2026.02.06 NEW

生成AIからエージェントAIへ AI活用のトレンド変化を解説 野村證券・竹綱宏行

生成AIからエージェントAIへ AI活用のトレンド変化を解説 野村證券・竹綱宏行のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

AI活用のトレンドは、「生成AI」から「エージェントAI」に移っています。これまで人が行っていた一連の業務を、AIが代行することができ、生産性向上や業務の自動化が期待されています。さまざまな分野で活用が広がっているAI関連ビジネスの動向について、1月に米国のテクノロジー見本市「CES2026」に参加した野村證券投資情報部シニア・ストラテジストの竹綱宏行が、現地の様子を交えて解説します。

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エージェントAIの活用が本格化

2026年のAI分野の動向について教えてください。

ビジネスにおける「エージェントAI」の活用が本格化しています。エージェントAIは、人による最小限の指示を元に、高度なタスクをAIが自律的に実行する「便利なAI」です。自律型AIとも呼ばれます。

「生成AI」は、クラウド上のLLM(大規模言語モデル)を基盤に文章や画像を生成するAIです。生成AIを活用したChatGPTやグーグル検索のAIモードなどのチャットツール、また、ビジネスソフトの表記修正ツールなどが活用例で、AIエージェントとも呼ばれます。

それに対して、エージェントAIは、複数のAIエージェントやその他のツールを利用し、複数のタスクが絡む業務フローを自動化します。その結果、チームや事業部門など組織単位での業務を効率化し、働き方に変化をもたらしています。

また、自律的に稼働するAIロボットなどの「フィジカルAI」、クラウドを介さずに端末側でAI処理を行う「エッジAI」も注目されており、AIの活用の幅が広がっています。各種AIの定義や特徴などをまとめると、下の図表の通りです。オンライン販売やロボタクシーなどユースケースに応じて、各種AIが担う役割が変わってきます。

各種AIの定義・特徴とユースケース

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(注)全てを網羅している訳ではない。自動運転車は、現在ではレベル4(特定条件下での完全自動運転)のロボタクシーが米国の一部の地域で走行している。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

「CES2026」で注目を集めたエージェントAI

エージェントAIの活用が進むと、AI関連ビジネスはどう変わるのでしょうか。

「AIは儲かるのか」という懐疑的な見方もありますが、クラウドを基盤として「デジタル世界」で働く生成AIから、「現実世界」で働くAIへとシフトしていくと考えています。私は米国ラスベガスで2026年1月上旬に開催された世界最大のテクノロジーイベントである「CES2026」に参加しましたが、AIに関するトレンドの変化を現地で実感してきました。

2026年1月に開催された米国ラスベガスのテクノロジーイベント「CES2026」

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(出所)CTA、野村證券投資情報部撮影

CES2026では、どのようなテーマが関心事になっていたのでしょうか。

エージェントAIが主要テーマの一つでした。加えて、「AIがどこにでも」、「産業AI革命」、「フィジカルAI」、「エッジAI」といった標語が目につきました。これらは、いずれもエージェントAIと関連するものです。

半導体大手のインテルは「エッジの覚醒:エージェントAIがすべてを再構築する理由」や「エージェント解放:すべてのPCをAIパワーハウスに変える」、AWS(アマゾン・ドットコムのクラウド部門)は「エージェントAI:消費者向け電子機器とビジネスモデルの革命」と題したカンファレンスを主催しました。個人的には、これらの表題だけでAIがクラウドからPCをはじめとする端末に移行しつつあること、また、エージェントAIがビジネスで注目されていることが感じられました。

インテルのカンファレンスでは、ビジョンセンサーによる品質管理、医療、教育におけるエージェントAIの活用事例に加え、今後は完全自動運転車やヒト型の家事ロボットの市販が期待される、と説明されました。例えば、インターネット通販においては、顧客へのマーケティングや受注、在庫管理、パッキング、配送のトラッキングなどでエージェントAIの活用が始まっています。

物理空間で働くAIの注目事例は

物理的な空間でのAIの活用は、どのような分野から進んでいくでしょうか。現地で印象に残った講演や展示を教えてください。

製造業向けソフトウエア大手のシーメンスは基調講演で、「産業AI革命」という表題で、製造業におけるAIの活用を紹介しました。ゲスト出演した飲料大手ペプシコの担当者からは、新工場の計画にあたり、AI用半導体大手エヌビディアが作成したデジタルツイン(現実世界をサイバー空間に双子として再現し、シミュレーションを行う技術)を活用することで、20%の効率化と設備投資の10~15%の削減が見込める、との説明がありました。

建機大手のキャタピラーは、「Cat AI Assistant」を発表しました。これは、運転席でのリアルタイムの作業、コーチング、トラブルシューティングに加え、サービス情報、建機の状況、購買情報の提供などを行う、複数のAIエージェントを包括的に自律制御するエージェントAIです。

農業機械大手のディアは、自律的な走行と収穫を行うコンバインおよび一定距離で自律走行する運搬トラックによる収穫システムを展示していました。建機や農業機械は私有地での運用が想定され、また鉱物や農作物など対象が動かないため、情報や反応の遅延(レイテンシー)に対する要求が、公道での運用を前提とする自動運転車に比べて低いことからAIの活用が先行したと考えられます。

ディアの展示、AIによる自律走行でコンバインがトラクターを引き連れて収穫作業を行う

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(出所)CTA、野村證券投資情報部撮影

個人が利用する分野ではどのような活用事例が期待されていますか。

注目されているのは自動運転です。CES2026では、エヌビディアやアルファベット傘下のWaymo(ウェイモ)などがレベル4(特定条件下での完全自動運転)に対応した新型ロボタクシーを発表しました。レベル4の自動運転の市販車の普及は、ロボタクシーの安全性が多くの人々に認識されることで需要が高まり、開発資金が充実し、高機能な車両や、より広域をカバーする詳細3Dマップなどのインフラが整備される段階を経たうえで、現実味を帯びてきそうです。

また、CESでは最新の半導体を基盤とするAIを搭載したARグラスやスマートウォッチなどのウェアラブル端末の展示も注目を集めていたように感じます。

網膜に直接投影するタイプのスマートグラスの展示

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(出所)CTA、野村證券投資情報部撮影

AIの活用がクラウド以外に、つまり、現実世界に広がることは多くの企業にとってチャンスだと考えています。「便利なAI」を消費者がどう使うかも、2026年の株式市場にとっての重要なポイントの一つと考えています。

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野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト
竹綱 宏行
1998年野村證券入社。2005年から2015年までニューヨーク、2016年までロンドン駐在(デリバティブモデル開発、デリバティブディーリング、機関投資家営業などに従事)。2019年から2021年に国際金融情報センターに出向(G7マクロ経済とESG金融の分析に従事)。これらの経験を活かし、グローバルな景気動向や政策分析、産業分析を踏まえ、米国株を中心とした投資戦略に関する情報を発信している。CFA協会認定証券アナリスト(米国証券アナリスト)。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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