1. TOP
  2. コラム
  3. 「人生100年時代」三世代で考える資産運用~その1

「人生100年時代」三世代で考える資産運用~その1

  • facebook
  • x
  • LINE
野村證券株式会社 投資情報部長 東 英憲

人生100年時代~私たちの「くらしとお金」を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。夢や目標の実現に向けて、親・子・孫の三世代で考える資産運用について、野村證券株式会社・投資情報部長の東英憲が解説します。

人生100年時代の到来

「人生100年時代」とは、『 LIFE SHIFT(ライフ・シフト)‐100年時代の人生戦略 』※という書籍で使われた言葉と言われています。この中で、2007年に日本で生まれた子どもは、107歳まで生きる確率が50%もあるとの研究結果が公表されています。

※リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/池村千秋訳(2016)『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)‐100年時代の人生戦略』

100歳以上の人数は、男性が約1万人、女性が約8万人、合計約9万人となり、およそ9割が女性で占められています。(2022年9月時点)

100年前、1923年当時の日本人の平均寿命は、男性が42歳、女性が43歳でした。2021年現在の平均寿命は、男性が81.47歳、女性が87.57歳となり、この間日本人の寿命は約2倍になりました。

では、日本の人口推移について確認してみましょう。100年前、1923年時点の日本の総人口は約5,800万人、以降2008年にピークを迎えた後、約1億2,500万人(2022年10月現在)となっています。つまり、日本の総人口も、平均寿命と同じく100年間で2倍に増加しました。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所が公表する、長期的な日本の人口を予測した 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、2070年の日本の総人口は、現在から3割減の8,700万人と推測されています。これは、1953年当時の総人口とほぼ同じです。

ただし、人口構成は1953年と異なり、少子高齢化が進み14歳以下の「年少人口」の比率は、2050年には10%を割り込み、2020年の1,500万人からおよそ1,040万人にまで減少します。そして、2070年には800万人を割る見込みです。

一方、65歳以上の「老年人口」の比率は、2020年の28.6%から、2070年には38.7%まで上昇する見込みで、およそ2.6人に1人が65歳以上となる計算です。

少子高齢化の影響は?

少子高齢化は今後の日本に様々な影響を及ぼすことが想定されます。

1)日本の社会保障制度は、現役世代が高齢者を支えるというのが基本的な仕組みです。
15~64歳を現役世代、65歳以上を高齢者として計算してみると、1965年は、10.8人の現役世代で1人の高齢者を支えていました。現役世代にとっては、かなり余裕のある状況だったといえます。

2015年は、現役世代2.3人で1人の高齢者を支えていましたが、2070年には、少子高齢化の進行により、現役世代1.3人で1人の高齢者を支える計算になります。

2)社会保障制度は、社会保険料による支え合いで成り立っています。
2020年度の社会給付総額は132兆円と、過去最高額を更新しました。社会保険料のみでは現役世代に負担が集中し、社会保障制度を支えきれないことから、税金や国債の発行による公費を充当しています。

3)高齢化により社会保障給付費が増加します。
今後も高齢者が増えていくことが想定されるため、社会保障の給付費もさらに膨み、2040年度の給付費は190兆円と試算されています。(2018年公表:社会保障の将来見通し)当然、高齢になれば医療費は増加し、70歳代以降では50歳代の2倍、3倍の費用がかかるという統計結果があります。(2020年度)

次に、社会保障制度を支える税金について見てみましょう。現在の主な税収は所得税と消費税です。消費税は「社会保障と税の一体改革」により、ほぼ全額が社会保障の財源に充当されることになっています。理由は、景気の変化に左右されにくく税収が安定していること、また特定の世代に負担が集中することがないため、財源にふさわしい税金とみなされているからです。

今後も社会保障給付は増え続けることが見込まれており、消費税率の引き上げが、将来実施されることを想定しておいたほうがよいかもしれません。

次に、国債について説明します。日本の国債残高は、現在1,000兆円を超えています。(2022年度)今後も社会保障給付の財源として、国債に頼らざるを得ないことが想定されます。国債は政府の借金であり、すなわち将来の世代に負担を先送りしていることを意味します。

ここで、今後の日本をグローバルな視点で考えてみましょう。

日本を取り巻く環境は?

今後の世界経済を支える要因は、人口の多い新興国の経済成長による世界の需要増加が考えられます。下記の表は、GDPランキング上位10か国の人口を2000年、2020年、2050年(予測値)で計測したものです。

2000年までは、人口の少ない先進国が上位を占め世界経済を牽引してきました。しかし、2020年以降はインドやインドネシアなど人口の多い新興国が経済成長し、牽引役が変化しています。

上位10か国の合計を2000年と比較すると、2050年にはGDPはおよそ4.1倍、人口はおよそ1.3倍と予想されています。理由は、人口の多い新興国で中所得層が増えていくからです。今後も世界経済は、人口の多い新興国の経済成長による世界の需要増加と新産業が牽引し、危機を乗り越えて成長していくと期待できそうです。

それでは、人口の多い新興国が牽引し拡大する世界経済の中で、日本はどのような状況におかれているのか確認してみましょう。

下記のグラフは、OECD、経済協力開発機構加盟国の年間の平均賃金を並べたものです。日本の平均賃金(4万1,509ドル)は、38カ国中25番目です。OECD平均(5万3,407ドル)のおよそ78%、アメリカ(7万7,463ドル)の53%しかありません。

次は、IoT(Internet of Things モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)等を核とした技術の第4次産業革命による経済構造の変化について見てましょう。

2015年末には、野村総合研究所と英国のオックスフォード大学との共同研究で「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で職業が代替可能になる」とのタイトルで発表されました。最近では生成AIが話題になるなど、今後はAIが普及する時代に求められる人材という課題が待ち受けているのかもしれません。

次にお金を取り巻く状況を確認したいと思います。

下記の図表は、預金金利がインフレ率を上回れば、お金の価値を維持できていることを意味します。消費税の引き上げにより物価が2%を超えて上昇した一部の時期を除けば、この期間は物価が値下がりするデフレの時期が続いたため、お金を預金で寝かしていても特に問題になりませんでした。

しかし、最近は物価が上がり始め、経済状況自体がインフレを招いています。お金を預金に預けたままだと、インフレに負けてお金の価値を目減りさせてしまうことになるかもしれません。

【その2へ続く】

  • このコラムは、2023年8月時点の情報に基づくものです。

文責・野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室

  • facebook
  • x
  • LINE

関連記事