2026.01.16 NEW

解散総選挙後、高市トレードはどうなる? 4つのシナリオ別に株式市場への影響を解説 野村證券・岡崎康平

解散総選挙後、高市トレードはどうなる? 4つのシナリオ別に株式市場への影響を解説 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

2026年1月23日召集の通常国会で、早期に衆院が解散されると報じられています。解散風が政界に吹くなか、立憲民主党と公明党が新党「中道改革連合」を結党するなど、様々な動きが出ています。政治情勢が複雑化するなか、高市早苗政権の経済政策「サナエノミクス」の今後に注目が集まっています。解散・総選挙は、相場上昇が続いた株式市場にとって曲がり角になるのでしょうか。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が、シナリオ分析に基づいて株式市場への影響を解説します。なお、野村證券では選挙結果そのものについての予想は一切行っていません。

サプライズ解散と複雑化する選挙情勢

高市首相が早期に衆院解散・総選挙に踏み切ると伝わっています。

このタイミングでの解散・総選挙は、金融市場にとってサプライズでした。もちろん、2026年中に解散・総選挙が行われる可能性は高いとみていましたが、個人的には2026年の夏ごろとおぼろげにイメージしていました。大手メディアの報道でも、解散総選挙は最速でも4月との見立てが多かっただけに意外感のある展開です。

とはいえ、1月の衆院解散・2月の総選挙というタイミングには納得感もあります。政権与党のパートナーが公明党から日本維新の会に変化していますし、「責任ある積極財政」という政策枠組みも提示されました。早期に解散・総選挙が行われ国民に信を問うことは、自然なことと言えます。電気代・ガス代の引下げといった物価高対策の成果、南鳥島のレアアース探査船の出航、韓国・イタリアとの首脳会談などもあり、サナエノミクスの成果・取組みを有権者にアピールしやすい時期という考慮も働いたかもしれません。

ただ、選挙情勢は複雑化しています。最大野党の立憲民主党が、公明党と新党結成で合意したからです。公明党は2025年10月まで与党の座にあり、過去の選挙では自民党と協力関係にありました。こうした地殻変動が次回選挙の行方を見通しにくくしています。特に小選挙区において、与野党の攻防を注視する必要があるでしょう。

総選挙で予想される4つのシナリオと株式市場への影響

選挙結果次第では、株式市場への影響も大きくなりそうでしょうか。

野村證券では選挙結果について一切予想はしていませんが、大きく4つのシナリオが考えられます。シナリオ次第で、株式市場の反応は変わるでしょう。

4つのシナリオ(現在の自民系会派の議席数は199、衆院定数は465議席:2025年11月28日時点)

(1)自民党単独で絶対安定多数(※)の261議席を獲得

(2)自民党単独で過半数の233議席を獲得

(3)自民党の議席数は増えるが単独で過半数を下回る

(4)自民党の議席数横ばい、または減少

(※)絶対安定多数:衆院のすべての常任委員会で委員長ポストを独占し、かつ、委員会委員の過半数確保できる議席数。

(1)は、株式市場にとってベストシナリオでしょう。自民党の大勝は、高市首相の掲げる政策やこれまでの成果に対する有権者の支持の高さを意味します。政権運営の安定性が高まることから、株式市場はポジティブに反応すると考えられます。直ちに追加的な財政政策が策定・発動される可能性は低いですが、例えば2026年度の補正予算策定など、やや長い時間軸で機動的な財政政策に対する期待が高まる可能性があります。

(2)は、連立相手である日本維新の会との合計議席数で261議席に届くシナリオです。株式市場への影響は(1)と大きくは変わらないものの、政権運営における日本維新の会の重要度が高まるとみられます。維新の会が重視する副首都構想や社会保障改革、議員定数の削減などについて、より政策実現に向けた動きが活発化する可能性があります。

(3)は、自民党が単独で過半数を下回るシナリオです。この場合、株式市場はネガティブに反応するでしょう。というのも、解散風が吹き始めて以降、日本株市場は相場上昇が続いてきました。「選挙は買い」という相場のアノマリーに沿った動きです。選挙を通じた様々な変化(たとえば経済政策の変化)に対する「期待感」が相場を盛り上げるわけですね。こうした期待のなかで、自民単独の議席数が過半数を下回る場合、解散・総選挙前と政治の風景が大きく変わらないことになります。この場合の相場展開には注意が必要でしょう。

通常であれば、こうした場合は政府が追加的な財政政策を講じる展開が考えられます。しかし、解散・総選挙を通過した後の国政選挙は(追加的な解散・総選挙がない場合)2028年夏の参院選まで予定されていません。為替相場が1ドル=160円を窺う展開のなか、追加的な財政政策が講じられる可能性は必ずしも高くありません。

(4)は、自民党が議席数をまったく増やせない、あるいは減らした場合です。政治的安定性の確立が遠のいたとの評価から、株式市場はネガティブに反応するとみられます。政府の経済政策がどのように実現されていくかについても、先行き不透明感が強まるでしょう。外交活動にも影響が出るかもしれません。

解散・総選挙を巡るニュースが伝わった後、株式市場では株価が大きく上昇し、外国為替市場では円安・ドル高が進む場面がありました。(1)や(2)の見方は、すでに金融市場に織り込まれているのでしょうか?

株式市場と外国為替市場では、やや織り込みに差があるように思います。株式市場は、「選挙は買い」とのアノマリーから相場が上がってきました。(1)や(2)のシナリオが一定程度織り込まれていると言って良いでしょう。ただ、特に(1)のシナリオが実現した場合は、追加的に株高となって不思議ではありません。世論調査に反映されていた高市内閣の高い支持率が、政策運営に直接的に影響する議席数にも反映されれば、政策実行力の向上を株式市場が好感するとみられます。戦略17分野に関する「官民投資ロードマップ」策定に一段と注目が集まったり、その内容が拡充されたりするなどの展開も考えられるでしょう。

一方、外国為替市場は、株式相場に比べ織り込みが抑制的と思います。というのも、すでに1ドル=160円を目前に控えた円安ドル高水準に対して、為替介入に対する警戒が強まっているからです。ベッセント米財務長官も片山さつき財務相に「過度な為替の変動は望ましくない」と語るなど、日米の金融当局は急激な円安・ドル高に対する懸念を強めています。

円安ドル高が進むほど日本銀行に対する利上げ見込みも強まっており、為替レートの変動を一部相殺している面もあります。追加的な財政支出の可能性も限られるなか、円安ドル高には一定の歯止めが掛かった状態が続くとみています。

今後の注目点は

今後はどんな点に注目して政治関連ニュースを見ればよいでしょうか。

どのシナリオが実現するかで株式市場への影響は変わりますので、各報道機関による選挙情勢の調査などをしっかり確認することが大切です。現状では政府・与党側から解散・総選挙で信を問う理由として「連立の大義」「責任ある積極財政」「安全保障政策」などが挙げられていますが、このほかに何が争点として浮上しそうかも見極めたいところです。

また、立憲民主党・公明党による新党の影響力や得票数については、ある程度冷静に見ておく必要があります。選挙情勢次第ではあるものの、これまでのいくつかの選挙で明らかになったように、近年は右派的な政治勢力が得票数を大きく伸ばしているからです。立憲民主党と公明党は新党結成にあたり「5本の柱で合意した」と伝わったものの、具体的な政策についてはまだ十分に議論されていない印象です。今後、国民にどんな政策を訴えていくのか、注目すると良いでしょう。

チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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