1. TOP
  2. コラム
  3. 健康な老後のために 第2回 歯のケアにかかる費用は?

健康な老後のために 第2回 歯のケアにかかる費用は?

  • facebook
  • x
  • LINE

加齢によって影響を受けやすい耳や歯のケアにかかるお金について取り上げる本連載。第2回目では、歯のケアの手法やそれにかかる費用、それぞれの手法のメリット、デメリットなどについて取り上げます。

高齢者の義歯等装着(使用)の実態

厚生労働省の「令和4(2022)年歯科疾患実態調査」によると、何らかの補綴(ほてつ)物(ブリッジ・部分入れ歯・総入れ歯)を装着している人の割合は概ね年齢に比例しており、65歳から69歳では53.6%、80歳から85歳に至っては9割(90.1%)の方が入れ歯(義歯)を使用しています。

厚生労働省「令和4(2022)年歯科疾患実態調査」棒グラフ:年齢に比例して何らかの補綴(ほてつ)物(ブリッジ・部分入れ歯・総入れ歯)を装着、65から69歳は53.6%、80から85歳は9割(90.1%)の方が入れ歯(義歯)を使用していることを示す
(出所)令和4(2022)年歯科疾患実態調査より、野村ホールディングス ファイナンシャル・ウェルビーイング室作成

同調査によると、65歳以降、歯を失うケースが増えてくることがわかります。「平均喪失歯」の数は55~64歳の3.0本から、65~74歳では6.0本とほぼ2倍に増えます。

一方、厚生労働省の「平成29年(2017)年国民健康・栄養調査報告」で、「なんでも噛んで食べられる」と答えた人は、50~59歳の86.7%から、60~69歳では76.2%、70~79歳では68.9%と徐々に減っていくことがわかりました。

これらの調査結果から、歯の本数が減ると、食べられるものも減ってくることが見えてきます。

歯の「維持費用」とメリット・デメリット

年を取っても、イカやタコなどの海産物やせんべいなど固いものを食べたいと思う方は多いでしょう。義歯の装着などの歯の状態の維持にかかる費用や、それぞれのメリットやデメリットについて解説します。

義歯

義歯は、永久歯が欠損している場合や機能が不足している場合に作られる人工の歯です。部分入れ歯と総入れ歯の2種類があります。部分入れ歯は、歯が欠損した一部の箇所に使われるものです。これに対し、総入れ歯は全ての歯がない場合に使われます。義歯には取り外し可能なものと固定され、取り外しができないものがあります。

費用は、義歯の本数や素材によって異なりますが、保険適用で5,000~2万円程度、一方劣化しにくい高価な素材を使った義歯は部分入れ歯でも10万円以上かかるケースが多いようです。

義歯はインプラントなど他の治療法に比べて比較的費用が低く、製作にあまり時間がかからないのがメリットと言えます。
一方、部分的な義歯は他の歯に支えられる形になることもあるため、安定性が低い場合もあり、装着によって周囲の歯に負担がかかります。

インプラント

インプラントは、欠損した歯の場所に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。基本的に保険適用外で、公益社団法人・日本口腔インプラント学会の2015年の調査では、インプラント1本あたりほぼ20万~40万円程度でした。

インプラントは自然な歯とほぼ同様の見た目といわれます。人工的に歯根を作るため、安定感もあり、自然な歯に近い強度や噛む力を持つと言われます。ただ、インプラント治療には手術が必要で、多少体への負担も伴います。前述の通り、義歯に比べると費用が高く、経済的な負担が大きいのがデメリットと言えます。

ブリッジ

ブリッジは、欠損した歯の両隣の健康な歯やインプラントを支えにして、人工歯を取り付ける治療法です。通常、ブリッジは取り外しできない固定式で、歯の見た目と機能を回復させることができます。

保険適用の場合は1本20,000円程度、高価な素材を使った人工歯を使う自費診療の場合は、1本50,000円程度です。両隣の歯に支えられるため、義歯よりも安定性が高いことがあります。インプラント治療と異なり、手術が不要な場合が多く、体への負担も大きくないのがメリットです。

一方、ブリッジを設置する際には、周囲の歯を削り取る必要があり、周囲の歯の強度が下がってしまう可能性もあります。さらに、義歯と同様に、ブリッジも時間とともに劣化するケースがあります。

義歯 ブリッジ インプラント
メリット ・経済的負担が小さい
・製作が容易
・より高い安定性
・手術が不要
・自然な外観と機能
・長期的な安定性
デメリット ・安定性の欠如
・周囲の歯に影響
・周囲の歯への負担
・耐久性の限界
・手術の必要性
・経済的負担が大きい

定期的なメンテナンスの重要性

義歯などは使い続けることで様々な問題が起こり得ます。日常的に注意すべき事項と、それに対する適切なケアの方法について考えてみましょう。ポイントは以下の4つです。

ポイント1:フィット感の低減

義歯を長く使用すると、「フィット感」が損なわれて不安定になることがあります。こうした問題を最小限にとどめるためには、定期的な歯科検診が不可欠です。歯科医との相談を通じて、義歯の調整や、場合によってはより適した治療法を医師と検討しましょう。

ポイント2:人工の歯の摩耗

義歯などに使用される人工歯も、長期間使用すると摩耗が進むことがあります。これにより、噛む力が低下し、不快感を生じることがあるかもしれません。定期的な歯科検診により、人工歯の状態を確認し、必要に応じて修理や補修を行って、機能を維持することが重要です。

ポイント3:入れ歯の緩み

義歯はバネが組み込まれている場合、使用や摩擦で緩みが生じることがあります。これはよくある現象といえ、適切なケアが求められます。歯科医による定期的な調整や、指示に基づく正しいメンテナンスでバネを調整すれば、安定感を保つことができます。

野村の関連サービスはこちら

ポイント4:入れ歯の汚れ

最後に、義歯の汚れも悩ましい問題の一つといえます。食事の際に食べかすが入り込み、汚れが蓄積しやすくなり、悪臭の原因になることもあります。義歯専用の洗浄剤や歯ブラシを使用して、清潔な状態を保つことが不可欠です。これにより、臭いだけでなく、感染症の防止にもつながります。

義歯やインプラントなどは欠損した歯を補うための方法ですが、その効果を最大限に引き出すためには、自身の積極的なケアと、歯科医との協力が欠かせません。そして、歯のケアへの「投資」は、健康と豊かな老後を築く鍵となります。

「健康な老後のために」と題し、2回にわたって年を取ってからお金がかかりがちな耳と歯のケアについて解説しました。定年退職後も笑顔とともに年齢を重ね、豊かな人生を楽しみたいものです。お金がかかることを理解したうえで、日ごろからこまめなケアを欠かさないように心がけ、健康を維持していきましょう。

編集協力:寺澤 真奈美 2級ファイナンシャル・プランニング技能士/
編集・文責:野村ホールディングス株式会社 ファイナンシャル・ウェルビーイング室
  • facebook
  • x
  • LINE

関連記事