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2026.03.13 NEW

成長戦略会議、戦略17分野の先行品目決まる 注目ポイントは? 野村證券・岡崎康平

成長戦略会議、戦略17分野の先行品目決まる 注目ポイントは? 野村證券・岡崎康平のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

政府は3月10日に日本成長戦略会議を開き、高市早苗首相が重点投資対象と位置付ける「戦略17分野」の「主要な製品・技術等」に加え、実現に向けた「官民投資ロードマップ」の素案などを公表しました。政府が掲げる「強い経済」の実現に向け、各種の取り組みが本格的にスタートします。今回示された政府方針における注目ポイントについて、野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平が詳しく解説します。

成長戦略会議、戦略17分野の先行品目決まる 注目ポイントは? 野村證券・岡崎康平のイメージ

戦略17分野の先行検討27品目が決定

そもそも、日本成長戦略会議とはどのような会議なのでしょうか。

高市政権の成長戦略を具体化する会議です。AI・半導体や防衛産業など17の戦略分野と、新技術立国・競争力強化や人材育成といった8つの分野横断的課題に取り組む計25の会議体があり、それらを取りまとめています。会議での決定事項は2027年度予算での施策につながるため、とても重要です。個別具体的な内容をそれぞれの会議体が議論し、方向性を決めるという点では、「ワンパッケージ」で成長戦略全体の方向性を決めていた過去の政権下の成長戦略会議とは位置付けが変わっています。

今回の会議での注目ポイントは何でしょうか。

戦略17分野の「主要な製品・技術等」が公表されたことです。重視すべき「主要な製品・技術等」として61品目が選ばれ、うち以下の27品目が先行検討の対象になりました。例えば話題性が高いAI・半導体では「フィジカルAI(特にAIロボット)」が選ばれ、防衛産業では「小型無人航空機」が選定されました。

これらの品目は「国内のリスク低減の必要性」「海外市場の獲得可能性」「関係技術の革新性」など、経済安全保障分野で重視される自律性・不可欠性に経済成長への貢献を加味して選ばれた印象です。また、27品目については官民投資ロードマップの素案も示されました。ロードマップは目標、道筋、政策手段の3つのパートに分かれ、実現に向けた道筋が書かれています。

戦略17分野と先行検討27品目

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(注)「主要な製品・技術等」として指定された61品目のうち、先行して検討を進めている27品目。掲載順は内閣官房の資料に記載された通り。
(出所)内閣官房資料より野村證券市場戦略リサーチ部作成

「フィジカルAI」や「防衛力強化」に注目

どんな品目に注目していますか。

最も注目しているのは、投資家の関心も高いAI・半導体です。「フィジカルAI(特にAIロボット)」の分野では、多用途ロボットOEM(相手先ブランド名製造)の育成推進や、産業・領域ごとの多用途ロボットの定量的な導入目標、フィジカルAIを必要とする需要家側の継続的な調達がコミットされるような支援策の検討、などが政策パッケージの姿として記されています。

政府によると、世界のAIロボット市場は2040年に約60兆円規模に成長する見込みです。その約3割のシェアを獲得する方針が示され、実現に向けて官民挙げてプロジェクトが進んでいく可能性は高いでしょう。ただし、設備導入にあたっては各企業の業務プロセスの変更などハードルが高いことも間違いなく、供給側だけ考えても経済は成り立ちません。

そのため、政府が最初の購入者となることで民間への導入を促進したり、開発に際しては工場、物流、介護など具体的な需要家の姿を想定したりするなど、需要と供給がうまくバランスできるような支援策を検討する方針のようです。

また、防衛力強化につながる品目もいくつか含まれています。航空・宇宙や海洋、港湾ロジスティクスの分野は安全保障と、もともと不可分ですが、防衛と経済の好循環を目指す政権の姿勢が見えたように感じます。

自民党は4月に「戦略3文書」(次期防衛予算を規定する文書)の改定に関する提言を予定しており、報道では「太平洋における港湾機能の強化」などが盛り込まれる見通しです。高市首相は日本成長戦略会議で防衛産業について「新たな技術シーズをこれまでにない規模で防衛調達につなげる新たな道筋について、赤澤亮正経済産業相と小泉進次郎防衛相が連携して検討を進め、具体的な結論を得てください」とも語りました。3月19日には日米首脳会談も控えており、防衛分野での取り組みは特に金融市場の関心を引く可能性があるでしょう。

このほか、通信分野では「オール光ネットワーク」が先行検討品目となりました。総務省によると、オール光ネットワーク技術は「低消費電力・低遅延・大容量」を実現する次世代情報通信基盤の中核技術とされ、AI技術などの発展に貢献する可能性があります。また、大容量で低遅延のデータ転送が可能になるため、地方でのデータセンター建設など、地方創生にもつながるかもしれません。

経済へのインパクトは今後明らかに、財政支出は上限25兆円前後か

日本の経済・財政へのインパクトはどの程度あるのでしょうか。

政府は戦略17分野の議論を踏まえて国内投資額やGDP(国内総生産)、税収、債務残高対GDP比への影響も示す方針です。ただし、官民投資ロードマップの素案では、経済効果の目安を見極めるべき「官民投資の具体像」「定量的なインパクト」の項目について、大部分の先行品目でまだ公表されていません。今後議論が進むにつれ、具体的な投資額・時期・経済波及効果・関連投資誘発効果が明らかになるでしょう。

そのため財政支出の規模も明らかにはなっていませんが、3月10日の日本成長戦略会議では、規模感を予想する上で高市首相が重要な発言をしました。片山さつき財務相に対し、「政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていく中でも可能となる財政規模」を精査するよう求めました。つまり、財政規律に配慮した上で成長戦略を実施する方針を示したのです。

「政府債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていく」との前提で可能な財政支出の規模を考えてみると、仮に名目GDP成長率が安定的に2%程度であるとすると、上限は年間25兆円前後となります(プライマリーバランスが黒字でも赤字でもないと仮定した場合)。あくまでひとつの目安であり、税収次第で変動する可能性もありますが、ひとつの参考にはなるかもしれません。

全品目がすぐに実用化されるわけではない

個人投資家が気を付けるべきポイントはありますか。

先行検討の対象となった27品目も含め、戦略17分野で掲げられた品目は技術が確立しているものがある一方、新しい技術の開発が必要で研究支援の段階から始まるものも少なくありません。実現に向けた道のりは品目によってばらつきがあり、すべての品目がすぐに実用化されるわけではありません。また、最初は政府主導であっても、最終目標は民間企業による事業参入と需要の創出です。政府の手を離れた後、民間企業自身で需要と供給を賄える市場に成長できるかどうかは、しっかりと見極める必要があるでしょう。

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チーフ・マーケット・エコノミスト
岡崎康平
2009年に野村證券入社。シカゴ大学ハリス公共政策大学院に留学し、Master of Public Policyの学位を取得(2016年)。日本経済担当エコノミスト、内閣府出向、日本経済調査グループ・グループリーダーなどを経て、2024年8月から、市場戦略リサーチ部マクロ・ストラテジーグループにて、チーフ・マーケット・エコノミスト(現職)を務める。日本株投資への含意を念頭に置きながら、日本経済・世界経済の分析を幅広く担当。共著書に『EBPM エビデンスに基づく政策形成の導入と実践』(日本経済新聞社)がある。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
     
 
     

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