2026.02.10 NEW
2026年の中国株見通し、上昇基調継続か 「3つの構造変化」に注目 野村東方国際証券
中国株式市場の堅調さが続いています。中国を代表する株価指数である上海総合指数は2026年1月12日に4165.29ポイントまで上昇し、2015年6月30日以来、約10年7ヶ月ぶりの高値を付けました。中国本土の2市場に上場する有力企業300社で構成するCSI300指数も約4年ぶりの高値水準にあります。野村東方国際証券のA株(中国本土株)ストラテジーアナリストの宋勁は、2026年1月に始まった第15次五ヶ年計画での投資拡大やAI(人工知能)市場の成長などを背景に「中国株式は緩やかな上昇基調をたどる」と予測します。その理由を詳しく解説します。野村東方国際証券は中国を拠点にビジネスを展開する、野村グループの総合証券会社です。
2026年の中国株式は緩やかな上昇基調
- 2026年の中国株式市場の見通しを教えてください。
-
野村東方国際証券は2026年の中国株式市場について、前向きな見方を維持しています。基本シナリオを「FRB(米連邦準備理事会)が金融政策について中立もしくは緩和的な姿勢を維持し、中国政府は国内の構造調整(産業・供給側の改革)を優先する」とし、株価指数は変動を伴いつつも緩やかな上昇基調をたどると考えています。
2026年1月から2030年12月までの中国経済や社会の中期的な指針を示した第15次五ヶ年計画は、国内で投資を喚起し、経済成長の下支えとなる見込みです。また、グローバルなAI関連ハードウェア投資の拡大や中国製品の輸出増加も期待できます。
中国政府は過剰生産など過度な競争の抑制を求める「反内巻政策」にも力を注いでおり、非金融セクターの利益率改善につながると考えています。ただ、会計上の反映にはタイムラグがあるため、2026年は企業収益への影響が限られ、より顕著な改善は2027年に現れる可能性が高いとみています。一方で、これまで高い利益成長を続けていた金融セクターは利益の伸びがやや鈍化し、CSI300全体の純利益伸び率を下押しするリスクがあります。
これらの点を踏まえ、当社はCSI300構成銘柄の2026年、2027年の売上高成長率予想をそれぞれ前年比+5.3%、同10.6%とし、純利益成長率を前年比+7.2%、同8.4%と見込んでいます。
内需下支えと低インフレ是正を目指す第15次五ヶ年計画
- 2026年は第15次五ヶ年計画の初年度です。注目すべき政策はどのようなものでしょうか。
-
2026年1月から2030年12月までの中国経済や社会の中期的な指針を示した第15次五ヶ年計画は、大規模な景気刺激策による内需の下支えと低インフレ環境の是正が基本観です。輸出の減速や不動産市況の継続的な調整圧力を踏まえると、中国政府は2026年春にかけて、経済成長の安定化に向けて政策対応を強化する可能性が高いとみています。特に設備投資を中心とする政策によって需要が拡大し、成長モメンタムの下支えにつながると予想しています。
また、第15次五ヶ年計画では安全・レジリエンスの強化(自主可控=自立的にコントロール可能な産業への投資拡大)、新興産業の商業化(商業宇宙、衛星、6G、低空ロボットなど)、金融・財政政策の柔軟性拡大が示されました。
政策支援の不確実性が残る不動産市場
- 不動産市場の動向も投資家の関心が高いテーマです。
-
不動産セクターは2026年の中国経済を占ううえで主要テーマのひとつとなります。中国共産党の機関紙でもある政治理論誌「求是」は2026年1月1日、不動産市場について重要な示唆に富む包括的な論評を掲載しました。中国の不動産需要には依然として大きな潜在力があると指摘する一方、足元の大幅な市況の調整が個人および官民のバランスシートに大きな影響を及ぼしていることを認め、不動産開発業者のデフォルト(債務不履行)リスクに警鐘を鳴らしました。
同時に、住宅購入希望者の不動産市場への信頼回復には時間がかかるとし、不動産セクターの安定化などに向けては包括的な政策の展開が必要だと提唱しました。こうした背景もあり、中国政府は今後数年にわたり、健全な不動産市場への回帰を促すための政策支援の大幅な強化に踏み切る可能性が高いとみています。
