2026.01.27 NEW

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

AI向けデータセンターへの過剰投資が懸念される一方、AIを搭載し、自律的に行動する産業用ロボットなどの「フィジカルAI」が市場の関心を集めています。フィジカルAIについて、智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジストの大川智宏さんは「想像以上に大きな話になるのではないか」と予想し、日本の強みが発揮できる領域と期待します。注目する理由や生成AIとの違い、関連銘柄について聞きました。
(本コラムは、2025年12月24日に収録した、マーケット解説動画(特別対談「大川智宏氏に聞く 2026年のNISA戦略」)の内容を再構成したものです)

※「プロの銘柄選び」は、野村證券以外に所属するストラテジストなどの専門家が着目する銘柄を、それぞれご紹介する記事です。(野村證券の意見を代表するものではございません)

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ

製造業大国・日本、フィジカルAIで強みを発揮できるか

2026年の日本株を占う上で注目するテーマは何でしょうか。

日本株の成長性については、私はこれまで懐疑的に見てきましたが、そんな私でも「フィジカルAI」は、強気になれる熱いテーマだと思っています。フィジカルAIとは、AIが機械やロボットを制御して作業を実行するものです。文章や画像を作成する「生成AI」との違いを下の図表にまとめています。機械やロボットにAIが搭載されるということは、単に技術が一歩進んだというだけの話ではありません。

生成AIとフィジカルAIの違い(イメージ)

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ

(出所)智剣・Oskarグループ作成

製造業大国の日本にとっては、フィジカルAIは強みを発揮できる領域だと考えています。例えば、トヨタ自動車(7203)は高度経済成長期を経て、世界一の自動車メーカーとなりましたが、その過程では、生産や制御技術、効率化や不良品の削減といった一連の工程を徹底して磨いてきたからこそ、クオリティと価格競争力が生まれました。そのような経験と実績が、日本にはあります。フィジカルAIはアニメやゲームなどと並ぶ、日本が世界で戦っていける分野になるのではないかと思います。

製造業は日本のお家芸とも言われますよね。株式市場はフィジカルAIについて、どう評価しているのでしょうか。

実際、フィジカルAIへの期待は、株価にも表れ始めているかもしれません。2025年9月から12月の日本の大手工作機械の株価の推移を見ると、12月に入り、株価は急上昇しました。米半導体大手エヌビディアとフィジカルAIの領域で協業するファナック(6954)は、12月初旬に国内の展示会でAIを搭載したロボットを公開しました。これが大手工作機械の株価上昇の要因の一つとなりました。

日本の大手工作機械の株価の推移(期間:2025年9月15日~12月15日)

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ

(注)大手工作機械はファナック、安川電機(6506)、川崎重工業(7012)、ナブテスコ(6268)の4社を対象としている。2025年9月15日の4社の株価合計を1として算出。株価は日次終値ベース、直近値は2025年12月15日。
(出所)LSEG Workspaceのデータより智剣・Oskarグループ作成

日本株式市場に占める産業用装置・製造用機械の時価総額割合は2025年11月末現在で1割程度を占めており、今後、その割合が2割、3割と拡大していくかもしれません。

日本株市場に占める産業用装置・製造用機械の時価総額割合

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ

(注)上場企業のうち、産業用装置・製造用機械銘柄の時価総額の割合。月次で、期間は2004年12月末~2025年11月末。
(出所)QUICK、LSEG Workspaceのデータより智剣・Oskarグループ作成

日本のフィジカルAI関連企業は

具体的にフィジカルAI関連銘柄として、どのような銘柄があるのでしょうか。

機械を活用してモノを製造する、または顧客向けにサービスを提供している会社は大小問わず、フィジカルAIを取り込めるチャンスがあると考えています。日本のフィジカルAI関連銘柄については、下の図表の通りです。日本の上場全銘柄のうち、時価総額が1,000億円以上で、2027年度まで2桁増益が予想される産業用装置・製造用機械銘柄を抽出しました。

日本のフィジカルAI関連企業の例
コード 銘柄名 時価総額
(億円)
日経NEEDS業種分類 コンセンサス予想
EPS成長率
2025年度 2026年度 2027年度
6857 アドバンテスト 155,182 半導体・液晶製造装置 80% 17% 14%
7011 三菱重工業 143,920 総合重機 12% 31% 14%
6268 ナブテスコ 4,781 油圧・空圧機器 51% 17% 12%
6406 フジテック 4,491 乗用昇降機 20% 17% 18%
6141 DMG森精機 3,891 工作機械 193% 22% 17%
6728 アルバック 3,438 半導体・液晶製造装置 20% 16% 17%
6134 FUJI 3,436 産業用ロボット 77% 14% 11%
6890 フェローテックHD 2,349 半導体・液晶製造装置 11% 18% 17%
6376 日機装 1,097 ポンプ・風水力機械 23% 10% 10%
7718 スター精密 1,071 工作機械 23% 38% 27%

(注)日本の上場全銘柄のうち、時価総額が1000億円以上で、2027年度まで2桁増益が予想される産業用装置・製造用機械銘柄を抽出。時価総額・コンセンサス予想は2025年12月15日時点。
(出所)LSEG Workspaceのデータより智剣・Oskarグループ作成

産業用ロボットの精密減速機で高いシェアを持つナブテスコ、工作機械のDMG森精機(6141)などはフィジカルAI関連で主要銘柄だと思います。半導体製造装置大手のアドバンテスト(6857)がこの表ではトップに位置していますが、半導体製造装置や検査装置を手掛けている企業は、フィジカルAIを活用し、業務を効率化させることで利益率が改善する可能性があります。

フィジカルAIは日本株の有望な投資テーマになる可能性も

AIへの過剰投資懸念も出てきていますが、AI関連銘柄を取り巻くリスクについてはどう見ていますか。

米マイクロソフトや米アルファベット傘下のグーグル、米メタ・プラットフォームズなどのハイパースケーラー(大手クラウド事業者)によるAI向けデータセンター投資は、確かに過剰投資だと思います。AI向けデータセンターは強者総取りのビジネスで、勝ち組と負け組が出てくるでしょう。このようなハイテク大手の株価は、期待先行で上昇してきましたが、「本当に儲かっているのか」といった投資の回収を見定めていく段階に入っています。

ただ、AIが社会に普及し尽くしたわけでは全くありません。これからAIを応用して、ソフトウエアや機械といった領域に広がっていく段階です。そう考えると、裾野はまだまだ広がっていきます。そこは過剰投資懸念の議論と分けて考える必要があります。

電卓と紙で計算していた業務がパソコンに置き換わったように、AIもIT化の一環と捉えるべきです。AIの実用化が進む中で、日本の製造業の強みを活かすことができるフィジカルAIについては、成長力として長期的に日本を押し上げてくれるような分野になっていくのではないかと期待します。

※本コラムで取り上げられた大川氏のマーケットや投資に関する考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。本コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。

本コラムの内容等は野村證券において確認したものではなく、また、将来変更される場合があります。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

株式ストラテジスト・大川智宏さんが注目する「フィジカルAI」関連銘柄は?のイメージ
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
大川智宏さん
野村総合研究所、JPモルガン・アセットマネジメント、クレディ・スイス証券、UBS証券を経て、独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループ設立。専門は計量分析に基づいた日本株市場の予測、投資戦略の立案など。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、テレ東BIZ「モーサテわからん」、日経CNBC、ラジオNIKKEIなどの経済番組でコメンテーターを務めるほか、経済誌やウェブにて連載多数。

ページの先頭へ