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2026.02.17 NEW

レアアース、AIロボット…高市政権重点17分野のうち具体化が見えた2分野を解説 野村證券・岡崎康平

レアアース、AIロボット…高市政権重点17分野のうち具体化が見えた2分野を解説 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/撮影/タナカヨシトモ(人物)

2月8日の衆議院選挙で自民党が大勝し、与党の政策実現力が高まるなか、高市早苗政権が「危機管理投資・成長投資」の一環で推進する17の戦略分野への注目が集まっています。その中でも、政策の全体像や方向性が見えてきた「海洋」と「AI半導体」の2分野について、野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が注目点を解説します。

レアアース、AIロボット…高市政権重点17分野のうち具体化が見えた2分野を解説 野村證券・岡崎康平のイメージ

動き出した南鳥島沖のレアアース試掘

衆議院選挙で与党が圧勝したことで、政策推進力が高まりました。危機管理投資・成長投資を掲げる高市政権は、これまで17の戦略分野に投資を行う方針を示してきましたが、この中で注目分野はどこでしょうか。

政府は17の戦略分野について、2月から5月にかけてロードマップ案の策定を進めています。その中でも「海洋」と「AI・半導体」の動きが活発化しており、注目しています。

戦略17分野の議題・ロードマップ提示時期

レアアース、AIロボット…高市政権重点17分野のうち具体化が見えた2分野を解説 野村證券・岡崎康平のイメージ

(注)「議題(例)」は、政府公表文書を野村が独自に要約したもの。
(出所)内閣官房資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

海洋分野の取り組みでは、対中依存度の高いレアアースの採掘が注目されます。2026年1月12日~2月14日にかけて、JAMSTEC(海洋研究開発機構)が地球深部探査船「ちきゅう」で南鳥島沖の試掘を実施しました。試掘は無事に完了し、水深約6,000メートルから引き上げられたレアアース泥の分析作業が始まっています。このレアアース泥には、電気自動車のモーターに不可欠なジスプロシウムやネオジムなどが含まれるとみられています。

今回の調査結果を踏まえ、2027年2月には試掘が本格化する予定です。本格試掘時には、南鳥島に脱水処理施設も建設される計画ですから、今回採取したレアアース泥の分析が進むにつれて、商用化を含め、日本のレアアース関連産業への期待の解像度が高まる可能性があります。海洋探査・開発関連の企業にとっては追い風になるかもしれません。

仮に日本の排他的経済水域内に眠る約1,600万トンのレアアースが開発可能となれば、埋蔵量シェアで世界3位になるとされています。レアアースの採掘技術は、もともと石油の採掘に使う技術を使用しており、技術的に応用の利くものが多いようです。採掘・精製に関連する技術を持つ企業にとっては、日本の海底資源が経済性を帯びるという意味で、明るい見通しが出てくるかもしれません。また海洋資源の採掘はレアアースだけでなく、マンガンやメタンハイドレートなどにまで広がる可能性があり、海洋資源全般の開発の加速ということも中長期的なシナリオとして考えられます。

AIロボットは他の戦略分野や業種への波及効果も期待

もう1つのAI・半導体の分野については、どのような点がポイントになるでしょうか。

「AI・半導体」については、自民党の「半導体戦略推進議員連盟」が毎年1兆円程度の予算確保を目指す考えを示しており、2026年度本予算から反映される見通しです。半導体産業に対する財政支援のコミットメントが一段と明確化される点でポジティブな動きでしょう。半導体については、半導体世界大手のTSMC(台湾積体電路製造)が2月に熊本で国内初となる「3ナノ半導体」の生産を表明するなど、日本の半導体サプライチェーンの重要性は一段と高まっています。具体的にどのような追加的な予算が投じられるのかに注目しています。

加えて、AI・半導体の分野では、「ChatGPT」をはじめとした生成AIの普及が進んできましたが、今後はAIを搭載したロボットが物理空間で自律的に稼働する「AIロボティクス」の重要性が増しており、日本でも政策サイドの議論が活発になっています。

2025年10月に経済産業省の「AIロボティクス検討会」が戦略の方向性の骨子を取りまとめました。その骨子をもとに、2026年1月に「AIロボティクス戦略検討会議」が新たに立ち上がり、戦略の素案と各分野の実装ロードマップ案の策定に向けて、議論が進められています。2026年3月末までに取りまとめられる見通しです。

戦略の大枠はすでに固まっており、供給サイドと需要サイド、つまり、AIロボットの開発・製造側と導入側について課題の洗い出しを進めています。特に需要サイドでは、民間のAIロボット導入にハードルがあるため、まず政府が需要を創出する「先行官需」を基本方針としています。具体的な分野としては、「災害対応分野」「防衛・宇宙分野」「インフラ保守分野」の3つです。実際の企業側の需要では、「小売業」「製造業」「警備業」など8分野が挙げられています。人手不足に悩む業種を中心にAIロボットの需要が想定され、導入促進策も展開されるとみられます。このようにAIロボティクスは、宇宙や国土強靭化など他の戦略分野や製造業以外の他業種への波及効果も期待できます。

衆議院選挙後の日本の株式市場の動きをどのように見ていますか。17の戦略分野については、今後、市場で材料視されるタイミングは来るでしょうか。

自民党が大幅に議席数を増やし、与党の政権基盤が強まったことで「リフレ期待」が高まり、銀行や不動産関連銘柄が物色されました。また、経済安全保障の強化が意識され、防衛関連や原子力関連の銘柄が注目されています。一方で、食料品向けの消費税減税が期待されていますが、消費関連銘柄全体への追い風にはなっていないようです。

日本の株式市場もこれまでAI半導体関連銘柄が株高のけん引となってきましたが、海外のAIブームの動向に引っ張られる面が大きかったと思います。今後、官民挙げて推進していくAIロボティクスの分野は日本独自の投資妙味になるかもしれません。レアアースについても、息の長い投資テーマになる可能性があるでしょう。

注目される対米投資第1号案件の議論の行方は

トランプ関税の引き下げの条件となった総額5,500億米ドルの対米投資については、日米両国で第1号案件の議論が進んでいます。3月の日米首脳会談に向けて、今後の動向が注目されます。

そうですね。第1号案件については、データセンター向けガス火力発電、原油を日本に輸出するための港湾整備、人工ダイヤモンドに関する案件が議論されています。訪米した赤澤亮正経済産業大臣は2月12日にラトニック米商務長官と会談しましたが、案件の決定は持ち越しとなりました。3月19日に予定されている日米首脳会談までに合意に至れるか、予断を許さない状況です。合意が遅れるリスクについても、注意しておく必要があるかもしれません。

また今回はあくまで第1弾で、総額5,500億米ドルの一部に留まるでしょう。引き続き新規案件が出てくることが予想されます。高市政権発足後に行われた2025年10月の日米首脳会談では、戦略的投資イニシアチブについては覚書が公表されています。具体的な企業名が挙げられており、エネルギー、AI向け電源開発、AIインフラの強化、重要鉱物等といった分野が示されました。この分野の企業は、第2弾、第3弾の案件で出番が来るかもしれません。

「日米間の投資に関する共同ファクトシート」に列挙された分野・企業

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(注)日米両国の企業がプロジェクト組成に関心を有している分野を列挙したもの。「規模」は事業規模の総額(投資、売上等)を示すもの。日米両政府が署名した5,500億米ドルの戦略的投資の対象と一致するとは限らない点に注意。
(出所)外務省資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

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チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
     
 
     

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