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「人生100年時代」三世代で考える資産運用~その2

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人生100年時代~私たちの「くらしとお金」を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。夢や目標の実現に向けて、親・子・孫の三世代で考える資産運用について、野村證券株式会社・投資情報部長の東英憲が解説します。

野村證券株式会社 投資情報部長 東 英憲

三世代がしあわせに暮らすための将来設計とは

ここからは、親・子・孫の三世代がしあわせに暮らすための将来設計について考えてみましょう。三世代が将来にわたって幸せに暮らせるように、まずはそれぞれの将来設計から始めてみてはいかがでしょうか。

上記は、人生の大きなイベントにかかる金額を三世代の未来年表にしたモデル事例です。今後の各世代のイベントを確認すると、世代ごとに将来の課題がみえてきます。

  • 親世代(シニア層)介護が必要になった場合は、月間8.3万円(年間99.6万円)、一時費用で74.4万円がかかると予測されます。
  • 子世代(現役層)一般的に60代に定年退職を迎え、海外旅行や自宅のリフォーム、子どもがいる場合には結婚資金援助等、支出総額はおよそ386万円かかると予測されます。退職後は年金生活となり、資産の取り崩しの生活が始まるので、老後資金についてしっかりと考えないとならない頃でもあります。
  • 孫世代(若年層)20代以降、結婚、子どもの誕生、住宅購入とイベントが続きます。将来への不安が増す頃でもあり、それぞれ将来のイベントにかかる費用を並行して準備しなければなりません。

各世代共通して準備しておきたい費用が「老後の生活費」です。生命保険文化センターの「令和4年度 生活保障に関する調査」によると、定年後にゆとりある生活を送るために60代の方が必要と考える金額は、月38.7万円、85歳まで生きると仮定すると総額1億1,600万円となります。

各世代の夢や目標を実現するために、ライフイベントにはどのくらいお金が必要かを三世代でシェアすることも大切ではないかと思います。

親世代(シニア層)の課題は?

親世代の課題は、長生きリスク、医療・介護費の増加、資産承継です。長生きリスクとは、平均寿命が延びることに伴い老後のための資金が足りなくなり生活に困ることを意味します。また、年をとるとそれだけ病気やケガのリスクも高まります。一方、資金に余裕のある方は、子世代、孫世代への資金承継も考えておかなければなりません。

「うちは相続財産が少ないから」と他人事と考えている方もいるかもしれませんが、遺産5,000万円以下の家庭でも相続争いは起きています。家族といえども、お金に対する考え方の不一致で思わぬトラブルを起こさないように、資産を次世代に「先渡し」できる生前贈与という方法もあります。ただし、寿命は誰にも分かりませんので、生前贈与は十分に計画することが大切です。

子世代(現役層)の課題は?

子世代の課題は、資産寿命の延命、健康寿命の維持、親世代の介護です。 日本は世界的な長寿国ですが、平均寿命と健康寿命の差は約10年間あり、健康寿命をいかに延ばすかが大きな課題となっています。(下記 左グラフ)健康上の問題で日常生活が制限される期間は、医療費や介護費用の負担も増えることが予想されます。

また、年齢を重ねていくと医療費が増加していくので、健康に働けるうちは長く働き続け、退職前からの積立投資や、退職金の運用によって、資産寿命の延命を考える必要があります。

孫世代(若年層)の課題は?

孫世代の課題は、ライフプランニング、人生の三大資金の準備、資産形成への取り組みです。人生の三大資金とは「子どもの教育資金」「住宅購入資金」「老後資金」のことで、ライフイベントの中でも特に大きな支出となる重要な資金です。

将来多くのイベントが控えている孫世代は、計画的に資金を準備するためライフプランニングが重要です。例えば、住宅の購入、子育ての開始、退職などライフイベントの時期を考えることにより、将来の収支の見通しを立てます。

ご参考までに、「子どもの教育資金」は、幼稚園から大学まですべて公立に通った場合は817万円、すべて私立に通った場合は2,279万円かかります。

住宅購入資金は、子どもの教育費、老後資金に比べて、唯一確実に予定を立てられる資金です。住宅金融支援機構「2021年度フラット35利用者調査報告」によると、住宅購入の全国平均価格は3,745万円、自己資金は408万円です。

なお冒頭でも触れましたが、老後の生活費について、60代の方がゆとりある生活を送るために必要と考える金額は、月38.7万円、85歳まで生きると仮定すると総額1億1,600万円となります。

「人生100 年時代」では、充実した老後の生活のために、早い時期から自分にふさわしいライフプラン・マネープランを検討する必要があるでしょう。

【その3へ続く】

  • このコラムは、2023年8月時点の情報に基づくものです。
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