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2026.03.05 NEW

イラン攻撃で金利は上昇方向か ただし、年後半以降の中長期金利の予測に変更なし 野村證券・宍戸知暁

イラン攻撃で金利は上昇方向か ただし、年後半以降の中長期金利の予測に変更なし 野村證券・宍戸知暁のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、イランが石油生産・精製施設や石油タンカーなどを攻撃しているため、原油価格が上昇しています。イランはホルムズ海峡を通過する船舶を攻撃すると、国内向けに宣言しました。野村證券の宍戸知暁シニア金利ストラテジストは、攻撃が5週間程度で終結する場合、金利見通しを大きく変更する必要はないとみています。以下で詳しく解説します。

イランと米イスラエルの交戦が長引くほど原油価格は上昇へ

トランプ米大統領は、ホルムズ海峡を通過する船舶を米海軍が護衛するとのアイデアを示しました。一方で、一部の保険会社は湾岸地域における海上保険の補償(カバレッジ)の停止を決めています。攻撃を受けた場合の金銭的損失の大きさを踏まえると、リスクが残る以上、あえて海峡通過を試みる船舶は増えにくいとみられます。戦闘が長期化するほど、原油価格には上昇圧力がかかるとみてよいでしょう。

原油高は金利上昇要因

地政学リスクが顕在化した局面での金利市場の典型的な反応として、当初はリスク・オフで金利が低下し、その後、商品市況の高騰が意識されると金利が上昇に転じるパターンが挙げられます。今回も戦闘が長引き、原油価格の上昇幅が拡大すれば、金利は上昇するとみてよいでしょう。

第一に、原油価格の上昇はインフレ率を押し上げます。押し上げ期間が長期化するほど、インフレ期待や賃上げ率に波及し、高インフレが定着する可能性が高まります。なお、原油価格は国際市場で裁定が働くため、原油の純輸出国である米国でも、金利には上昇方向の影響が出るとみてよいでしょう。

原油高は円安や財政支出拡大につながりやすい

第二に、日本はエネルギーの純輸入国であるため、エネルギー価格の上昇は、特に対米ドル(および他の原油純輸出国の通貨)で円安につながりやすいと考えられます。これは追加的にインフレ圧力の増大に寄与します。

第三に、エネルギー価格の上昇を受け、ガス・電気代の補助が延長されるなどして、財政支出が増える可能性にも注意が必要です。3月3日には高市早苗首相が、原油高が長引けば補正予算を編成する可能性があるとの考えを示しました。

3月末の金利水準はイラン情勢次第

総じて、イラン情勢による原油の輸送・生産のかく乱が長引くほど、円金利には上昇圧力がかかるでしょう。2026年3月末の金利水準は、イラン情勢次第と言わざるを得ません。米国とイスラエルによる攻撃と、イランによる反撃が終結していれば、2026年3月末の円金利は現状並み、あるいは現状より低下している可能性もあります。一方、トランプ大統領が述べているように、イランへの攻撃が少なくとも4〜5週間続くのであれば、2026年3月末の金利水準は現状よりも有意に高い公算が大きいとみられます。

「TACO」で攻撃早期終了はリスク・シナリオ

イラン情勢の金融市場への影響が拡大しており、これがトランプ大統領の攻撃終結の判断時期に影響する可能性があります。特に、米債金利の上昇が目立つようになれば、大統領が当初の目的は達成されたと宣言し、一方的に攻撃を停止する可能性もあります。

ただ、現時点では、この「TACO(Trump Always Chickens Out)」シナリオをメイン・シナリオとは位置づけにくいです。攻撃が早期に終結する、または高い確度で早期終結を見込めるだけの強い材料が出るまでは、イラン攻撃とイランの反撃は5週間以上続く前提で円金利の予測を作成したいと思います。

年後半以降の中長期金利の予測に変更なし

イラン攻撃を受け、目先の金利見通し(ここでは主に5年・10年金利の見通しを指します)を上方修正しますが、2026年後半以降の金利見通しは据え置きます。3月3日、トランプ大統領は、イラン攻撃で達成しようとしている目的がイランの体制転換ではないことを比較的明確にしました。秋には米中間選挙を控えており、イラン攻撃が長期化すれば原油高も長期化し、選挙にはマイナスに働きます。このため、年後半から2027年にかけての日本の景気・物価見通しを大きく変えるほど、イラン攻撃が長期化する可能性は高くないとみています。景気・物価見通しが大きく変わらなければ、政策金利見通しも長期金利見通しも、修正する必要性は小さいでしょう。

野村證券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト 宍戸 知暁
2000年野村総合研究所入社。2003年からニューヨークの野村総研アメリカおよび米国野村證券で米国マクロ経済の分析に従事。2006年からマクロ経済分析を基礎とした米国債券市場の分析・予測を担当し、その後は米株式市場の分析およびマルチアセット・ストラテジーを担当。2022年から2年間、財務省理財局国債業務課で市場分析官として勤務し、海外市場および円金利市場の分析に従事した。2023年6月から円金利ストラテジー担当。 ファンダメンタルズ分析および中銀ウォッチを基本に、投資家の売買動向を含む市場需給見込みも加味した予測作成およびストラテジー構築を心掛けている。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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