2026.01.23 NEW
「名目成長率>名目金利」を背景に、「金利上昇で株安」は回避へ 野村證券ストラテジストが解説
「米国のトリプル安」は深刻化しないケースが多い
トランプ米大統領の就任1周年に当たる2026年1月20日、グリーンランド問題や米欧の関税応酬への懸念を背景に、米ドル安・米国株安・米国債安が同時に進む「米国トリプル安」となりました。ただし、1980年以降、米国トリプル安は258回発生しており、珍しい現象ではありません(年4〜5回程度の頻度です)。また、「米国トリプル安」を境に日米の株価指数が下落局面に移行する傾向も見られません。その後も、1月22日早朝に関税発動の延期で株高になるなど、トランプ氏の動きは速く、専門家でも予見が難しい局面が多くなっています。
(注)1980年以降で、S&P500の下落、米10年国債利回りの上昇、ドル指数(DXY)の下落が同時に起きた258サンプルを縦線で表示。
(出所)S&P、JPX総研、Bloombergより野村證券市場戦略リサーチ部作作成
「G>R」環境を背景に日本株の上昇基調が続くとみる
もっとも、今回の米国トリプル安の要因の一つとして、日本の財政への懸念が挙げられました。1月19〜20日は日本でも長期金利が上昇し、株安(特に銀行株安)となったため、「日本でも金利上昇が株安につながる」との見方が広がりやすい状況でした。ただ、ならしてみると、依然として「金利上昇&株高」「金利低下&株安」の傾向が強い印象です。
2026年の名目GDP(国内総生産)成長率が前年比+3%台前半と見込まれる中、10年国債利回りが2%台半ばであれば、「G(名目GDP成長率)>R(名目長期金利)」という関係は崩れにくいと考えられます。一方、10年国債利回りが3%に接近すると、「G>R」が成立しにくくなるとの懸念が台頭しやすく、ソブリン(政府債務)格付けの判断にも影響し得ます。野村證券が日本株の上昇基調が続くとみているのも、「G>R」環境が一因です。インフレ局面で財政拡張志向を主要政党が掲げ、世論が支持する政治経済環境では、基調として「G>R」が定着しやすい点を重視しています。
(注)国内株式はTOPIX(配当込み)、国内債券はNOMURA-BPI総合。2026年1-3月期以降のG-Rは野村證券経済調査部予想(2026年1月16日時点)。
(出所)内閣府、Bloomberg、NFRCより野村證券市場戦略リサーチ部作成
インフレにより、従来のバリュエーション基準がシフトする可能性も
インフレ基調が続くと、従来のバリュエーション(投資尺度)の基準がシフトする可能性もあります。すでに「配当利回り<長期金利」となっていますが、配当が安定的に成長するとの期待を伴い、この状態が定着する方向で見ています。足元のイールドスプレッド(株式益回りと長期金利の利回り格差)はおおむね適正水準とみていますが、インフレ局面では、さらに低い水準が容認される可能性もあります。
(注)益利回りは12ヶ月先予想(野村アナリスト予想、東洋経済予想で補完)。CPI前年比の過去3年移動平均が+1%以上のケースをインフレ局面、0%未満のケースをデフレ局面、0~+1%のケースをディスインフレ局面とした。
(出所)JPX総研、東洋経済新報社、Bloomberg、IMF、総務省より野村證券市場戦略リサーチ部作成
また、2025年以降は、日本国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが拡大した局面で、株式のイールドスプレッドが縮小するなど、国債が相対的に信認を失う一方で、株式のリスクプレミアム(リスクに応じた上乗せ)が低下しているとも解釈できます。
なお、1月20日付で、トップダウンのセクター判断として銀行を注目セクターから除外し、金融内の相対的な割安感などを踏まえ、保険をタクティカル(戦術的)な観点から注目セクターに引き上げました。
消費税減税期待で動いたのは食品スーパーのみ
食品向けの消費税減税観測を背景に、1月19〜20日は小売・食品、特に食品スーパーがアウトパフォームしましたが、1月21日には勢いが止まりました。このほかの消費関連テーマは動きが鈍く、波及効果への期待は高まっていないようです。
野村證券のアナリストによる定性評価では、仮に食品向けの消費税率引き下げが実施された場合、食品セクターにはややプラスですが、中長期の成長期待を高める内容ではない、というのが全体感です。小売セクターでも食品小売にはプラスですが、それ以外への波及は見極めが必要としています。
(編集:野村證券投資情報部)
編集元アナリストレポート
日本株ウィークリー – 堅調な金融経済vs悲観的なIMFvsトランプ氏(2026年1月22日配信)
(注)各種データや見通しは、編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。画像はイメージ。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。