Research

野村リサーチ

 

2026.04.08 NEW

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

撮影/タナカヨシトモ(人物)

パキスタン政府は2026年4月8日、イランと米国が即時停戦で合意したと発表しました。停戦は同日中に発効するとしており、市場の焦点は、停戦が着実に履行されるか、さらに恒久的な停戦に発展するかへ移っています。野村證券チーフ為替ストラテジストの後藤祐二朗は、恒久的な停戦に移行すれば、米ドルにはなお一段の下落余地があるとみています。以下、詳細を説明します。

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

米国とイランは停戦発効へ、公表の焦点は恒久化の可否に

米国とイランの仲介役を担ってきたパキスタンのシャリフ首相は、トランプ米大統領に対し、交渉のための2週間の猶予を強く求めていたとされます。イラン側にも、善意の表れとしてホルムズ海峡を一定期間開放するよう働きかけていました。

トランプ大統領はイランへの攻撃停止に合意し、「過去の争点の大半について合意に至った」としています。NYタイムズは、イラン側でも最高指導部がパキスタンの停戦案を承認したと報じました。CNNは、イスラエルもトランプ氏の停戦合意の枠組みに含まれると伝えています。

停戦の条件の一つとして注目されてきたのが、ホルムズ海峡の開放です。トランプ大統領は、停戦の条件としてホルムズ海峡の開放を挙げており、イラン外相も「ホルムズ海峡の安全な航行は2週間可能になる」と発言しています。

米国とイランは4月10日からパキスタンで交渉を始めるとされています。イラン国営放送は、今回の協議が戦争の終結を意味するものではないと報じていますが、トランプ大統領はSNSで「イランからは10項目の提案を受け取っており、交渉の基盤として機能する」と述べています。市場の関心は、今回の停戦がより恒久的な停戦につながるかどうかに集まりそうです。

株高・債券高・米ドル安で反応へ

土壇場での停戦期待の高まりを受け、NY原油先物は100米ドルを割り込んで急落しました。金融市場は株高・債券高・米ドル売りで反応しています。米ドル円相場は海外時間に160円超えを試す展開となっていましたが、足元では158円台まで調整しました。リスク心理の改善を受け、ユーロ円や豪ドル円など主要クロス円は反発しています。

原油価格と米ドル指数

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(出所)ブルームバーグ、野村證券市場戦略リサーチ部作成

2週間の停戦が着実に履行され、ホルムズ海峡の開放が維持されれば、原油供給への懸念は少なくとも当面後退します。原油価格の調整とともに、株高・債券高・米ドル安の展開が予想されます。2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃開始後、為替市場では米ドル全面高が進んでおり、恒久的な停戦に向かえば、米ドルには一段の調整余地がありそうです。米ドル円が160円台に定着するリスクも低下しそうです。

リスク心理の改善が初動での主要クロス円の上昇につながっていますが、仮に恒久的な停戦に向かう場合、原油高止まりによる需給面での円売り圧力は弱まるでしょう。中長期的な円安リスクは、クロス円でも低下しそうです。

円建て原油価格と日本のエネルギー関連貿易収支

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗のイメージ

(注)原油価格はアラブ軽質原油。
(出所)ブルームバーグ、野村證券市場戦略リサーチ部作成

4月末の中銀ウィークへの影響に注目

2週間の停戦期間中により恒久的な停戦が実現すれば、4月最終週の中銀ウィークまでに中東情勢の改善がより明確になる可能性があります。日銀短観などのファンダメンタルズは日本銀行の早期利上げを正当化しますが、中東情勢はこれまで早期利上げのリスク要因とみられてきました。仮に中東情勢の改善が明確になれば、日銀は4月会合での利上げに踏み切りやすくなりそうです。

一方、原油価格の調整は、FRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)など海外主要中銀にとって、性急な利上げの必要性を低下させます。当面の為替市場は引き続き中東情勢と停戦履行の行方に左右されるとみられますが、恒久的な停戦機運が高まれば、日銀の利上げ期待が円を支えると予想されます。

米・イランが恒久停戦に向かえば、米ドル円の160円台定着リスクは低下する公算 野村證券・後藤祐二朗のイメージ
野村證券 市場戦略リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト
後藤 祐二朗
為替相場のリサーチ・ストラテジーを担当。8年半にわたるニューヨーク・ロンドン駐在時には海外ヘッジファンド向けを中心としたドル円ストラテジー、日米欧の資本フロー分析、日本及び欧州の金融政策及びマクロ分析を担う。2002年に野村総合研究所に入社、2004年に野村證券への転籍を経て、2011年以降は海外拠点にて外国人投資家向けの情報提供を中心に活動。2019年8月より現職。

※本記事は、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的として作成したものではございません。また、将来の投資成果を示唆または保証するものでもございません。銘柄の選択、投資の最終決定はご自身のご判断で行ってください。

 
     
 
     

ページの先頭へ