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2026.03.23 NEW

日経平均株価一時51,000円を割り込む 原油高に日本株が過剰に反応する4つの理由 野村證券・池田雄之輔

日経平均株価一時51,000円を割り込む 原油高に日本株が過剰に反応する4つの理由 野村證券・池田雄之輔のイメージ

写真/タナカヨシトモ(人物)

2026年3月23日の日経平均株価の終値は、前週比1,857.04円安の51,515.49円となり、一時51,000円を割り込みました。ここ最近は中東情勢の悪化と原油価格の上昇に連動して日本株が大きく動く事態が続いていますが、「原油価格の上昇が日本企業の業績にもたらす影響以上に株価が反応している」と、野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔は分析します。その背景にある4つの理由を解説します。

市場が反応する新しい要素、FRB「利下げ期待」から「利上げ警戒」へ

中東情勢の悪化と原油高が、株安・債券安をもたらす展開が続いています。市場の反応には新しい要素が加わってきました。「イールドカーブのフラット化」が欧米市場で目立ってきたのです。先週は、日米欧を筆頭に主要中央銀行の金融政策会合が集中しましたが、それらをこなす中で、「FRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)が、景気への犠牲を払ってでもインフレの鎮火を優先せざるを得なくなる」という懸念が高まってきています。

具体的には、FRBへの市場期待は、3月13日時点では「9割以上の確率で年内に1回利下げ」だったのが、20日時点では「約4割の確率で10月会合までに1回利上げ」へと、「利下げ期待」から「利上げ警戒」にひっくり返りました。

原油5米ドルの上昇で、日経平均株価1,000円の下げ、という過激な反応

このようななかで、日経平均株価は23日に一時、51,000円を割り込みました。原油価格は、北海ブレントでみると、戦争開始前の1バレル=70米ドルから、110米ドル付近へと約40米ドル(約6割)上昇しました。この間の日経平均株価は、59,000円近くから51,000円前後へと約8,000円(約35%)下がっています。原油5ドルの上昇で、日経平均株価1,000円の下げ、という過激な反応を示しているのです。

野村證券のストラテジストは、原油価格が10%上昇した場合、主要企業の経常利益を1.00~1.25%押し下げると見ています。これを当てはめれば、北海ブレントは約6割上昇しているので、企業利益は6~7.5%のダメージという計算になります。しかし、株価は業績見通しへの影響をはるかに上回る下げ率になっている。これはなぜでしょうか。4つの理由が考えられます。

世界的なリセッション入りという「テールリスク」への警戒

第一に、日本企業が直面している原油高は、北海ブレントの値段では捉えきれていない面が出てきています。現状、ホルムズ海峡が封鎖されているという今までにない特殊な状況にあって、中東産の指標であるドバイ原油価格は20日時点で134米ドル/バレルと、2月末のほぼ2倍に跳ね上がっています。上昇率の比をとった場合、北海ブレントの7割増しとなっているということです。日本は原油輸入の約9割を中東に依存しているので、景気や業績インパクトもそれだけ大きくなっている可能性があります。

第二に、ナフサや重油の調達困難による生産停止・縮小といった影響が一部企業に表れ始めています。コスト高という利益率へのインパクトのみならず、サプライチェーンへの打撃を介した、生産「量」への影響も考える必要が出てきています。

第三に、世界的なリセッション入り、という確率は低いがダメージの大きい「テールリスク」への警戒が高まっています。とくに、米国が景気後退に陥った場合、日本企業の業績の基調は増益から減益に転じる可能性が高まってきます。そうすると、バリュエーションの居所も大きく切り下がってくるため、注意が必要です。

第四に、米トランプ政権の将来の政策運営に、疑問符が付きます。全米平均ガソリン価格は3.9米ドル/ガロンまで上昇していますが、消費者心理にとって重要な節目とされる4米ドルを超えれば、2022年夏以来の水準となります。トランプ大統領支持率は42%と就任後の最低水準を更新しており、賭けサイトでは11月の中間選挙で共和党が上院も失うとの見方が約5割まで上昇してきました。

今後の展開は、原油価格次第という面が多分にあり、結局のところは中東情勢、ひいてはトランプ大統領の判断に命運が託されていると言わざるを得ません。予想はきわめて難しい状況です。

米国景気の観点に絞れば過度の悲観は不要

ただし、上述した米国景気の観点に絞っていえば、過度の悲観は不要と考えています。米国の景気は現状、きわめて堅調に推移しています。2025年7月に決まった減税法による税還付が2026年2~4月に集中しており、そのプラスの作用も表れ始めている様子があります。

先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、パウエル議長の印象的な発言がありました。市場で多用される「スタグフレーション」という言葉に違和感を示したのです。議長はインフレ・雇用ともに1970年代とは大きく異なると述べ、「私としては『スタグフレーション』という用語はより深刻な状況のために取っておきたい」と述べました。消費に関しても楽観的なトーンが目立ったと思います。

最後に、クレジット市場への警戒も、行き過ぎには注意が必要です。同市場は、金融市場全体のセンチメント悪化の要因と指摘されがちですが、見落としてはいけない点があります。それは、米国ハイイールド社債の米国債に対する利回りの上乗せ幅は、VIX指数(恐怖指数)に遅れて緩やかに拡大しているに過ぎないということです。つまり、クレジットが何か先見性をもって動いている訳ではないということです。

22日には、トランプ大統領が「48時間以内にホルムズ海峡を開放せよ」とイラン指導部に迫るなど、事態はエスカレートしており、予断を許しません。日本株シナリオの決め打ちは極めて難しい状況にあります。しかし、現時点で米国の景気後退は、ガソリン価格上昇や、FRBのタカ派化で引き起こされるほど脆弱には見えません。中東情勢と原油価格さえ落ち着けば、株価は上昇トレンドを取り戻す可能性が高いと見ています。

野村證券 市場戦略リサーチ部長
池田 雄之輔
1995年野村総合研究所入社、2008年に野村證券転籍。一貫してマクロ経済調査を担当し、為替、株式のチーフストラテジストを歴任、2024年より現職。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。現在、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演中。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

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