2026.02.02 NEW

為替介入なし、次期FRB議長指名はウォーシュ氏の2つのサプライズ 野村證券・池田雄之輔

為替介入なし、次期FRB議長指名はウォーシュ氏の2つのサプライズ 野村證券・池田雄之輔のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

1月30日(金)に、日米の株式市場に影響を及ぼす2つのサプライズがありました。サプライズの一つ目は、次期FRB(米連邦準備理事会)議長がケビン・ウォーシュ元FRB理事と発表されたことです。二つ目は、財務省が公表した過去1ヶ月分の為替介入実績データが「0円」という結果だったことです。

これら2つの要因が重なり、米ドル円は1米ドル=153円から154円台後半まで上昇しました。金価格は「タカ派議長」への反応がとくに強く、29日の5,600ドル目前から30日の安値まで一時16%の急落を見せました。市場全体として「流動性相場が崩れる」という警戒がやや高まっています。野村證券・池田雄之輔が解説します。

為替介入なし、次期FRB議長指名はウォーシュ氏の2つのサプライズ 野村證券・池田雄之輔のイメージ

次期FRB議長はウォーシュ氏、どう見るか

1月30日、日本時間午前8時頃、次期FRB議長ウォーシュ氏が指名されるとの観測が強まり、米ドル高・金利上昇・株安の反応を示しました。

同氏の政策スタンスを相対的に位置付ければ、

(1)年末時点で最有力とみられ、「トランプ大統領の言いなり」とも揶揄されていたケビン・ハセットNEC(米国家経済会議)委員長よりは穏健な利下げ姿勢であり、FRBの独立性という点でもより安心感のある人選

(2)ただし過去2週間で急激に期待値が高まっていたリック・リーダー氏よりは、量的引き締めを志向するという点でややタカ派的

(3)パウエル議長の利下げが遅いと主張する一方、党派色が強く、共和党の伝統的な主張である「小さい政府、小さいFRB」を志向している

ということが言えると思います。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は社説で今回の議長人事を「正しい選択」と全面的に支持しています(1月30日付)

市場では、FRBが資産圧縮に動く=流動性相場が逆回転する、という警戒感が高まっています。しかし、野村證券のエコノミストは、実際にはそのような政策は実現しないとみています。その理由として、

(1)トランプ米大統領とベッセント米財務長官が目指しているモーゲージ金利の低下と国内投資の活性化に矛盾する

(2)ウォーシュ氏はFRBと財務省が協定を結ぶべきとしており、政権の方針に合わない大きな政策変更のリスクは小さい

(3)タカ派的な地区連銀総裁の影響力を落とすような組織改革を進める可能性がある

といった点が挙げられます。

為替介入は0円だった

同じく1月30日、日本時間午後7時に財務省が公表した過去1ヶ月分の為替介入実績データは「0円」という結果で、これもサプライズとなりました。(財務省は、過去1ヶ月分の為替介入金額を毎月公表しています。今回は2025年12月29日~2026年1月28日分)

1月23日に米ドル円が159円台から155円台まで急落したことをめぐっては、

(1)米ドル円の動きは過去の介入局面に遜色なかった

(2)NY(ニューヨーク)連銀がレートチェックを行った

(3)先週に入ってから公表された日次の日銀資金需給データには兆円単位の介入痕跡は表れていなかった

(4)ベッセント財務長官は28日に米国の為替介入を強く否定

という情報が積み上がっていました。「日本側の数千億円の介入実施+NY連銀のレートチェック」というハイブリッド型の介入は最後まで疑われましたが、公表結果は「介入なし」でした。

これに対する為替市場の初期反応は、「日本は本気で円安を止めようとしていない=円安」となりました。しかし、先行き「実弾介入がないにも関わらず米ドル円が急落したのは、金利差が効き始めたサイン」「日本は実弾介入を温存している」という見方にもつながるため、米ドル円の159円への全戻しの可能性は限定的だと思われます。

また、高市早苗首相は31日、衆院選の応援演説のなかで円安について「輸出産業にとっては大チャンス」「外為特会が今、ホクホク状態です」と発言しました。市場では「円安支持」との受け止めもありましたが、高市氏は1日に自身のXで『円安メリットを強調』した訳ではない」と解説しています。

日本は衆院選を控え、終盤情勢調査がメディアから相次ぐと予想されます。また米国の企業決算をめぐっては、AI関連で強弱材料が入り乱れている状態です。また、2月6日に米雇用統計が発表されます。引き続き、市場のボラティリティー(変動率)が高い状況が続くかもしれません。

為替介入なし、次期FRB議長指名はウォーシュ氏の2つのサプライズ 野村證券・池田雄之輔のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔
1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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