ただし、政策当局の大きな課題のひとつとして、現状では即効性のある従来型の政策手段が概ね出尽くしている点が挙げられます。新たな政策枠組みの構築には、一定の検討期間が必要でしょう。輸出動向も含めた中国経済の状況を見極めつつ財源を手当てし、制度面の準備をするのにも時間がかかるため、政策の具体的な発動タイミングには不確実性が残ります。
株式市場の構造変化と3つの投資テーマ
- 2026年の投資テーマについて教えてください。
-
2026年は、2025年に続き「株式市場の分化(株式市場の構造変化)」が市場の関心事となるでしょう。具体的には以下の3つが挙げられます。
(1)セクター間の分化
株式市場全体に占めるイノベーション・テクノロジー分野の利益貢献度が高まる一方で、金融・不動産セクターの影響力が低下。
(2)企業間の利益成長率格差の拡大
上場企業の半数以上で利益成長率の低下が見込まれる一方、業界トップ企業は高い利益成長が継続。
(3)内需と外需の分化
外需企業の収益が拡大し、株式市場全体の利益成長のけん引役に。
各セクター内で時価総額の大きい業界トップ企業のような大型株への投資は、株式需給の面からも追い風が吹くかもしれません。2025年の中国株式市場が大きく上昇した背景には、公的基金や個人投資家によるETF(上場投資信託)などのパッシブファンド買いがありました。この動きは、直近あった2度の株高局面(① 2014~2015年のヘッジファンド主導の株高、② 2019~2021年のアクティブファンド主導の株高)のいずれとも異なっています。
1月以降はいくつかのETFで資金が流出しているものの、当社では一時的と考えており、2026年もパッシブファンドへの資金流入は継続すると見ています。公的基金などによる息の長い資金がパッシブファンドに向かい、株価指数の構成比率が高い大型株などの上昇につながると見ています。
また、第15次五ヶ年計画で示された「自主可控」関連銘柄も話題になるでしょう。これらの点を踏まえ、当社では、1年間を通じて以下の3つの投資テーマに注目しています。
(1)ハイエンド製造業の海外展開
高付加価値のハイエンド製造業の持続的なグローバル化に注目。重点分野はAI関連ハードウェア、革新的医薬品、新エネルギー、自動車、建設機械、軍需産業など。
(2)トレンドの海外発信
中国発の消費トレンドのグローバル展開が進む。具体例としてインバウンド、短編ドラマ、クリエイティブ潮玩(デザイナーズトイ)、モバイルゲーム、コンソールゲーム、新感覚のお茶飲料など。
(3)パッシブファンドへの資金流入
公的基金や個人投資家によるETFの買い増し。株価指数の構成割合が高い銘柄の流動性向上。
- 中国株式市場のリスクは何でしょうか。
-
ほかの主要国同様、米国経済の影響は強く受けるでしょう。AI関連の設備投資などによる米国経済の下支え効果が徐々に弱まり、米国経済の減速や個人消費の低迷につながる場合には、中国の輸出関連企業の業績見通しの下振れなどが株式市場全体に波及するかもしれません。
また、想定以上の内需の回復が思わぬリスクにつながる可能性もあります。第15次五ヶ年計画の初年度である2026年に投資プロジェクトが一斉に立ち上がれば、市場予想を上回って内需が回復することもあり得ます。それ自体はポジティブですが、内需の回復が不動産セクターや消費関連セクターの株価上昇を主導するような局面では、これまで2年にわたり選好されてきた「国営企業など高配当株とテクノロジー株を組み合わせて投資する『バーベル戦略』」の巻き戻しが株式市場の上値を抑える可能性があり、注意が必要です。
- 野村東方国際証券 A株(中国本土株)ストラテジーアナリスト
宋勁(ソン・ジン) - 2019年12月に野村東方国際証券に入社し、現在までA株(中国本土株)ストラテジーアナリストを務める。以前は申港証券でA株ストラテジーのチーフアナリストおよび消費財セクターのアナリストを務めていた。申港証券入社前は、東興証券と元大証券でそれぞれアナリストおよびリサーチアシスタントを務めていた。
※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。