結果として、トランプ政権が求める利下げの方向には動きにくくなった可能性があります。
- 2026年はFRB議長が交代になるということで、トランプ政権の主張である政策金利の引き下げの方向に動くと予想している投資家は多いと思います。これが崩れることが考えられますか。
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そうですね、トランプ政権による政治的な圧力が強ければ強いほど、逆説的に利下げが遠のくことも考えられるわけです。逆にトランプ政権の要求を受け入れすぎて、利下げがどんどん進む決定がなされるようであると今後は物価の番人である中央銀行としてのFRBの信認が低下し、さまざまなアセットに関して「米国売り」が加速する恐れがあります。このどちらかの方向に進む可能性があるかどうか、米国金融市場は慎重に見極めようとしていると思います。
- 2025年は3会合連続で利下げが決定され、順調に緩和方向に進んでいるように見えたのに、ここでまたFRB議長が硬化するような事態になるというのが意外に感じられます。
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それだけ、中間選挙に向けてトランプ政権の支持率が厳しく、課題が多いということでもあります。トランプ大統領は9日に、クレジットカード金利の上限を10%に設定するよう求めると表明し、手ごろな価格を意味する「AFFORDABILITY!!」(アフォーダビリティ)という言葉を付け加えました。このように、人々の暮らし向きがよくなり支持率が上がるためなら何でもやりたいというトランプ大統領の焦りが透けて見えている気がします。しかし、金融政策については圧力をかけすぎてもFRBが硬化して金融政策がタカ派化するか、逆にFRBの信認が低下して「米国離れ」が進んでしまうか、どちらにせよ米国経済にとってはプラスに働かない可能性もあります。
野村證券は米国経済について、2026年も力強く加速すると予想していますが、そのなかでFRBの信認低下はリスクとなり得るため、注意深く見ていきたいと思います。
- 米国野村證券 シニア・エコノミスト
雨宮 愛知 - 2001年野村総合研究所入社。2004年より野村證券金融経済研究所経済調査部。2009年より米国野村證券(ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル)に勤務。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。