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2026.03.03 NEW

ホルムズ海峡封鎖と原油価格見通し OPEC+増産決定でも価格上昇は避けられず 野村證券・髙島雄貴

ホルムズ海峡封鎖と原油価格見通し OPEC+増産決定でも価格上昇は避けられず 野村證券・髙島雄貴のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

2月28日、米国とイスラエルはイランを空爆しました。3月1日には、この攻撃によりイランの最高指導者ハメネイ師と、イラン革命防衛隊の幹部7人が死亡したと報じられました。一方、イランは報復として、イスラエルのほか、サウジアラビアやカタールにある米軍基地などを攻撃しました。また、3月2日にはイラン革命防衛隊がホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。原油価格の見通しについて、野村證券経済調査部・市場戦略リサーチ部エコノミストの髙島雄貴が解説します。

ホルムズ海峡封鎖と原油価格見通し OPEC+増産決定でも価格上昇は避けられず 野村證券・髙島雄貴のイメージ

イラン革命防衛隊がホルムズ海峡封鎖を宣言した

米・イスラエルとイランの応酬が激化しており、またイラン革命防衛隊は世界の石油生産量の約2割が通過するホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。石油輸送にも影響が生じています。こうした状態が長期化した場合、原油価格が一段高となる可能性があるため注意を要します。

ホルムズ海峡を通過する原油輸送を行う国々(目的地別)

ホルムズ海峡封鎖と原油価格見通し OPEC+増産決定でも価格上昇は避けられず 野村證券・髙島雄貴のイメージ

(注)Vortexaのデータに基づいたEIAによる推計値。
(出所)米EIA(エネルギー情報局)より野村證券経済調査部作成

一方、OPECプラス(OPEC=石油輸出国機構とロシアなど非加盟産油国の枠組み)が、ロシアやイランを除き、日量約400万バレルの生産余力を持つ点は、原油価格の上値を抑える材料です。ただし、ホルムズ海峡が封鎖された状況では、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、パイプラインを通じてホルムズ海峡を使わないルートに切り替える必要が生じます。このため、生産余力の全量を短期間で輸出できるとは限らない点に注意が必要です。

OPECプラス有志8ヶ国は4月に日量20.6万バレル増産を決定

OPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、UAE、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は3月1日、オンライン会合を開きました。決定した主な内容は以下の通りです。(1)4月に3月の生産量から日量20.6万バレル増産する。(2)引き続き2024年1月以降の減産未達分は埋め合わせが必要である。(3)次回の有志会合は4月5日を予定する。

OPECプラス有志8ヶ国の生産計画

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(注)過去の減産目標未達分に関する埋め合わせプラン(Compensation Plans)は含まれていない。
(出所)OPEC(石油輸出国機構)より野村證券経済調査部作成

日量20.6万バレルの増産は、2025年10-12月期に実施された日量13.7万バレルの増産の約1.5倍の急ピッチです。しかし一方で、(1)声明文でイラン有事への直接的な言及がなかったことや、(2)昨夏には日量54.8万バレルなどの大規模な増産を実施したことも踏まえると、イラン有事に伴う原油価格の急騰を本格的に抑える姿勢を示したとは言いにくいと、野村證券ではみています。こうした点から、OPECプラスの増産再開を踏まえても、原油価格には押し上げ圧力がかかりやすいと考えられます。

緊張緩和で合意なら、原油価格は緩やかに下落基調へ

戦況についてトランプ米大統領は「イランに対して厳しい打撃をまだ与え始めてもいない」「大きな波はもうすぐ来る」「戦争は4週間程度続くと思ってきたが、予定は少し早まっている」などとの認識を示しています。戦闘が長引く場合、供給不安が意識され、原油価格は高止まりしやすいと見込まれます。

ただし今後、米国とイランが何らかの緊張緩和で合意し、ホルムズ海峡の輸送正常化に向けた見通しが立てば、従来どおり供給過剰による下押し圧力が意識されます。その場合、原油価格は徐々に低下基調に回帰すると見込まれます。

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野村證券 経済調査部・市場戦略リサーチ部 エコノミスト
髙島 雄貴
2018年野村證券入社。2023年6月まで日本経済担当エコノミスト。コモディティー調査を担当。原油をはじめとして、天然ガス、金、非鉄金属、穀物など、幅広い商品の市況を分析し、先行きの見方を提供。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。現在、日経ヴェリタスの「コモディティー・インサイト」に定期寄稿中。

※この記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
     
 
     

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